ロジックよりも「共感」を大切に

資料の作り方
(画像=The 21 online)

顧客や取引先の「心」に響くプレゼン資料は、何が違うのか──。かつての上司である孫正義氏を始め、数々の企業人の納得・共感を得てきたプレゼンテーションのプロ・前田鎌利氏は、「念い(おもい)」を資料に反映させることが鍵だと語る。受け取り手の直感に働きかける資料作成の極意について、お話をうかがった。

「言葉だけ」の資料は心に響かない

ロジックを整え、立て板に水を流すように説明したはずなのに、なぜか相手の反応が鈍い──という場面を経験したことはありませんか?

それは、相手を「理解させる」ことはできても「心を動かす」ことができなかったから。人は、心を動かさない限りアクションを起こすことはありません。相手の心を動かすには、「念い(おもい)」をのせたプレゼンをすることが欠かせないのです。

念という字は、「今」と「心」でできています。現在、自分の心を支配している希望や夢、企業で言うならば「理念」という根本姿勢を表わす言葉です。

プレゼン資料も、ただ論理的に作ればよいのではなく、こちらの姿勢や熱意を伝える内容にしなければなりません。それによってはじめて、相手の心に響かせることができるのです。

では、相手の感情に訴える資料とは具体的にどんなものでしょうか。それは、ロジックをベースに、聞き手が「共感」→「信頼」→「納得」→「決断」という過程をたどることができる資料のこと。とくにイントロでは、「そうそう、それが問題なんだ」といった共感を得られるように、直感的に理解できるメッセージが必要です。

「社内と社外」では資料の作り方が違う

1つ注意したいのは、資料の作り方は、相手によって大きく変わるということ。とくに対象が社内か社外かによって、言葉遣いや画像の見せ方や構成は大きく異なるのです。

まずは共通点から。社内外を問わず、プレゼンを通した提案の目的のほとんどは問題解決なので、「課題提示」→「原因」→「解決策」→「効果」という構成が基本になります。

では、社内外での相違点はどこか。それは、問題が周知されているかどうかです。社内ならば、すでに共有された問題に対して資料を作ることが多いので、課題提示はコンパクトに、原因や解決策をしっかり示す見せ方が正解。感情に訴えるビジュアル要素は大して必要ありません。

一方、他社に新商品などをアピールする際は、スタート地点で相手が問題を認識していることは稀です。無関心な状態から、「このままではいけない」「たしかにこの商品が必要だ」と認識してもらう──つまり、感情を動かすことが必要なのです。そのために、冒頭では課題を提示し、問題意識を喚起するビジュアルを取り入れ、解決策では、それを一気に払拭するような印象的な見せ方をすべきなのです。

なお、社外では専門用語の多用に注意しましょう。IT業界など、専門性の高い分野に身を置く人はとくにこの点で失敗しがちです。相手に内容を理解してもらえないうえに、「細かい配慮ができない会社」と捉えられてしまいます。

そして、どんな場合にも心得ておきたいのは「詰め込みすぎ」を避けること。パワーポイントなどのプレゼンツールは、あくまでキーワードやキーメッセージを端的に伝えるもの。長文はNG、グラフも「ワンスライド・ワングラフ」が鉄則。細かな説明は口頭で行ない、芯の部分だけをシンプルに表示することが、相手の心にダイレクトに届かせる秘訣なのです。

前田鎌利(まえだ・かまり)㈱固代表取締役
1973年、福井県生まれ。東京学芸大学卒業後、光通信、ジェイフォン等を経てソフトバンクモバイル㈱(現・ソフトバンク㈱)において事業プレゼン分野で活躍。2014年に独立、大手各種企業のプレゼン指導やプレゼンテーションスクールの全国展開に携わる。著者に『社外プレゼンの資料作成術』(ダイヤモンド社)などがある。(取材・構成:林 加愛)(『The 21 online』2017年11月号より)

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