シンカー:日本経済の復活へのシナリオとチェックポイントを提示する

SG証券・会田氏の分析
(画像=PIXTA)

①潜在成長率が上昇していることが明らかになった

アベノミクスによる改革で、女性・若年層・高齢者の働く力の強化に成功し、少子高齢化でも、労働の力が潜在成長率を押し上げ始めた。不断の労働改革を進め、労働の力を維持していくことが重要である。

労働の力のみで潜在成長率を押し上げるのは限界である。次は、企業活動の活性化とIoT・AI・ロボティクスなどの産業革命を追い風に、次は資本の力により潜在成長率を更に押し上げる必要がある。

単純な労働・資本のインプットの拡大だけではまだ本格的な回復ではない。完全雇用で景気が良くても、実質所得増加の源である生産性が大きく向上するまで経済政策のアクセルを緩めてはいけない。

図)内閣府の潜在成長率の推計

内閣府の潜在成長率の推計
(画像=内閣府、SG)

②生産性が大きく向上すれば日本経済の復活

リストラではなく、景気拡大局面の投資によるイノベーションで生産性が向上すればバブル崩壊後初めてで、日本経済の長期低迷からの復活を意味する。そして、自己実現で日本国民は明るくなる。

デジタル革命による生産性の向上は、所得格差・過剰貯蓄・雇用破壊を生みやすいため、教育による機会の平等、貧困連鎖の防止、完全雇用の状態の維持などを財政政策で目指す必要がある。

危機への過度な警鐘を含む悲観論から逆算するこれまでの政策はリスクが自己実現してしまうため、イノベーションを起こす日本国民の力を信じる楽観論から逆算するアベノミクスの政策哲学は正しい。

図)内閣府の潜在成長率の寄与度

内閣府の潜在成長率の寄与度
(画像=内閣府、SG)

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
チーフエコノミスト
会田卓司