年間受験者数が50万人を超える人気の日商簿記試験。就職や昇進の際に取得を求める企業も多いため、実用性も高いことで知られている。人手不足が叫ばれる昨今で、個人をブランディングするという意味でも勉強して損はない資格ではないだろうか。

衆議院総選挙で自民党が圧勝したことをうけてか株価は好調、日経平均株価は2万3000円台におよそ26年ぶりに入るなど高値を記録している。

投資未経験から成功するほうが少数派なのはもちろんだが、何の勉強もせずに株を始めるのは危険である。そこで考えたいのが、基本的な簿記知識の習得だ。会計知識といっても差し支えない。初歩的な簿記用語を理解するだけで企業の決算書や業績が分かるようになるのが最大の魅力である。

メリット1 会社の本当の経営状態が分かる

資格,学習
(写真=PIXTA)

経営が「黒字か赤字か」「儲けているのかいないのか」「今後伸びるか縮小するか」は、会社の決算書類を見れば分かる。投資家は各企業の決算書を見比べて投資の判断材料とし、金融機関は融資して返済が見込めるかを判断する。決算書はいわば会社の“成績表”なのである。決算書を読むスキルの習得は、個人投資家にとって最大の武器といえよう。

決算書には「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」の3種類がある。「貸借対照表」は会社の資産状況を、「損益計算書」はどのくらい儲けたのかを、「キャッシュフロー計算書」はお金の流れを、それぞれあらわしている。決算書に記載された数字や用語を正しく把握することで、会社の本当の経営状態を見抜けるのだ。

「貸借対照表」……会社の資産状況を示す
「損益計算書」……どのくらい儲けたのかを示す
「キャッシュフロー計算書」……お金の流れを示す

たとえば、損益計算書上で黒字となっている企業でも簡単に信用することはできない。売上債権を回収できずに倒産に追い込まれる場合があるからだ。これを黒字倒産という。キャッシュフローが悪化した企業に多いケースである。

本業での売り上げが例年と変わらないのに、急に業績がよくなることがある。損益計算書の「特別利益」「特別損失」の項目では通常の営業活動で生じた収益・費用ではなく、まれに発生する収益などを計上する。

たとえば、土地の売却などで急に1000万円入るケースだ。当期の利益は例年より大きくなるが、臨時の収入であるため来年度も同じ収入を期待することはできない。このように、決算書に記載される簿記用語を理解できると会社の経営状況を具体的にイメージできるようになる。

メリット2 リスクを避けた投資ができる

大企業でも本業が上手く行かず固定資産を切り売りしてなんとか存続できている会社もある。キャッシュフロー計算書を見ればそれが分かるのだ。キャッシュフロー計算書は「どこからお金が入り、何に使ったのか」を明確にする書類の1つである。たとえば、本業でのお金の流れを示す「営業キャッシュフロー」の項目で黒字なら、会社の強みを活かしてしっかり稼いでいることをあらわすので、投資するうえで信頼に足る会社といえる。

また、資金調達状況を示す「財務キャッシュフロー」というものがある。たとえこの項目が赤字でも心配は要らない。銀行からの借入に対して計画的に返済できているなら問題ないのだ。会社のお金の流れを理解することで、会社の営業状況に応じてリスクを避けた投資ができる。

メリット3 伸びる企業が分かる

株価上昇が見込める銘柄を選ぶポイントはなにか。おそらく投資家が最も気になるところだ。「この株は確実に上がる」との予想は投資のプロでも困難だが、決算書は会社の成長性を判断することなら可能だ。

決算書を読むうえで最も大事なのは、過去2~3年分を比較することである。これを経年比較という。その年の決算書を読むだけでは短期的な予想しかできない。

たとえば、上場企業が四半期ごとに作成する決算短信が発表されると、内容によって株価は大きく変動する。決算短信とは決算書類の要点をまとめたいわば速報版。業績予想なども含まれるため、投資家は短信をもとに判断するのだ。しかし、短信だけでは短期的な予想はできても数年後を見据えた長期的な予想は立てられない。本当の成長企業を見抜くには過去の決算書を見比べることが必要となる。(ZUU online編集部)