少子高齢化のなか、懸案の「2018年問題」がいよいよ現実味を帯びてきた。これは、日本の18歳人口が2018年ころから減少し、それに伴って大学進学者数の低下や大学の定員割れなどが発生するというものだ。実際、日本の18歳人口は1992年の205万人から2009年には121万人まで減少した。2009年以降はほぼ横ばいで推移していた18歳人口は2018年からマイナスに転じ、2031年には99万人になると予測されている。
若年人口が減少するということは労働力人口も減少するということになる。超売り手市場が到来するなか、中小企業の採用活動はより厳しさを増すと考えられる。今回は、中小企業の採用課題を解決するコツを見ていこう。
約半数の中小企業が満足に正社員採用できず
経済産業省が2017年に実施した「平成29年中小企業の雇用状況に関する調査集計結果」によると、「人手不足・人材不足」を感じている中小企業は66.4%。なかでも、「正社員の非管理職」(74.5%)、「管理職」(29.1%)への不足感が強いようだ。
また、「人手不足・人材不足」を感じている中小企業に直近1年間の採用の手応えを聞いたところ、正社員を「採用できている」と回答した企業は50.2%となった。約半数については、満足な採用活動が行えていないようだ。
中小企業の採用活動は、新卒はおろか中途採用でも厳しさを増している。
中小企業が採用活動で注意すべきポイント
中小企業は、大手企業に比べればどうしても知名度やブランド力、待遇面などで見劣りするのは事実だ。マイナスからのスタートになることを肝に銘じつつ、以下の点に注意していきたい。
1.求人市場を調査する
新商品を開発する際のマーケティングは基本中の基本だ。しかし、求人に関してきちんとマーケティングができているという企業は少ないのではないだろうか。
上記の経産省の調査では、中小企業の採用活動の方法として、ハローワークが78.7%と圧倒的だ。ハローワークで求人する際に、求人票を前回と同じ内容で使い回しているという企業もあるのではないだろうか。実際、先の調査でも「採用活動に関して、人物像や処遇などに関する外部相談」をハローワークや労働局にしたという企業が40.6%いる一方で、「相談していない」という企業も40.2%とほぼ同数存在する。
求人市場は常に変化する。前回採用できた求人票がベストとは限らない。ハローワークや労働局、社労士などの外部の意見を取り入れつつ、求人内容は毎回見直そう。また、求人内容をきちんと記載しておくことで、選考過程前に応募者をスクリーニングできるというメリットもある。時間をかけて採用した応募者が「思っていた仕事内容や待遇と違っていた」と短期間で辞めてしまうリスクをあらかじめ防げるのだ。
2.譲れない最低限の条件を決める
もちろん、中小企業も高スキルの有能な人材を採用したい。しかし、有能な人材は大手企業からの引き合いも多く、現実的には採用するのが難しい。採用選考の際は、最高の条件の人材を思い描くのではなく、「譲れない最低限の条件を決める」ことがより重要だ。資格や業務経験は入社後に身につけることもできるので、「初対面での感じが良い」など、入社してからではなかなか変えることができない個人のパーソナリティーや適性に焦点をあてて採用するのも良いだろう。
3.合否判断を速くする
中小企業のなかには、採用担当者を置かず経営者が合否判断している企業も多いだろう。日々のさまざまな重要事項に忙殺されるなかで、ついつい面接した候補者への返事が後回しになってしまうことがあるかもしれない。
いまや、求人市場は超売り手市場だ。感じの良い優秀な人材は、いくつもの企業からオファーをもらっていることを忘れてはいけない。「これは」と思う候補者が現れたら、面接の場で待遇の交渉を始めても良いくらいだ。それこそが、経営者が独断即決できる中小企業のメリットともいえる。
採用に必勝法はない
採用活動はタイミングなので、「こうしたら必ず成功する」というような必勝法は存在しない。しかし、いくつかのポイントに気をつけることで、効率的により良い人材を採用することができるようになるはずだ。(提供:百計オンライン)
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