生命保険最大手の日本生命が2018年3月期決算において、個人契約の配当を約300億円増やす方針が伝えられた。保険契約の約700万件が配当の対象となる見込みだ。日銀のマイナス金利政策の導入後、生命保険会社は国債を中心とした運用からの収益を上げることが困難になり、一部保険商品の販売停止や保険料の値上げを実施してきた。

日本生命のみならず、生保各社で契約者に還元する動きが広がっている。新規契約者も保険料値下げでその恩恵を享受できるようだ。対象となる件数は、少なくとも1500万人分を超えるという。

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(画像=aijiro/ Shutterstock.com)

海外資産にシフトで運用益確保

生命保険の基本的な仕組みは、契約者が、「将来に渡り見込まれる運用益」と「死亡する割合」をベースに計算された保険料を支払い、保険会社がその保険料を、国債や株式などで運用しながら、必要に応じて契約者へ保険金や給付金を支払うことで成り立っている。さらに、日本生命では契約者への配当を毎年安定的に支払うことも目標として掲げている。

運用益が予定利率を上回った場合、その分は配当金として契約者に還元される。日本生命に限らず、国債を中心とした安定的な運用を実施してきた生命保険会社にとっては、マイナス金利政策の導入により、運用益確保のハードルは上がった。日本生命は、国内の公社債の割合を引き下げ、海外債券や株式の運用比率を上げて、円安株高などにより運用益を確保した。

日本生命の2017年度第3四半期決算(連結)によると、保険料などの収入は前年同期比5.0%増の4兆596億円、本業のもうけを示す基礎利益は同8.3%増の4873億円となり、増収増益を達成した。ただし、2018年2月初旬には米国長期金利が急騰し、現在に至るまで株価は高値を更新できていないので、2018年1〜3月期は厳しい結果になる可能性もある。

長寿化で死亡割合の低下

マイナス金利下において、資産運用先を海外資産にシフトしたことで運用益を確保した以外に、長寿化によって死亡率が低下したことも、配当金の還元に寄与した。

金融庁から委託を受けて標準生命表を作成する日本アクチュアリー会は、2018年に生命保険会社の保険料の算出根拠ともなる標準生命表を改定。それによると、40歳男性のケースでは、死亡率が1000人中1.18人と、現行(2007年設定)の1.48人より引き下げられる。50歳男性のケースでは3.65人から2.85人へと見直されるなど、長寿化により死亡率が一段と低く設定される。

契約者が死亡するリスクの低下を受けて、契約者などが死亡した際に支払らわれる保険料が、これまでの想定を下回ることになり、生命保険会社は保険料の見直しや契約者への配当還元を迫られる格好となる。

生命保険各社の動向

こうした状況から、日本生命は18年4月からの保険料値下げをすでに発表している。定期保険(50歳男性)の場合、値下げ率は18.7%、金額ベースでは2720円の値引きになるという。保険料の値下げは、新規の保険加入者増加が期待できる一方、既存の顧客への配慮も欠かせず、利益還元にも努める必要があり、死亡率の低下に伴う収益の改善部分を配当として還元する。

<契約者へ還元(増配など)>
日本生命、第一生命、明治安田生命、富国生命など

<新規契約者へ還元(死亡保険の保険料引き下げなど)>
日本生命、第一生命、明治安田生命、住友生命、三井生命、富国生命、朝日生命、ソニー生命など

上記のように、日本生命のほか、生保各社が還元の方針を打ち出している。なお上記は報道ベースかつ業界全体をカバーしたものではないので、詳細は各社に問い合わせて頂きたい。対象となる契約数は、少なくとも1500万人分を超えるという。すでに生命保険を契約している人、これから生命保険に加入しようと思っていた人は、詳細をチェックしておきたいところだ。(ZUU online 編集部)