従業員の一人ひとりが、企業の掲げる戦略や目標を理解し、自発的に力を発揮する貢献意欲を「従業員エンゲージメント」と言います。これは、従業員が自発的に貢献する意欲を多角的に評価することで、最大のパフォーマンスを発揮させる最適な手段といえます。
今、最も望ましい従業員と企業の関係性として注目を浴びているので、意義や趣旨に加え、得られる効果や取組み方を知っておくのが得策です。今回は「従業員エンゲージメント」をすでに導入した企業の実例も参考に、実践しやすい方法をご紹介します。
愛着心が強い従業員は、熱意を持って仕事に励む
「エンゲージメント」には、従業員と企業が互いに固い信頼関係で結ばれ、生産性の向上という目的の下に貢献し合うという意義があります。エンゲージメントが確立されている企業では、人材という最も重要な要素が他の企業より優位に立ちます。というのも、企業への帰属意識や愛着心が強い従業員は、日々の業務に熱意を持って取り組むからです。
近年、企業と従業員間のあるべき姿として、この「エンゲージメント」を重視すべきだという考え方が支配的です。エンゲージメントは「従業員」と「顧客」に分けて考えることが可能で、いずれも満足度が高いほうが業績はアップするとされています。
人事戦略コンサルティングのグローバル企業「ウイリス・タワーズワトソン」によると、「従業員エンゲージメント」が継続して高い企業は、1年後の営業利益率が3倍になるというデータがあるということです。また、優秀な人材を集めることが可能となり、離職を防ぐ方法としても関心を集めています。
従来は、理想的な従業員と企業の関係を考えるベースとして「従業員満足度」が注目されていました。この従業員満足度は従業員が企業に求めるもので、従業員が企業で満足しているかどうかの主観的な判断です。しかし、これを高めても必ずしも企業の業績アップには繋がりません。従業員にとって居心地がいい企業というだけでは、競争力があるとは言えないからです。
一方、「従業員エンゲージメント」は、従業員が企業に提供するものです。単に従業員の満足度だけではなく、従業員と企業が一体となって業績アップに取り組む点が大きな違いです。「従業員エンゲージメント」が定着した企業は、従業員のモチベーションが高まり、業績アップに大きく貢献することになるのです。
従業員エンゲージメントのアップで得られる効果や方法は?
「従業員エンゲージメント」が高まると、従業員と企業の間に一体感が育まれるため、より強い企業となり得ます。つまり、従業員は企業への帰属意識や愛着心が高まり、献身的に業務に励む傾向が強くなります。こういう従業員が増える企業では間違いなく業績が向上し、波及効果で全体の士気もさらに高まります。
人事評価の面では、「絶対評価」という適切な制度を導入することで、生産性を向上させた従業員の成果を適切に評価することが可能です。これに基づいて、貢献度を賃金に反映させることで優秀な従業員が定着し、離職率が下がるというメリットも生まれてきます。
では、「従業員エンゲージメント」の低さが10年以上継続的に報告されている日本企業で、それを高めるにはどうするべきでしょうか?
具体的には、まず従業員自身が自主的に組織へ働きかけ、自ら組織を改善し、問題を解決できる制度作りが重要です。自ら望ましい職場や働き方をイメージして、挑戦しながら職場環境を変えていくのです。
また、従業員同士が目標や価値観の違いを相互理解し、尊重し合うような関係を築くことも大切でしょう。これには従業員だけではなく、管理職の適切なリーダーシップが欠かせません。
成長する機会を従業員に与え、貢献意欲を高めるために、表彰制度は有益な方法の一つです。貢献していることが企業に認められ、正当に評価されるシステムがあることで従業員のエンゲージメントはさらに高まります。
さらに、やり甲斐のある重要な仕事を振り分けることも大切です。これを感じるからこそ、従業員は企業に貢献しているという意識を持って愛着心を一層強めるのです。
ギャップジャパンは社外の基準を大幅に上回る
独立行政法人「労働政策研究・研修機構」が2017年6月29日、「第92回労働政策フォーラム(今後の企業の転勤のあり方について−仕事と家庭生活の両立の観点から−)」を東京で実施しました。そこでは、アメリカ最大のアパレル製造小売チェーン「ギャップジャパン」の取組みが紹介されました。
「従業員の自律とエンゲージメントを促進する企業文化〜個人と組織の成長を加速させる多様な人材マネジメント〜」のテーマで、人事担当者が事例を報告。同社では、「絆が私たちを強く結びつける」というスローガンのもと、工場の労働環境を向上させ、従業員の声に耳を傾け、個人の能力とキャリア向上を目指し、平等と機会の創出を心掛けています。
この取組みにより、ギャップジャパンでは全従業員エンゲージメント指数が、常に社外の基準を大幅に上回っています。同社で働くことに誇りを感じる理由として、「従業員は同僚の品位や倫理観、雇用主としての評判、地域社会への貢献や社会と環境に対する責任を果たす取組み」などをあげています。
このように「従業員エンゲージメント」を取り入れることで、企業にとって多くの有益な効果が報告されています。今後の企業運営にとって不可欠な考え方だけに、ぜひ、取り入れることをおすすめします。
(提供: あしたの人事online )
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