先週の金融市場は米国発で再びリスクオフの株価急落が直撃した。22日のNYダウは前日比724ドル(2.9%)安の2万3957ドルで引け、過去5番目の下げ幅となった。トランプ大統領が中国からの輸入品に対し最大600億ドル(約6.3兆円)の高関税を課すとの覚え書きに署名したことがきっかけだった。市場は中国の報復措置から貿易戦争を懸念した。NYダウは23日も424ドル安と続落している。

米国株安を受けて翌23日の日経平均は974円(4.5%)安の2万0617円で引けた。下げ率はNYダウを大きく上回り、VIXショック後の安値2万0937円(3月5日)を更新してしまった。NYダウは23日の引け値では4ヶ月ぶりの安値だが、2月のVIXショック後のザラ場安値2万3360ドル(2月9日)はかろうじて上回っている。

米国発の外部要因での下げではあるが、リスクオフによる104円台の円高で日本企業の業績悪化懸念が拡がる。加えて、森友問題で国会が揺れていることが日本株の投資環境を不透明にしており、日本株の下げを加速させた。23日も米国が続落したことから今週初もギャップダウンして始まる可能性が高い。

最大の焦点は米国株の動向 日本株のワーストシナリオは?

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(画像=360b / Shutterstock.com)

今週も海外要因と国内政治の状況次第でありポジションを傾けづらい。底値模索の展開が続きそうだ。米国市場の動向が最重要。米国株は2月9日の一番底を抜いてさらに下落するか、ダブルボトムを形成して反発するかが最大の焦点だ。

中国に対する高関税は今年11月の中間大統領選の鉄鋼業界などからの票田獲得狙いとの見方が強いが、株価の下落は中間大統領選にとってもネガティブだ。株価の下落に対して何か発言が出てくるかどうかが注目される。トランプ大統領の発言次第では一気にショートカバーが入る可能性もあることには留意したい。

27日午後2時には佐川前国税庁長官の証人喚問がある。日本株市場のワーストシナリオとしては麻生財務相の退任や安倍内閣退陣だ。安倍内閣の支持率は危険領域と言われる40%割れの39.3%に低下していおり、17年夏の加計問題以来の低水準だ。不支持率は40.4%と支持率を上回った(時事通信社3月調べ)。

ただ、自民党に変わる政党がないのも事実。内閣支持率は下がっているが、政党支持率では自民党は25.2%と2月の28.5%からあまり下がっていない(同時事通信)。自民党にはこれが救いかもしれない。安倍内閣がどうにか持ち応えるのなら、日露首脳会談、米朝首脳会談などの外交次第では内閣支持率が回復する可能性もある。

27日は18年3月期決算会社の権利付き最終日。受け渡しベースでは28日から新年度入りとなる。日経平均は28日には160円ほど配当落ちとなる見込みだ。

4月は過去17年連続で外国人投資家が買い越している月である。外国人は1月2週以来現物を10週連続で売り越した。年初からの現物・先物合計の売越額は7兆円を超えた。4月に今の売りが止まるだけでも、株価は立ち直る期待が高まる。それもすべては為替次第だろう。

週間株式展望 

今週(3/26〜30)の日経平均は2万円から2万1000円のレンジを想定している。日本株の下げを加速させたのはトレンドフォロー系のヘッジファンドの先物売りだと見られている。トレンドフォローのファンドは通常は短期投資であり買い戻しがどのタイミングで入るかを見極めたい。

2万円に近づけば年金資金や日銀のETF買いや自社株買いが期待できる。戻りの目処は5日移動平均線の2万1350円、25日移動平均線の2万1663円となる。ここを抜けば一安心だろう。

先週の下げ局面では、日銀のETF買いが連日入った。4日間で2940億円の買いを執行した。特に重要だったのは22日の買い入れ。午前中の日経平均が前日比プラスでも買い入れた。トピックスは小幅マイナス(0.08%安)だったが、今まではこの程度の下げでは発動しなかった。日銀が内閣支持率を気にしているとは思わないが、日銀が忖度しているのではと思えるような動きだった。

先週は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の買いと思われる大型株買いが入ったとの見方もある。20日の大型株の上げが顕著だったためだ。日本株の下げでウェイトが下がった分を期末で買い入れたのではないかと思われる。

先週の(3/19〜23)の日経平均は3週ぶりに大幅下落、前週末比1058円(4.9%)安の2万0617円で引けた。週間で4.9%安は、VIXショックで下げた2月1週の1891円(8.1%)安以来、週間では今年2番目の下げ。

週間高値は19日の2万1659円。週末の海外市場でドル円が106円台を回復したことで高く始まったが、週末の内閣支持率が森友文書問題で急落していたことを嫌気し、引けは195円(0.9%)安。

翌20日は米国株が335ドル安となり、日本株も全面安で一時260円ほど下げていたが、日銀ETFとGPIFと思われる買いで下げ幅を99円安まで縮小した。休み明けの22日は下げ相場の戻りを試す相場で211円(1.0%)高となったが、5日移動平均線をクリアすることは出来なかった。

23日はNYダウが724ドル安。ドル円が104円台で、日経平均は一時今年2回目の1000円安で週の安値2万0559円をつけ、2万0617円の974円(4.5%)安で引けた。寄り天井後じり安でほとんど反発もしなかったが、節目となる2万0500円割れを目前に下げ止まった。

23日の米国市場でNYダウは3日連続安で424ドル(1.8%)安と連日で大幅に下落した。NYダウは週間で1413ドル(5.7%)下げ、週間の下げ幅としてはリーマンショック時の08年10月以来の大きさだった。ドル円は104円80銭、日経平均の夜間取引は先週末の大阪引け比210円安の2万0140円と続落している。

テクニカル的には、今週から100日移動平均線が下向きに転じ、13週移動平均線と26週移動平均線がデッドクロスする見込みであり、上値が重い展開が予想されている。

期待は、4月の外国人の日本株買いのアノマリーと3月配当落ち分の再投資。外国人は4月は17年連続買い越し。15年は7555億円、16年は8604億、昨年は1兆9953億円買い越した。09年、14年、16年、17年は1〜3月が売り越し基調でも買いに転じただけに期待が高まる。

3月末配当総額は13兆円程度で過去最高。そのうち、パッシブ系のファンドの大半は実際に配当される6月にかけて配当分を再投資する。配当が落ちてからすぐに先物で手当て買いすることが多いようだ。

週間為替展望

今週(3/26〜30)のドル円相場は104円から106円のレンジを想定している。ドル円レンジは、世界貿易戦争懸念のリスクオフで、3月25日の直近安値105円25銭をブレークした。チャート上の次のサポートは16年9月の100円12銭までなくなった。リスクオフの株安、円高が続くなら一気に円高が進む可能性もありそうだ。ただ、米国で貿易戦争を回避するような何かコメントでもでれば、一気にドルショートの買い戻しが進む可能性もある。

21日にパウエル議長初のFOMCで、FRBはFF金利誘導レートを1.5〜1.75%と予想通り25bps上げ、年内の利上げ見通しを3回に据え置いたため、利上げペースが加速するとの懸念は一段落している。

先週の(3/19〜23)の東京為替市場は2週連続で円高、東京為替市場のインターバンク間の17時のドル円レートは 前週末比1円34銭円高の105円03銭だった。

19日には前週末の米経済指標が景気拡大を示すものだったため4日ぶりの円安で一時105円68銭までつけたが、週末のメディアの調査で安倍内閣支持率が急落していたことでドルは伸び悩んだ。

20日にはNYダウが335ドル高と上げ、FOMCを控えドルに買い戻しが入ったこともあって、一時106円60銭までのドル連騰となり、週のドル円の高値をつけた。

22日はFOMCで年3回の利上げが予想が維持されたため、米利上げペースの加速観測が後退し、円が3日ぶりに売られた。

23日にはNYダウが724ドル安。朝方のシドニー市場でドル円は105円を割り込んだ。日経平均は一時今年2回目の1000円安と下げ幅を拡大する中、東京市場でも週間のドルの安値となる104円64銭をつけた。23日のNY為替市場では円の高値は104円66銭、引けは104円80銭。株が続落したのに対しドルは下げ渋った。

【今週のイベント・経済指標】

27日
日本 佐川元国税庁長官国会喚問
日本 注目のRPAホールディングスがマザーズ上場
米 ケースシラー住宅価格指数、リッチモンド連銀景況感指数、CB消費者信頼感指数

28日
米 GDP改定値
米 ニューヨーク国際自動車ショー

29日
日本 百貨店、スーパー販売額
米 PCE物価指数、個人消費、個人所得、新規失業保険申請件数、シカゴ購買部協会景況感指数、ミシガン大学消費者態度指数

30日
日本 鉱工業生産指数、 有効求人倍率、住宅着工
海外 イースターのグッドフライデーで欧米主要市場休場

(ZUU online 編集部)