資産運用における収益には、配当・利息収入(インカムゲイン)と値上がり益(キャピタルゲイン)があります。株式投資においては値上がり益を得ることが醍醐味ですが、超低金利時代で預貯金にほとんど利息が付かないなか、配当利回りに着目すれば配当収入もかなり魅力的です。

配当金と株主優待制度

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(写真=wsf-s/shutterstock.com)

配当金は企業が利益の一部を株主に還元するものです。最近は積極的な利益還元策として配当を増やす企業も多くなっています。しかし、配当はその年の企業の業績によって増える(増配)こともあれば、減る(減配)こともあります。

利益還元策の一環として、株主優待制度もあります。企業が株主に対し、配当金以外に自社の製品やサービス、自社の店舗・施設などで利用できる優待券、クオカード、おコメ、各地の名産品などを贈呈する制度です。

株主優待制度は海外ではほとんど例がなく、日本独特の制度と言われています。2017年9月時点では、上場企業のうち3分の1以上の企業が実施しています(大和インベスター・リレーションズ「株主優待ガイド2018年版」)。株主優待を行う企業は、自社製品・サービスのPRや、長期保有する個人株主の増加などをねらっています。

株主優待は利用しなければ価値がない場合も多いため、金銭的な収益を上げる必要がある機関投資家には不評ですが、個人投資家はお中元やお歳暮のように楽しみにしている人が多いようです。

配当利回りとは

配当利回りというのは、配当金が投資金額の何%になるのかを示す数値です。

式で説明すると「配当利回り(%)=1株あたり年間配当金÷株価×100」となります。例えば予想年間配当金が10円で株価が1,000円の場合、予想配当利回りは1.0%となります。株価が上昇すれば予想配当利回りが下落し、株価が下落すれば予想配当利回りが上昇する関係です。

株主優待制度を金額に換算し、年間配当金と合算した金額(実質配当金額)を投資金額で割った総合利回り(または実質配当利回り)も、最近は注目されることが増えています。株主優待の内容によっては総合利回りが、配当金だけで算出した配当利回りの2倍以上になることも珍しくありません。

例えば、ある銘柄の年間の配当金が1株あたり5円で、株主優待が1単元(100株)あたりクオカード1,000円分だった場合、株価1,000円で100株購入したとすると、配当金額は500円で配当利回りは0.5%ですが、実質配当金額は「配当金5円×100株+株主優待1,000円」で1,500円となり、総合利回りは「実質配当金額1,500円÷投資金額10万円×100」で1.5%となります。

配当利回りは株価の割安・割高を判断する投資尺度の一つ

配当利回りはPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)とともに、株価の割安・割高を判断するための投資尺度の一つです。株価の割安・割高というのは、そういった投資尺度を市場全体や、同じ業種の類似企業、その銘柄の過去の水準などと比較して、総合的に判断します。

配当利回りや総合利回りが高い銘柄の場合、決算期末が接近するにつれて配当や株主優待制度の権利取りの買い(配当や株主優待を受けるためには、決算期末に株主を確定する際、株式を保有している必要があります)が入り、しばしば株価が上昇することがあります。また業績が好調な企業ほど、増配期待で買われて株価が上昇しやすくなります。結果として、配当利回りが高い株に投資すると、配当収入だけでなく値上がり益も期待できる場合があります。

もちろん、いくら配当利回りが高くても、業績悪化懸念などで株価が大幅に下落すれば、配当収入と値下り損失のトータルで損失が残ることもあります。

配当金額ではなく、配当利回りに着目

配当重視で株式投資する場合には、配当金額ではなく、配当利回りに着目することが重要です。

例えば、A銘柄の配当金が100円で株価が1万円、B銘柄の配当金が20円で株価が1,000円の場合、配当利回りはA銘柄が1.0%、B銘柄が2.0%となります。仮に株価の値上がり期待が同程度だとすると、配当金額が多いA銘柄よりも、配当利回りが高いB銘柄に投資するほうが、投資効率が高いということになります。

超低金利時代の現在は、多くの銘柄で配当利回りが預貯金の利率を上回っています。株式投資というと、株価が上がる銘柄を探すことと思ってしまいがちですが、業績が安定していて配当利回りが高い銘柄を長期的に保有するのも有力な投資手法です。積極的に値上がり益をねらう肉食系の投資だけでなく、じっくりと配当を刈り取る草食系の投資も、一度検討してみてはいかがでしょうか。(提供:マネーLife Style


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