個人事業主にとって研修は、社員をスキルアップだけではなく事業を成長させる上でも取り入れたいシステムです。研修には、教材、コンサルティング、そして研修旅行などさまざまな費用がかかります。

この研修にかかる費用は、経費として計上することができるのでしょうか。計上できるものとできないものを確認していきましょう。

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(写真=PIXTA)

経費として計上できる研修

まずは、経費として計上できる研修費用をみていきましょう。

所得税基本通達37-24では「業務を営む者又はその使用人が当該業務の遂行に直接必要な技能又は知識の習得又は研修等を受けるために要する費用の額は、当該習得又は研修等のために通常必要とされるものに限り、必要経費に算入する」とされています。

つまり研修費用が会社の業務を行うために直接必要なものなら、経費として計上することができるのです。具体的には、業務遂行の上で必要な新しい知識や技術を得るために受けるセミナー代や講習代などが挙げられます。

個人事業主が事業拡大に必要な資格を取得するための受講代や学習教材代、外部から専門家を呼んだ場合のコンサルティング代なども経費です。また、研修旅行も経費として計上することが可能です。

法人税法では海外渡航費についても「旅行期間のおおむね全期間を通じ、明らかに法人の業務の遂行上必要と認められるものである場合」には、その費用が社会通念上合理的な範囲において全額旅費として計上できると規定しています。

ただし、これもあくまでも業務の範囲内に限るため、旅行先での打ち合わせやセミナーは対象となっても、旅行行程において観光に該当する部分やお土産代などは当然経費とは認められません。したがって、研修旅行では会社の業務に直接関係あるかないかで経費に計上できる分と出来ない分に分かれるのです。

経費として計上できない研修

次に、個人事業主が経費として計上できない研修についてみていきましょう。

まず、先ほど説明した研修旅行ですが、旅行のうち業務に直接的な関係のない部分は全て対象外です。研修目的で行っても、観光地での飲食や交通費は計上できないので注意しましょう。また旅行の名称が研修旅行となっていたとしても、その実情が主に観光旅行を目的とした団体旅行なら旅行自体が研修とは認められずに経費対象外となるケースもあります。

さらに、一見業務に直接的な関係があるように思えるものでも、経費として計上できない研修もあります。例えば、社員の一人が直接業務に関係のない社会保険労務士の資格を取るために専門学校へ通ったり、教材を購入したりするような場合です。

このような資格はあくまで本人に帰属する資格と判断されるため、会社が経費を捻出するのではなく、本人自身の費用で取得すべきものとして経費への計上が認められないのです。

一方で、個人事業主が自分の事業に関するセミナーを受講した場合などは、直接業務に関係がある研修費用として経費に計上することができます。なお、経費として計上できない研修費用を会社が支払った場合は、支払われた人の給与として課税対象となるので注意が必要です。

研修費用の取り扱い(勘定科目)

研修費の計上に使用する勘定科目には複数あり、原則どれを選んでも問題ありません。これを経理自由の原則といいます。

勘定科目の中で研修費用を処理するのにまず使うのが、研修費勘定でしょう。研修会や講習会、セミナー、教育訓練などに使用した研修費を計上する際に使用します。また研修費勘定以外にも研修費用を扱える勘定科目として会議費、交際費、諸会費、研究開発費、福利厚生費などがあります。

会議費では会議に関する茶菓子や弁当の費用、交際費では接待費や贈答品にかかった費用、諸会費ではさまざまな団体に支払う会費や組合費などが対象となります。研修費用の一部ではあるものの、どの勘定科目にも該当しないという場合は、雑費勘定として処理することも可能です。

注意したいのは、それぞれの研修費用をどの勘定科目で支払うのかを決めたら、「その研修費用は継続的に同じ勘定科目で扱わなければならない」という点です。そのため、どの研修費用をどの勘定科目で処理したのかを常に記録に残すようにし、これを参考に毎年の経費計上を行うと良いでしょう。

スキルアップのために研修を取り入れよう

業務上必要とされる研修は、社員のスキルアップや事業成長のために必要とされているからこそ、経費として計上することができます。これまで研修にかかる費用がネックとなってセミナーやコンサルティングをためらっていた個人事業主も、安心して研修を積極的に取り入れることをおすすめします。

研修費用を賢く経費に計上しつつ、事業のさらなる成長を目指しましょう。(提供:ビジネスサポーターズオンライン)