介護事業の世界の仕事では、資料管理や事務作業なども業務の中に含まれています。また、別業種である、「医療」「理学療法」などの事業分野と協力が必要となり、各作業を担当者に分配し負荷を掛けているのが現実でした。しかし、「ICT」が活用されることにより、負荷の軽減や効率化に対する試みがあります。それでは、具体的に、「ICT」とは何なのでしょうか。どのようなポイントが有効なのでしょうか。

介護事業の抱える課題

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(写真=chombosan/Shutterstock.com)

内閣府の「平成29年版高齢社会白書(概要版)」によると、2016年10月1日現在、日本の総人口に占める、65歳以上人口の割合(高齢率)は27.3%です。また今後も高齢者は増加傾向にあり、それに伴い介護業界も拡大すると言われています。業界拡大に伴い、人材確保が課題になりますが、需要に対して職員の配置や教育が追い付いていないのが現状です。介護業務の他に事務作業や医師との連携など、求められる領域は多く、1人1人に対して高負荷であることが問題になります。

また、負荷は上がっているのに、介護職員の初任給は高卒(男女平均15万4900円)、短大・大学卒(17万7950円)のいずれも全産業平均の高卒(16万1500円)短大・大学卒(19万2200円)と比較すると、低めなのも課題です。

また、介護職員の離職率は2007年度の21.6%に比べると2013年度は16.6%と低下傾向ですが、産業全体は15.6%と依然高い数値です。そのため採用率を高めても従業員の不足が起きています。

介護の効率化にはICTが必須!

「ICT」とはどのような意味でしょうか?ICTは「Information and Communication Technology(インフォメーション・アンド・コミュニケーション・テクノロジー)」の略語です。主にコミュニケーションを含んだ取り組みとして、他業種とのシステム連携に特化して使われます。現在でも各業界で独自のシステムを導入するなど、業務の効率化を目的とした動きがあります。厚生労働省によると、2025年には、団塊の世代が75歳以上になり、介護などの業界内の連携だけではなく、「医療」「介護」「予防」「生活支援」などの生活を包括する仕組みの構築と業界を超えた横の連携が必要だとされています。その一環として、高齢者の人口増加に対して、ICTを用いたシステムで対応する動きが起きています。

システムを用いて、1人あたりの負荷を軽減することで、増加する高齢者を効率化で補おうとしています。例えば、作業効率を図れるよう、前もって全国に地域包括支援センターを約4,300カ所作成するなどの取り組みが行われています。しかし、システム導入に伴う費用の増大や、ITに不慣れな担当者などの教育や意識改革なども必要となり、まだまだ課題も多く残っているのが現状です。

介護現場でのICTの活用事例を紹介

それでは、実際に介護現場ではどのような活用を取られているのでしょうか。1つ目が「地域見守り安心ネットワーク」というサービスです。これは、高齢者住宅前に赤外線センサーを取り付け、異常が発覚した段階で福祉施設などに緊急連絡が入る仕組みです。この前段階として、世田谷区では、定期巡回・定期対応型訪問介護看護を2012年4月から実施しており、新サービスの説明を行っています。

2つ目が「おもいやりケアシステム」という仕組みです。この仕組みは、ケアサービス向上と事務業務の簡素化を行い、業務効率化を促す狙いがあります。さらに、スマートフォンの普及により、現場のリアルタイムの対応内容をWEBで配信し、データの閲覧を可能になるサービスなのです。家族が常時データを確認できる状態をつくることで、安心できる環境に貢献しています。

今後は「地域包括ケアシステム」づくりをめざし、「医療」「予防」「介護」などがリンクをするシステムづくりが行われていくと言われています。

ICT活用で介護の現場を支える

今後、高齢者が増加する中で、影響が及ぶ可能性が高いのは介護業界です。業界として対策も行っていますが、劇的な改善を見込むのが難しいと言われています。しかし、ICT技術を利用することで、一人一人の作業効率化を図るだけではなく、外部の業界とのアクセスを可能にするシステムを新たに作ることで業務負荷を分散することができます。

さらに、利用する高齢者に対してサービスの向上を見込めるので、一石二鳥です。厚生労働省としては2025年に「地域包括ケアシステム」構築の構想を進めていますが、現場サイドでは戸惑う人がいるのが実情のようです。ただ、実用できれば間違いなく現場を支えるシステムになるため、情報漏えいなどのトラブルリスクなどと上手く付き合い、早い段階での実用を期待したいところです。(提供:ビジネスサポーターズオンライン)

※当記事は2017年7月現在の情報に基づき制作しております。最新の情報は各関連ホームページなどをご参照下さい。