小学校5年生から必修になっている英語教育は、2020年以降には小学校3年生からに前倒しされる。英語教育は国が最も力を入れている政策の1つだ。その効果がはっきりと出てきているとは言い難いが、今後徐々に英語を使える人材が増えてくる可能性は高い。

英語では差別化ができなくなる時代に備えて、今のうちにもう1つ言語を習得しておいてはいかがだろうか。世界中にはさまざまな言語があるが、お勧めは「中国語」だ。

外務省の統計によると中国の人口は13.76億人で世界一だ。また第二言語として中国語を話す人は約2億人といわれている。2017年時点で世界の人口が約75億人なので、単純計算でも5人に1人は中国語を話していることになる。

一方、英語を話す人は約17億人。重複などを考慮せずにこちらも単純に計算すると、英語と中国語を習得すると約32億人、世界の半分近い人とコミュニケーションが取れる計算になる。

中国語は身近になってきている。観光などで中国から日本にやってくる人は増えている。日本政府観光局(JNTO)によると中国からの訪日外客数は2017年1月から10月で計622万人と前年から12%増加している。

中国語はビジネスにも役に立つ。日本で中国からの観光客に対応できるようになるだけでなく、中国語を使って自社製品を中国に売り込みに行くこともできる。キャリアアップにもつながりやすいだろう。

日本人は漢字を使用しているため、中国語を学ぶ上でアドバンテージがある。中国語で使われる漢字は、日本の漢字と同じものや似ているものも多い。

言語の学習は今まで紙の分厚い辞書を片手に問題集を繰り返し解いたり、リスニング教材を聞いたりして進められてきた。それらは現在でも有効、むしろ王道だろう。しかし、近年はスマートフォンやアプリを使った新しい学習方法も登場してきている。

中国語の学習に役立つアプリを筆者が実際に使ってみた感想を含めていくつか紹介する。ちなみに筆者は中国語検定3級取得後、2級獲得に向けて学習を進めている初中級者だ。

自分の声調が正しいかを確認できる「NHKゴガク 語学講座」

NHKゴガク 語学講座
(画像=Webサイトより)

中国語の学習を始める時、最初に当たる壁は発音の難しさだ。中国語では漢字の読み方を表すのに「ピンイン」というアルファベット表記が使われる。例えば「馬」(実際に中国で使われている漢字は形が少し違う)はピンインでは「ma」と書く。厄介なのはピンインが同じでも声調(声の上がり下がり)によって、意味が変わることだ。声調は4種類ありピンインの上に声調符号を振ることで表記する。例えば前述の「ma」(マー)は低く抑えて発音すると「馬」という意味になるが、もし語尾を上げて発音すると「麻」という意味になってしまう。

日本で学習をしているとなかなか自分の声調が正しいかどうか確認する方法がない。そこで役立つのがこのアプリだ。「声調確認くん」というメニューが発音の練習に非常に役に立つ。「声調確認くん」ではピンインがついた短い文章の下に、声の上がり下がりがグラフで視覚的に表示されている。まずはネイティブのお手本を聞き、その後自分の声を録音する。するとネイティブの声調と自分の声調がどの部分で違っているかが視覚的に表示される。繰り返すことで正しい声調を身に着けることができる。

聞き分けにくい音を徹底攻略 「超・中国語耳ゲー<ピンインゲームで耳を鍛えよう>」

中国語耳ゲー
(画像=Webサイトより)

発音だけではない。中国語のピンインには聞き分けが難しいものがいくつかある。日本人が特に苦手なのはピンインの最後が「n」と「ng」で終わるものの聞き分けだ。日本語の「案内(あんない)」と「案外(あんがい)」の「ん」の発音の違いに近いと言われる。実際発音してみると舌の位置が違うことに気付くだろう。日本語では意識することはほとんどないが、中国語では「n」か「ng」を聞き間違うと違う意味になってしまう。

このアプリでは聞き分けが難しいピンインがクイズになっており、何度も繰り返すことで耳を鍛えることができる。操作も非常に簡単で使いやすいアプリだ。

豊富な問題に挑戦できる「中国語への扉」

中国語への扉
(画像=Webサイトより)

中国語学習初心者向けのアプリで、「買い物」、「日常生活」、「社会関係」など多数のカテゴリーの表現をクイズ形式で学べる。出題形式が豊富なのが特徴で、単語の意味の選択問題は勿論、語順の並び替え、ピンインの聞き取り、中日翻訳、日中翻訳など様々な問題が出題される。レッスンが細かく分かれており、1つのレッスンを終えると次のレッスンに挑戦できるようになる。中国語の学習を始めたばかりの人でも飽きずに続けることができそうだ。

筆者も使ってみたが、無料にもかかわらず文法からリスニングまで幅広く網羅しており完成度が高い。ただし、ほとんどの部分が日本語対応しているが、文法の解説は英語で書かれているので、少し英語力が必要かもしれない。

再生速度を自由に調整できる「語学プレーヤー <NHK出版>」

語学プレーヤー
(画像=Webサイトより)

すでに紹介したアプリで基礎的な発音や文法を学んだら、次にこのアプリを試してほしい。語学の習得にはネイティブが話す音声の後を追いかけるように、自分で発音する「シャドーイング」が効果的だ。シャドーイングは発音やリスニング力だけでなく語彙力も高まる。ただし、リスニング教材をそのままのスピードでシャドーイングするのは難易度が高く、長続きしにくい。そこで役立つのがこのアプリだ。

このアプリは音声の再生速度が0.5倍から3倍まで調整できる。筆者は0.7倍くらいのゆっくり目な速度で始めて、徐々に1.2倍くらいまでスピードを上げるようにしている。また、リピート再生する区間を設定できるので、文章を最初から最後まで一気にシャドーイングするのではなく、任意の箇所で区切ってリピート再生し、自分のペースでシャドーイングを行うことができる。

アプリに用意されている教材は有料なため、無料で使うには教材を自分で用意しなければならない。市販のリスニング問題集の長文問題や、中国語学習者に人気のテキスト『聴読中国語』(著者:津田量 出版社: 東進ブックス 発売日:2008/12/10)などの音声データをパソコンに取り込んで教材として使用するのがお勧めだ。

中国語ネイティブと言語交流ができるアプリ「HelloTalk」

Hello Talk
(画像=Webサイトより)

言語の学習を早めるのは、学んだ内容を実際に書いたり話したりしてアウトプットすることだ。言うまでもなくアウトプットをする相手が、学んでいる言語を母国語とする人であれば一番効果的だ。通常は海外留学をしたり、地元で外国人の友達を探したりしなければ、そのような機会を見つけるのは難しい。このアプリはそんな困難を解決してくれる、筆者の一押しアプリだ。

基本コンセプトは「日本語を勉強している中国人」と「中国語を勉強している日本人」がお互いの言語を教えあうというもの。中国語だけでなく150カ国以上の言語に対応している。

初期設定で母国語1つ、学びたい言語1つずつを選ぶことになるが、有料会員になると学びたい言語を3つまで選択できる。筆者は無料会員だが、十分間に合っている。

交流方法は大きくわけて2種類だ。1つは多数の中国語ネイティブと交流する「モーメンツ」という機能を使う方法、もう1つは特定の相手とチャットなどで交流する方法だ。

「モーメンツ」はフェイスブックの投稿に似ている。例えば、今日あった出来事を中国語で投稿すると、その投稿は多数の中国語ネイティブにシェアされる。すると投稿を見た中国語ネイティブが文法の間違いや不自然な表現を訂正するという仕組みだ。投稿は音声でもできるので、発音を直してもらうこともできる。

筆者も拙い中国語でしばしば投稿しているのだが、投稿するとすぐに訂正やコメントをしてもらえることが多い。正しい知識が習得できるのは勿論、誰かに反応してもらえると中国語学習のモチベーションがアップする。

アプリを使用している中国人と日本人の人数割合は感覚的に9対1くらいなので、日本人が中国語の学習パートナーを探すのは非常に簡単だ。逆に中国人の方には少し申し訳なく感じる。日本語を教えてもらいたいのに、日本人で中国語を学んでいる人が相対的に少ないため、なかなか日本人からのレスポンスをもらえない様だ。日本人ユーザーが増えて、不平等がもう少し解消されればよいと思う。

筆者は基本的に「モーメンツ」を使用しているが、特定の相手と1対1で交流する方法もある。普通のチャットは勿論、お互いが録音した音声データを送る「音声チャット」、「通話」など多彩な機能が揃っている。

ユーザーは日本語学科の中国人大学生が多い印象を受ける。もちろんチャットなどでは出会い目的の投稿は禁止されており、アカウント削除対象となるのでくれぐれも悪用は厳禁だ。

非常にお勧めのこのアプリだが、交流アプリのためやはりいくつか注意点がある。特に日本人女性が使用する場合、居住地を非表示にしたり、オンライン状態を他者に見えなくしたり、男性から検索されるのを禁止にするなど、自己防衛策は必要だ。

日本のニュースを中国語で聞ける「NHK WORLD RADIO JAPAN」

NHK WORLD RADIO JAPAN
(画像=Webサイトより)

最後は少し上級者向けのアプリだ。このアプリでは日本のNHKニュースを中国語で聞くことができる。実は、中国で放送されているラジオを聴くアプリを試してみたりもしたが、中国に関する予備知識が不足しているため、ほとんど聞き取りができなかった。このアプリは日本の話題が豊富なので聞き取れない単語があっても内容が想像し易い。

「ライブ」と「クリップ」というメニューがあり、放送の時間帯に合えばライブで聞くことができ、合わないときは録音した音声をクリップで聞くことになる。スクリプトがないのが欠点だが、大量に聞き流すことで中国語に慣れることができる。

今回紹介したアプリは基本的に無料でもある程度使えるものを選んだ。隙間時間などで上手に活用して中国語マスターを目指してほしい。(金谷奏太、フリーライター)