少しの工夫で「通る」稟議書・企画書に変わる

書類作成術
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ビジネス文書の中には伝えたうえで、相手に動いてもらうことが目的になる文書も多い。たとえば、提案書、企画書などは、内容を的確に伝えたうえで、相手に興味を持ってもらい、その内容を実現するべく決裁などのアクションを起こしてもらう必要がある。ここではそうした「通す」目的の文書について、より効果的な方法を、プレゼンのプロが解説する。《取材・構成=林加愛》

【稟議書】6W2Hを正確に!

●NG例

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・宛名がないので、誰に向けた文書かわからない。必ず宛名を書く
・部署と名前のみでは情報不足。内線番号orメールアドレスは必須
・「~について」では意図が不明瞭。資料購入を決裁してほしいなら「資料購入のお願い」のほうが伝わりやすい
・出版社名がない。また、この本に関するもう少し具体的な情報もあったほうがより良い
・1巻ぶんの価格なのか、3巻の合計かが不明。税込・税抜かも不明
・「いつまでに連絡してほしいか」を書いていない
・「以上」の二文字の間には全角スペースを入れるのが慣例的なルール

「ヌケモレ」「曖昧さ」に注意を

稟議書の目的は「読み手の決裁」。しかしこの文書では、その判断材料が不足しています。

判断材料は、「6W2H」で考えるのが基本。文書作成時には「誰が、いつ、どこで、何を、誰に、どのように」の5W1Hに加え、「いつまでに(期限)」と「いくらで(価格や費用)」の2項目を足した8項目が記されているか、一つ一つチェックする習慣をつけましょう。

この文書では、「誰が(宛先と差出人)」「いくらで」「いつまでに」の情報に抜けや曖昧さが見られます。「何を」に関しても、資料購入を希望する気持ちが今ひとつ伝わってきません。タイトルを「お願い」に変えるだけで、その意図を明確に示せます。

「見た目」にも工夫が必要。すべての文字が均一だと平坦な印象になります。タイトルと項目だけ文字を大きくするなど、メリハリをつけましょう。なお、レイアウトが上に偏り過ぎている点も要改善。書き終えた時点で見直し、上下左右のバランスが均等になるよう調整すると良いでしょう。

【提案書】改善のメリットを訴えよう

●NG例

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・「何を改善するための提案か」が書かれておらず、つかみが弱い
・内線番号かメールアドレスを入れる
・文章が長すぎて概要がわかりづらい。現状のデメリットを、数字等で具体的に示す情報もほしいところ
・箇条書きはシンプルに。二つ以上の情報が入っていたら項目を分ける
・「いくらで」「いつまでに」の情報が抜けている

●OK例

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・関係者にとってメリットとなるキーワードを入れる
・冒頭でシンプルに文書の目的を伝え、問題提起と提案は箇条書きに
・数字的なデータを入れることで、問題点がリアルに伝わる
・費用と期限を明記。期限に関しては、その期日を希望する理由も入れる。

「数字」を入れると効果的

相手に「提案のとおりにしよう」と動く気になってもらう提案書をつくるには、タイトルから工夫が必要です。第一印象で読み手が前向きになれるよう、「効率化」や「強化」など、改善のメリットを感じさせる語句を入れるのがコツです。

その上で「問題提起」と「改善方法」を伝えるわけですが、NGバージョンでは、問題提起部分が長々と文章で語られていてわかりづらいのが難点。どう困っているかが伝わらないと、改善へのモチベーションが上がりません。箇条書きで情報を小分けし、シンプルに伝えましょう。

ここで数字的な裏付けを入れるのも有効です。関係者に簡単にリサーチをして、「1日平均2回」という手間や「10分程度」の時間ロスを書けば現実感が一気に増します。

なお、変更に伴う費用も、判断材料として非常に重要な項目です。今回は費用が発生していますが、ゼロの場合はゼロと書くことも大事。「タダでできる」ことが説得力になります。

【企画書】ビジュアルに訴える

●NG例

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・本文と同じような大きさ・フォントでは目立たない。文言も淡々としていて物足りない印象
・長すぎる文章では、読むのに時間がかかり、読み手の集中力が低下する
・全体的にビジュアル不足
・試算書・仕様書を添付して「詳細はこちら」だけでは不親切

●OK例

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・「企画書」はヘッダーの部分に入れる
・タイトル文字を大きく。無味乾燥な名称ではなく、キャッチーな見出し風に
・一番伝えたい部分はビジュアルで表現。グラフでデータ上の情報も伝わり、人物のセリフで感情にも訴えられる
・価格や販売経路など、添付の仕様書・試算書の内容を抜粋して乗せる
・簡単な完成予想図もあるとさらに良い。手書きでも十分雰囲気が伝わる

書類も「つかみ」が大事!

全体的に「愛想ナシ」なのが、NGバージョンの問題点です。ビジネス文書という枠内でも、読む人の心に訴える工夫はできるものです。たとえばタイトルを「報告書」「企画書」といった無味乾燥なものにしないこともその一つ。名称はヘッダー部分に入れ、タイトルには前向きなメッセージを織り込んだ、「つかみ」の役割を持たせるのが良い方法です。

また、視覚情報を取り入れることも大事です。社内向けの企画書なので大がかりなビジュアルは必要ないものの、グラフや吹き出しを要所要所で使えば、雰囲気の伝わり方が大きく変わります。

なお、企画の詳細は、添付の「仕様書・試算書」に「丸投げ」しないこと。販売価格や販路、開発費用などの重要な情報は、企画書上にも簡略に記しましょう。数字は「仮」や「約」でも構いません。その情報があれば、読み手はこの一枚でアウトラインをつかめます。

【プレスリリース】メリハリをつけ、ひと目で価値を伝える

●NG例

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・ひとまとめの「各位」では、相手への思いが伝わりにくい
・事実だけが述べられたタイトルで、惹きつける力が弱い
・ビジュアル要素が全くないため、読み手の目に留まらない
・イベント時は担当者も会場に赴くため、携帯電話番号の記載がないのは不親切

●OK例

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宛先の社名・部署を必ず入れる。担当者名がわかっている場合は氏名も
・ニュースバリューを感じさせるタイトルに。「最も」「世界初」「ランキング第1位」などのワードを効果的に入れる
・書影を入れて、ビジュアルで惹きつける
・当日の緊急連絡用に、担当者の携帯電話番号を入れる
・連絡先は囲みで目立たせる。一番確実で便利な連絡手段(この場合はメール)を大きく記載する

提出前に「白黒コピー」を取る!

新聞社やテレビ局等の報道機関は原則として、プレスリリースをFAXで受け取ります。その場合、複数枚にまたがった文書は散逸の原因に。メールで受け取るとしても、あまり長い文書は読むのが大変ですから、1枚にまとめるのが鉄則です。また、白黒のFAX紙面で見苦しくならないかも重要です。作成後に白黒コピーを取って確認すると万全。パワーポイントなら「グレースケール」で書くのもおすすめです。

内容面では、「この情報はあなたにとってお得である」ことを伝える文書にすること。

相手は毎日何枚ものプレスリリースを受け取るので、ひと目で価値の伝わるものでなければ埋もれてしまいます。書影や人物写真などのビジュアルは必須。タイトルも「日本初」「月間1位」など、卓越性を語るワードを意識的に取り入れましょう。

末尾の連絡先にも一工夫を。コツは、差し出し人にとって一番便利な連絡手段を、ほかの情報より大きく書くこと。そうすれば、相手は自然にその方法を選択します。

天野暢子(あまの・のぶこ)
プレゼン・コンシェルジュ/イー・プレゼン代表
広島修道大学卒業後、広告代理店媒体担当、業界紙記者、大手ゲームメーカーやホテルチェーンの広報等を経て、2006年にプレゼン・コンシェルジュとして独立。確実に相手の心を動かせるプレゼンテーションと、その基盤となる資料作りの極意について指導を行なう。『図解 見せれば即決!資料作成術』(ダイヤモンド社)他、著書多数。(『The 21 online』2017年11月号より)

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