中小企業における後継者問題や経営者の高齢化は、診療所などの小規模の医療機関においても切実な問題です。経営を次世代へ譲りたくても後継者候補がおらず、結果として休業や廃業に追い込まれる医療機関が増加しています。そのような問題を打開する方法として注目を浴びているのがM&Aです。
医療機関が抱える問題
2015年に発表された株式会社帝国データバンクの「医療機関の休廃業・解散動向調査」によれば、2014年に休廃業もしくは解散した医療機関は347件でした。2014年に比べて12.7%増加しただけでなく、2007年以降で過去最多の休廃業件数となっています。また、年代別では60代以上が74.8%を占めるなど高齢化の波が医療機関にも迫りつつあります。
特に小規模の医療機関で問題となっているのが、後継者問題です。経営者の子どもが親と同じ医師になるケースにおいて、経営者としての手腕、事業継承における相続税問題などに加えて、子ども本人が勤務医や大学などでの研究を優先し親の跡を継ぎたがらないなどの例があります。
また部下へ事業を引き継ぐ場合でも、経営権の有無、医療機関の買い取り資金の不足、そもそも部下に病院を経営していく意思と責任感があるかどうかなど、問題が山積みです。
これらは特に小規模の医療機関で顕著であり、結果として休廃業へと追い込まれているのが現状です。
医療機関でM&Aを行うメリット
そのような医療機関の問題を解消する有効な方法が、M&Aです。M&A のMは合併(Mergers)、Aは買収(Acquisitions)を意味しており、企業における吸収合併のことをいいます。
買収合併という言葉から敵対している企業へ買収をかけるイメージを持つ人もいるかもしれません。しかし、日本で増加しているM&Aのほとんどは、競争力の強化や経営が下向きとなっている企業再生のために行うものです。そのような友好的M&Aの具体的なメリットとはどのようなものがあるのでしょうか。
まずあげられるのが、医療機関の後継者候補を外部へ広く求めることができる点です。またM&Aなら譲受先と一緒になることで、従業員の雇用への影響も最小限に留めることができますし、これまでの取引先との関係も継続することができます。
M&Aにおける譲受先は安定した財務状態であることが一般的なため、事業のますますの発展に繋がります。さらに医療機関を売却した資金でこれまで抱えていた借金などを一気に返済してしまうメリットもあります。
またM&Aは、譲受先にも大きなメリットをもたらします。一般的に一から施設や医療機器を揃えるのは時間も経費もかさみます。そのため、新しく医療機関を設立しスタートさせる場合には、常に経営リスクが付きまといます。しかしM&Aであれば施設や医療機関はもちろん、患者やスタッフも含めて引き継ぐことができるため、経営を軌道に乗せやすいといえるでしょう。
M&A成功のためのポイント
譲渡側にも譲受側にもメリットの多いM&Aですが、いつくか気を付けるべき点もあります。
まず譲受先を探すのに、ある程度の時間が必要だということです。譲受先となる企業は、引き受けた病院経営を円滑に進め発展させていくだけの力があるかどうか入念に調査する必要があります。
せっかく譲受先の候補となる企業が見つかっても、交渉の末にお互いの合意に至らなければ、別の企業を探す必要があり、その分M&A成立までの時間がかかることになります。
M&Aを検討し始めたものの開始時期が遅くて譲受先が見つかる前に廃業となってしまった、ということがないように早めに相談することがM&A成功の鍵だといえるでしょう。
選択肢の一つとしてM&Aを
休業や廃業の危機に陥っている医療機関にとって、M&Aは資金問題と後継者不在問題を同時に解決できる画期的な方法です。
M&Aが目指すのは、譲渡側と譲受側双方にとってWIN-WINの関係を築くこと。後継者問題に悩まされているなら、M&Aという解決方法も選択肢の1つに加えてみてはいかがでしょうか。(提供:ビジネスサポーターズオンライン)