「3つの基準」で、「やらない仕事」を決めよう

隠れムダ業務,長期休暇
(画像=The 21 online)

休暇を取りたくても、仕事が忙しくてなかなか休めない……。研修会社「らしさラボ」代表の伊庭正康氏も、かつてそう嘆いていたという。しかし、仕事のやり方を見直したことで、長期の休みがとれるようになり、頻繁に海外旅行に行けるようになったそうだ。その「仕事の見直し」ポイントとは?《取材・構成=杉山直隆》

「余裕があるときに」では一生休めない!

1、2日程度ならともかく、1週間程度の休みを盆と正月以外に取るのは難しい……、そう考えている人は多いと思いますが、私は、仕事に対する考え方を変えれば、誰でも取れるようになると思います。

休暇を取るためのコツは、まず、半ば強引にでも、休む日程を決めてしまうことです。多くの人は、仕事の状況を見ながら、「余裕がある時に休もう」と考えがちですが、それではいつまで経っても休めません。

余裕があるかどうかわからなくても、休むと決めてしまい、旅行の予約などをすれば、仕事を前倒しせざるを得なくなります。すると、どうすれば限られた時間内に仕事を終わらせることができるか、必死で考えるようになります。結果、どうにかなるし、仕事を素早く終わらせる方法も見つかるものです。

仕事の忙しさを気にせずに、休みを入れることに罪悪感を抱く人もいるかもしれませんが、私は、休暇は仕事と同じくらい重要なことだと考えています。リフレッシュすることで生産性が上がったり、見聞を広めることで創造性が高まったりすると考えれば、休暇は仕事のパフォーマンスを高めるために必要な投資です。遠慮はいりません。

以上の考え方は、残業を減らすうえでも効果的です。余裕があろうとなかろうと、夜に予定を入れてしまえば、残業しなくて済む方法を本気で考えます。

「やらないこと」を決める基準とは?

休みの予定を入れたら、次は、限られた時間内に仕事を終わらせる方法を考えていきます。このときタイムマネジメントが必要になるわけですが、その大前提となる最も重要なことは、「何をやるか」より「何をやらないか」を考えることです。

普段の仕事のプロセスを冷静に検証すると、思いの他、必要のない仕事をたくさんしていることに気づくものです。どんなに仕事のスピードを上げたり、細かくスケジュールを立てたりしても、仕事がたくさんあれば、終わりません。手帳術やタスク管理について考える前に、やることを減らすことこそが何よりもタイムマネジメントとしては大事です。

ただ、「その仕事をなくして良いかどうか」の判断が難しく、迷われる人が多いと思います。それは、次の三つの観点で判断できます。

1.お客様に影響が出ないか?
2.職場の上司や同僚にしわ寄せがこないか?
3.さまざまなリスクが高まらないか?

たとえば、客先に提案する際に、その都度、提案書を作成していたとします。これをなくしたらどうかと考えてみるのです。

すると、問題がありそうなのは1の「お客様への影響」だけとわかります。1にしても、提案書を一切なくしたら、お客様は困惑するかもしれませんが、どの会社にも応用が効くものを作り、それを持って行けば、お客様は気にしないかもしれません。いちいち作らなければ、その分の手間が大幅に削減できるわけです。

こうして一つひとつ検証すると、資料や書類作成のような間接業務は不要であり、これらをなくすことで、多くの時間を作り出せると気づくでしょう。

「小さな実験」で会議や朝礼もなくす

次は、会社や部署全体でも「やらなくていい」業務について考えましょう。

具体的に言えば、朝礼や会議、日報などが当てはまるでしょう。これらをなくせば膨大な時間を捻出できます。たとえば毎日三十分の朝礼をなくせば、月に十時間以上浮く計算です。

もちろん、これらをなくすには、上司に提案し、許可を得ることが必要です。どこの職場でも、新しい提案は、すんなりと通らないもの。たとえば、朝礼の廃止を提案すれば、「朝礼がないと、皆の状況がわからなくなる」などと言われることでしょう。上司は、なくなることのリスクを恐れているわけです。

そんな上司の壁を突破するコツは、「小さな実験をさせてもらうこと」です。

たとえば、朝礼の件なら、「1週間だけ、朝礼をなくしてみませんか?」などと、期間限定で実験をすることを提案するのです。そのときには、「リスクのない範囲で」と強調しましょう。

これなら、上司も、「それなら大きな問題は起きないだろう」と許可してくれるはずです。この実験で、同僚から好評価が得られれば、壁は突破したも同然。皆が喜んでいる姿を見れば、上司も反対する理由がなくなり、提案を通してくれるでしょう。

その調子で、部署のムダな仕事をなくしていけば、かなり多くの時間が捻出できるはずです。

メールは「件名だけ」で済ます!?

こうして「やらなくていい仕事」を削っていくと、最後には、「やらなくてはいけない仕事」だけが残ります。あとは、これらをより短時間で済ませる方法を考えます。次の三つの観点から考えてみると良いでしょう。

一つ目は、「一石二鳥を狙う」。一度に二つ以上のことを同時に済ませることです。

たとえば、商談が成立したあと、社に戻って契約書を作成し、後日改めて訪問してサインをいただくことがありますが、もう一度訪問するのは時間のムダです。成立する前提で契約書を持参し、商談が成立した直後にサインをもらえば一度の訪問で済みます。

二つ目は、「移動時間を減らす」こと。近場の二件のアポイントを、別の日に訪問したら大幅な時間のロスになります。

そうならないためには、お客様から「この日に来てほしい」といわれても、そのまま受け入れないこと。そして「○日ならいかがですか?」とこちらから希望を述べましょう。

三つめは、「作業をよりシンプルにする」ことです。たとえば、メールの文章を短くすること。長文を書くのは時間のムダですし、読み手にも嫌がられます。

私が実践したのは、件名だけしか書かないメールです。具体的に言えば、「(件名のみ)明日の打ち合わせ、よろしくお願い致します」などと書いて、本文には何も書かないのです。

「そんなこと許されるの?」と思うかもしれませんが、社内なら受け入れてもらえます。私の場合は、最初は頭が柔軟な同僚に送り、彼にも真似してもらうことで、徐々に部署全体に広げることができました。

伊庭正康(いば・まさやす)〔株〕らしさラボ代表取締役
1969年、京都府生まれ。91年、リクルートグループ入社。プレイヤー部門とマネージャー部門の両部門で年間全国トップ表彰を4回受賞。その後、〔株〕フロムエーキャリアの代表取締役に就任。2011年、〔株〕らしさラボを設立。「職場内」「お客様」との関係性を深めるコンサルタントとしての活動が評判を呼び、年間240回以上の企業研修、コンサルテーションを行なう。著書に『この世から苦手な人がいなくなる』(KADOKAWA)などがある。(『The 21 online』2017年12月号より)

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