「できない」という議論は時間のムダ
ソフトバンクグループといえば、その「圧倒的なスピード」で知られている。冨澤社長自身、孫正義ソフトバンクグループ社長の元で多くのことを叩き込まれた。これまで、孫社長のもとで数多くの新規事業を立ち上げてきたが、孫社長の要望は常にタフなものだったという。
「孫社長はゴールしか提示しません。スケジュール設定もすごく厳しい。我々にはとうてい無理だと思えるのですが、社長は多くの経験から『できる』という感覚を持っている。我々はそれを実現する方法を考え、実行しなくてはならないわけですから、大変ですよ。
たとえばその道のプロが10年かかると言うことでも、半分でやれと平気で言ってくるわけです(笑)」
それでも、「できません」とは決して言わない。
「私もそれなりに経験を積んできましたが、社長の言葉を聞いて『え?』と耳を疑うことが今でもあります。その瞬間は実現のための方法論などまったく見えませんが、『わかりました』と涼しい顔で返事をします。言葉のやり取りはそれだけ。そうして、後で死ぬほど考えるのです」
ソフトバンクにおいて、絶対にやってはいけないのは、「できない理由」について議論することだという。
「なぜなら、できないことを『できない』と証明するのは、実は極めて難しいからです。だったらむしろ、できることを挙げていき、できない理由をひとつずつ潰していけばいい。
そして、取れる方法はすべて実行する。すると、最初は無理だと思っていたスケジュールがいつの間にか達成されていたりするのです。
それがソフトバンクイズムであり、スピーディな進化の原動力になっていると思います」