蘇寧(スーニン)は1990年12月、中国江蘇省・南京市で設立された家電量販店である。高度経済成長の波に乗り、1700店舗を展開するチェーンとなった。日本のラオックス <8202> の親会社である。

その蘇寧の2017年度業績速報(海通証券)が発表された。売上は全チャンネルを合わせ2432億元、前年比30%プラスだった。またグループ上場会社の利益は42億1000万元、前年比498%プラスと5倍増となった。O20融合型へと変化して以来、最高の成績となった。これは、近年のあらゆる経営努力と不可分のはずである。ニュースサイト「今日頭条」が伝えた。どのような経営努力を行ったのか。以下探ってみよう(1元=16.85円)。

経営立て直し

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(画像=蘇寧Webサイトより)

しかし速報の内容を詳しく検討すると、決して手放しで喜べるものではない。実は42億1000万元の利益のうち、32億8500億元はアリババへの株式売却益である。営業活動による利益は9億2500万元にすぎない。しかしこれでも2016年の7億400万元から31.4%伸びている。

もう少し前にさかのぼってみよう。2008年~2011年にかけての経営は、すこぶる順調だった。この4年間で売上は1.9倍、利益2.2倍となり、それぞれ939億元、48億2000万元に達した。ラオックスを買収したのは2009年、この絶好調時に当たる。ところが2012年度以降、業績は急速に冷え込む。

この年“美蘇”と称されるもう一方の雄「国美電器」は、初の赤字転落を経験している。家電量販店という業態自体が行き詰まったのである。

その一方で蘇寧は、オンライン販売の準備を進めていた。2009年8月、IBMと共同で「蘇寧電器商城網」の実験を開始している。2012年2月には「蘇寧易購」と名を改め、実際にネット通販の運用を始めた。2015年にはアリババのB2C天猫に、正式参加している。自社サイトと天猫の両方で販売をしているのだ。この体制は大きな効果を上げた。そして「蘇寧易購」は、2017年、中国ネット販売ブランドの19位に選出された。

ネット通販伸び、O2O融合へ

さらに2015年には、アリババから283億元の出資を受け入れている。なりふりかまわずオンライン販売を強化したのだ。そして2017年、第四四半期のオンライン売上は“爆発”した。この四半期のオンライン受注額は460億元に達し、前年同期比60%も伸びた。そのうち直営サイトは312億元(前年比▲43%)天猫など第三者サイトは147億元(同▲117%)だった。

一方で直営サイトも、出店企業を募る総合通販へと変化している。これは手数料収入の入る体制が整ったということを意味する。そして家電量販店で首位、総合通販でアリババ、京東に次ぐ3位という、O2O融合のユニークな企業が出来上がった。日本の業界順位に当てはめると、ヤマダ電機<9831>が、ヤフーショッピングを運営しているようなもので、ちょっと想像しにくい。しかしこれを、わずか5年間で実現してしまったのである。

新たな成長へのステージとラオックス

海通証券の報告は、蘇寧の2018年は新たな成長期に入るとし、次の2点を指摘している。1点めは、トップ企業同士の争いが“平衡状態”にあること。アリババとは提携を深め、京東との価格競争は落ち着いている。

2点めは、蘇寧自身の戦略目標が明確なこと。オフライン店舗の利益を改善、オンラインの成長を加速させ、独自の物流と金融を整備する。そのため金融業務を強化、「蘇寧銀行」を設立する。

こうして2018年の蘇寧は、存在感を増しつつ新しいステージに入る。それでは日本の子会社ラオックスはどうなるのだろうか。これまでどおり日本商品の輸入、中国人訪日客向けの店舗作りは変わらない。新たな動きとしては「蘇寧金融アプリ」の世界展開を促す役割が与えられた。これはモバイル決済、消費者金融などを併せ持ったアプリである。日本の店舗でモバイル決済の利用を促進していく。モバイル決済シェアは、支付宝(アリババ)微信支付(テンセント)で2分されているが、ここへ挑むのである。

具体的には2017年12月25日~2018年3月31日までの間、ラオックス店舗において、蘇寧金融アプリの決済をした場合、最大で4999元の値引きという“超優遇”を受けられる。

このキャンペーン期間はまもなく終わる。その検証結果から、また新たな販促の途を探ることになるのだろう。ラオックスは蘇寧の世界戦略の先兵、実験場としての役割が強まるのだろう。今年の蘇寧とラオックスには、いろいろな動きがありそうだ。その動向から、目が離せないことになりそうである。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)