厚生労働省の「一般職業紹介状況(平成29年8月分)」によれば、2017年8月の有効求人倍率は1.52倍となりました。バブル期以来の高水準が続くなか、中小企業において有望な人材が離職していくことはできる限り避けなければなりません。

今回は、正社員として人材を雇用することのメリットを3つ紹介します。

(写真=Rawpixel.com/Shutterstock.com)
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人材の確保がしやすい

非正規雇用の場合、企業の繁忙期などに合わせて人材を配置できるというメリットがあります。一方で、企業によっては人手が欲しい期間が不定期であり、数ヵ月という短期間雇用の場合もあります。非正規雇用は柔軟性があるものの、流動的な存在だと言わざるを得ません。

正社員は、常に企業にとって必要な人材として確保されているため、突発的な案件にも対処しやすいです。非正規雇用の場合、その日中に人材が欲しくても、すぐに企業が望む人材を希望の人数で集めることは困難でしょう。仮に集まったとしても、非正規雇用の性質上、業務内容は限られた範囲でしか任せられない可能性が高いのです。

しかし、正社員であれば日々企業内で仕事をしているため、異なる業務を任せても臨機応変に対応できます。勤続年数が長ければある程度、他部署のことも把握していることが多く、緊急の際には正社員が非常に重宝できるのは明白でしょう。

中長期的視点での人材育成が可能

多くの労働力が一度に必要である場合、非正規雇用はメリットがあるでしょう。しかし、年数をかけないと身につかないようなスキルやノウハウなどは、中長期的視点での人材育成が不可欠です。

人材育成には、それ相応の時間が必要です。正社員として雇用した場合、企業と社員の双方とも長期的に雇用・就労することを視野に入れています。そのため、社内教育・人材育成に関して、じっくりと時間を掛けて重要なノウハウを吸収していくことが可能です。企業側だけではなく、社員側もやる気を持って教わる心構えがあり、正社員として頑張っていく責任感を持っているからでしょう。

反対に、非正規雇用であると、時間的にも精神的にも人材教育を受けるキャパシティが少なくなりがちです。働く側のモチベーション維持のためにも、正社員として雇用することは双方にとって人材育成しやすい環境に近づきます。

厚生労働省では、有期契約労働者などの職業能力開発に取り組む事業主へ「キャリアアップ助成金」という形で支援をしているなど、非正規雇用者の正社員化も目指しやすくなっています。

人材基盤の強化から企業業績の向上へ

従業員を正社員として雇用することは、企業内の正社員数そのものを増加させることになり、人材の基盤を強化するのに有効です。例えば小売店や飲食店などでよく見られるのが、店長だけが正社員で他のスタッフはパートやアルバイトなどの非正規雇用という状況です。この場合、店長に責務が集中しやすくなる恐れがあります。

さらに、店長といえども十分な権限や相応の待遇などが付与されていない場合もあり、にもかかわらず「管理監督者(労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者)」として扱われることがあります。結果として、これまでさまざまな民事裁判が行われる要因ともなっており、企業としては十分に注意を払う必要があります。

正社員を雇用することは、一部だけの正社員に責務が集中することを防ぎ、円滑な仕事の流れを生み出すことにつながります。最終的に企業全体の業績向上につながると言えるでしょう。

正社員としての雇用は企業の成長へつながる

有能な人材を正社員として雇用することは、将来的な企業の成長を促すことになります。短期間での教育では、業務に関連した幅広い知識を習得することは困難であり、企業が求める人材の育成にはある程度の時間が必要です。

着実に時間をかけながら将来の有望株を成長させていくことが、これからの中小企業の人材教育には欠かせないでしょう。

(提供: あしたの人事online

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