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(写真=PIXTA)

開成町は神奈川で最も面積の小さい自治体です。神奈川といえば横浜や湘南といったイメージから華やかな街並みを思い浮かべますが、開成町は「田舎」という表現がふさわしい、静かな町です。そんな同町が掲げた一つの目標が「日本一元気な町」でした。その目標を達成するべく始めたタウンブランディングが成功をおさめ、現在、町内は活気であふれています。

開成町はどのようにしてブランディングを行い成功したのか、その軌跡をたどります。

きっかけは町政60周年

2015年の国勢調査によると、開成町の人口増加率は4%、県内でトップの増加率となりました。もともと開成町は、子どもの医療費助成を小学6年生まで行い、子育て支援センターを開設するなど子育て環境の整備に力を入れており、その成果から子育て世代が多く移住してきています。

人口増加の背景には、開成町の町内外にある大企業の研究所や関連工場が多くあること、その従業員家族が同町に魅力を感じられる取り組みを行ってきたことがあります。

多くの自治体が人口流出を嘆く中で、大きな成功をおさめているように見える開成町ですが、町自体の知名度が低く、この町ならではの観光資源がないことが課題でした。

そこで考えたのが、町全体のブランド化計画です。観光資源がなくとも、今あるまちの魅力を多くの人に知ってもらい、町民にはさらに愛着を持ってもらうことを目指し、ブランディングが開始されました。

コンセプトは「田舎モダン」。都心から程よい距離感を持つ開成町ならではの田舎の空気と、それを楽しむ町民たちのモダンな暮らしを一言で表しています。

デザインを統一するための大胆な契約

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(写真=PIXTA)

町の魅力を伝えるために、まず始めたのはデザイナーとの大胆な契約でした。ブランディングを得意分野とする東京のデザイン会社「doppo」に対し、町に関わるもののデザインを全面的に支援してもらうよう依頼します。

その結果、役場で使う封筒の1枚から、町のロゴ、ポスター、広報、幼稚園バスのラッピング、町のマスコットキャラクター「あじさいちゃん」のグッズなど200点を超えるデザインを発注しました。

大きな町であれば、ブランディングのために町全体のデザインを統一するのはとても大変なことです。町一丸となって垣根を超えた取り組みは、県内一の小さな町だからこそ成し得たことだといえるでしょう。

ありのままのまちを映し出すプロモーションブックの完成

町全体で行ってきた地道な活動、その集大成となったのが2015年に製作された「町政60周年記念のシティプロモーションブック」でした。

田舎モダンをテーマに掲げ、町の日常をひたすらに切り取ったプロモーションブック。ページをめくるとところどころに町を表すキャッチコピーがうたれており、開成町の魅力を増幅させています。

写真の中から見えてくるのは、町民たちのいきいきとした姿です。この本を見た多くの人が開成町に興味を持ち、訪れ、暮らしてみたくなるような一冊に。そんな願い通り、多くの人を虜にしたプロモーションブックは話題を呼びました。

2015年以降も、開成町ではブランド戦略を続け、現在ではあじさいちゃんがSNSアカウントを開設し、まちのイベントや細やかな情報を町外へと発信しています。その他、開成町ブランド認定事業も行われ、開成町の名産品をブランドとして登録。イベントなどを通じて開成町を全国に向けてPRしています。

新しい名物を作るのではなく、今あるものを最大限に発揮し認知してもらう。ブランディングによって、町民が一致団結してまちを作り上げているという新たな開成町の魅力が生まれました。

行政が先導をとり、その熱意に町民も動かされ町が一体化していく。開成町の取り組みは、観光資源の乏しい多くの自治体のモデルケースとなるでしょう。(提供:JIMOTOZINE)