40代が輝きを取り戻すために

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(写真=The 21 online)

本来、仕事においても家庭においても一番脂の乗った時期と言えるはずの40代。だが実際には、仕事にもプライベートにも疲れ果てた、どうも元気のない人が目立つというのが現実ではないだろうか。

だが、この時期に何をするかで、定年後も含めた今後の人生の充実度は大きく変わってくる。

40代を無駄にせず、輝きを失わないためにはどうすべきなのだろうか。組織・人材開発のプロフェッショナルである(株)セルムの加島禎二社長に「元気のない40代から脱却する方法」を教わった。

「元気のない40代」4つの特徴とは?

40代といえば、組織の屋台骨を支える世代だ。仕事に熟達し、体力もまだ充分にあり、人間的にも成長して責任ある仕事をこなすことを期待される世代である。

私は、企業の成長戦略を人材の側面から支援するコンサルタントとして、「若手の早期登用が必要だ」と唱えてきた。上の世代がいつまでも意思決定権を握っていては、今、企業が切実に欲している、事業の転換点を乗り越えるイノベーションを起こせない可能性が高いからだ。

実際、多くの企業で若手への権限移譲は進んだと思う。40代の部門長や執行役員クラスも増えている。しかし今、経営者や人事役員の方とお話しすると、40代社員が自身の40代の頃と比べてエネルギーが低い、輝いていない、という悩みをよく相談されるようになった。

具体的な事象をあげよう。

<新しい動きに興味が薄い>

ビジネスの新しい動き(例えば、新しい技術の利用可能性やベンチャーが発表する新しいサービス)に興味が薄い。一般のニュースになっていることであっても知らないこともあるし、話を振ってみても「そうですか」「へえ」……といった感じで、反応が鈍い。ビジネスに対する感度が下がっているのではないか。

<いつまでもリサーチをしている>

他社事例や一般解をリサーチすることは重要だが、いつまでもリサーチに時間を費やしていて、なかなか意思決定をしない傾向がある。多少わからないことがあっても、思い切って意思決定をしないと仕事も人も動かない。責任をとることを心配しているのだろうが、これでは彼ら世代が反面教師にしてきたはずのシニア社員と同じではないか。

<若手の新しいアイディアに冷淡>

若手が新しいアイディアを出したり、提案をしても、それに対して「お手並み拝見」とばかりに手を貸そうとしないケースも少なくない。妨害はしないが、経験不足の若手だけが担当するには荷が重いだろう仕事であっても、積極的に手を貸さない。若手が活躍するより、まだまだ自分が評価されたいという気持ちが勝ってしまっているのだろうか。

<上からの評価を必要以上に気にする>

上司の目につく場面には必ず出席したり、報告書に書くべき項目を揃えたり、ということに関しては非常に熱心にやっているが、地道な問題解決や自分のチームのPDCAでは手を抜いているように感じる。自分の評価が下がることを恐れているのではないか。

いかがだろうか。ここではぜひ怒らないで考えてほしい。もし経営者にこのように見えるであろう行動が自分に当てはまるとしたら、要注意だ。特にこの先、経営幹部職を目指したいと思っている人にとっては、これがボトルネックになってしまう。

もちろん、日々とても忙しい。経験したことのない仕事も増えた。職場にも新しいことを面倒臭がる嫌う空気が漂っている。

しかし、だからといって周りに流されてしまうのはまだ早い。今日から、それも自分の意思でできる対策もあるからだ。

対策1 変化を肌身で感じる機会を意識的に作る

某刑事ドラマのセリフではないが、変化(事件)は現場で起きている。もちろん多くの人が現場で仕事をしているのであるが、これまでの仕事のやり方が通用しない、トライ&エラーをしなければならないような業務を、常に一定数担当するなどして、ビジネスの変化を体感する環境に身を置く工夫をしてはどうだろう。

また、直接仕事と関係のないサードパーティーのコミュニティを持つことも、ぜひ推奨したい。自分とは異なる価値観や物の見方に触れたり、これまで関心がなかった分野の人たちとの交流に目を開かれることもある。それが思ってもみないかたちで仕事に活きることも実は少なくない。ビジネスの感度を上げることにもつながるはずだ。

対策2 外部のリソースを活用する

仕事は、自分や自社のリソースだけで何とかしなければならないものだ、と思い込んでいないだろうか。その前提条件を捨てない限り、「次の一手」が生まれないことも多い。変化が常態化した中で最も危険なのは、「自前主義」に他ならない。

そこで、日頃から必要なアイディアを外部からできるだけたくさん入手できるような動き方・働き方をするべきだ。外部に良いパートナーを持てたら、自分のパフォーマンスは格段に良くなる。

そのためには予算が必要、あるいは上司の許可がないとできないと言うかもしれないが、必要なことであると思うなら、ぜひ自分から会社に働きかけてみるべきではないだろうか。すぐに結果にはつながらなくても、その動きは自分にとっても会社にとっても決して無駄にはならないはずだ。

対策3 若手を前面に押し出す

「若手を前面に押し出す」ような動き方をしてみることも有効だろう。若手を立てることで、新しい価値観や考え方、仲間を得ることも多いはずだ。

社内に広くネットワークを持っている40代社員こそ、社内の根回しや既存事業との整合性をとったりして若手のアイディアを成果に変えることができる存在だ。経営者が頼りにするのもそんな行動をしてくれる社員だ。

多くの企業では、既に評価項目の中に「周囲への貢献・サポート」、あるいは「若手の育成」という項目が入っているはずだ。そして、これが経営者を本当に喜ばせる行動の1つでもある。

“人生100年時代”のキャリア形成を

かつては「50年」だった人生は、80年になり、近い将来100年まで延びようとしている。会社生活を「大過なく」勤めあげれば、あとは豊かな老後生活が待っていたのは過去の話だ。これからは人生を二毛作、三毛作することが当たり前の時代になる。

ビジネスパーソンとして経験を積み、スキルが身につき、体力もある40代は、まだまだ成長できる時期だ。自分の実力や能力、専門性をどう活かし、どう伸ばしていくかを再考するのに最適な時期と言える。固い言葉で説明すれば、自分のキャリアを自分で切り開くべき時期といってもいい。

もしも今の会社では全く自分を活かせないと判断するなら、転職を視野に入れてもいいのだ。

現にミドル世代の転職は活発になってきている。外で通用するだけのスキルを磨き、人脈も作っておきたい。

その結果として、40代がエネルギーを取り戻したら、会社も日本の社会も、もっともっと元気になるはずだ。

加島禎二(かしま・ていじ)株式会社セルム代表取締役社長
1967年生まれ。上智大学卒業。リクルートを経て、1998年、創業3年目の株式会社セルムに参加し、2002年 取締役企画本部長に就任。今日では1000名を超えるコンサルタントネットワークの礎を築く。同社の常務取締役関西支社長を経て、2010年に代表取締役社長に就任。一貫して「理念と戦略に同期した人材開発」を提唱し、次期経営人材の開発や人材開発体系の構築、リーダーシップ開発、組織開発などに携わる。現在も顧客のプロジェクトの最前線に立ちつつ、優れた経営と強い事業に貢献する人材開発のあり方について、積極的に発信を続けている。(『 The 21 online 』2017年09月07日公開)

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