「飛ばし&繰り返し読み」がアウトプットに役立つ

スマホ的読書術,宇都出雅巳
(写真=photolibrary)

集中して本を読むのが難しい時代

「本をもっと読みたいけれど、なかなか読む時間がない……」
「本を読み始めても、ついついスマホに手が伸びてしまって……」

スマホがどんどん便利になり、普及する中、これまで読書に当てられていた時間はスマホに奪われてきてどんどん読む本の量が減ってきている人が多いのではないでしょうか?

また、本を手に取って読み始めても、ついついスマホに手が伸び、読書に集中できない人が多いかもしれません。

こんな中、「本はやはり読まなければ……」と力んで、最初から頑張って読もうとしたところで、もう読めるようにはなりません。ネットやスマホ時代の今、本の読み方も変えていく必要があるのです。

では、どんな読み方をすればいいのか?

それはズバリ、「スマホを見るように本を読む」です。

具体的には、読む気がしないところは飛ばし、読む気がするところを読む、いきなり細かいところをわかろうとするのではなく、見出しなどでざっくり読む、といった「飛ばし読み」をするのです。

ただし、単なる「飛ばし読み」では本の内容をきっちりと理解できません。「飛ばし読み」をしながらの、それを繰り返していくのです。ペンキを塗るときにだんだんと塗り重ねながらムラをなくしていくように読むのです。

つまり、「飛ばし&繰り返し読み」です。

一見いい加減なこの読み方が、実は読書への集中を高め、本を楽に、速く、そして深く読むことを可能にします。

なぜなら、従来の「じっくり&ゆっくり読み」よりも、われわれの脳を効果的に使うことができるからです。

「頑張って読む」読書は、脳に悪影響!?

「うーん、わからないなあ。どういうことだろう?」ーーあなたはわからないところがあると、なんとか頑張ってわかろうと、そこに止まって考えたり、そこを何度も何度も繰り返し読んでわかろうとしていませんか?

実はこれは、「わかる」ために役立つどころか、逆にあなたの脳を圧迫し、わからなくしている危険性があるのです。

最近の認知科学の研究では、私たちが考えるためには、「ワーキングメモリ(作業記憶)」という記憶が重要であることがわかってきています。これは情報を即座に一時的に蓄える記憶で、実際に今もあなたはこの文章を読むのに使っている記憶です。

文章を理解するためには、最初に出てきた言葉を覚えておき、次に出てくる言葉とつなげていく必要があります。その覚えておく働きをワーキングメモリが担っているのです。

これまで意識していなかったかもしれませんが、短い時間でもワーキングメモリが一時的に記憶してくれるので、言葉をつなぎながら文章を理解することが可能なのです。

しかし、このワーキングメモリ、即座に覚えてくれる便利な記憶なのですが、覚えられる量に限りがあります。新しい情報が入れようとすると、すでに蓄えられている情報を出さざるを得ません。

わからないところというのは新しい情報がたくさん入ってくるということですから、ワーキングメモリは一杯になっている可能性があります。そこにさらにわかろうとして新しい情報を押し込もうとしても、まだ理解していない情報が押し出されることになり、よけいにわからなくなってしまう危険があるのです。

こうなるとワーキングメモリにスムーズに情報が流れなくなり、いわばフリーズ(一時停止)状態になるのです。

このため、細かい情報をいきなり詰め込もうとするのではなく、ざっくりと大枠を捉えるために「飛ばし読み」しながら、「繰り返し読み」するなかでだんだんと細かいところに読み進めていくことが、ワーキングメモリを有効に活用することにつながるのです。