ゴルフのルールを統括する米国ゴルフ協会が、驚きの新ルールを発表した。「バンカーに入った際に2打罰でのリプレースを認める」というもので、来年度から本格的に施行される。

ルール変更の狙いは、ゴルフ初心者の取り込みと愛好者の獲得だ。世界的にゴルフ人口は減少傾向にあり、協会としても何とか歯止めをかけたい。苦しいゴルフ業界の実情と、活性化に向けた取り組みを追った。

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(画像=Kitzero/Shutterstock.com)

大幅に変わる新ルール

バンカーはほんの一例にすぎず、ルール変更は広範囲に及ぶ。大幅な見直しはゴルフ史上、1899年の統合規則制定に始まり、1934年、1952年、1984年に次いで5度目となる。

・球が動いた場合のルール緩和
パッティングや林・ラフでのボール捜索時に、偶然や過失でボールを動かしても、明らかな故意でない限りノーペナルティとする。

・救済が受けられるペナルティーエリア拡大
1打罰での救済が、池とその周辺以外に、砂漠地・岩石などにも認められる。救済が受けられる範囲はゴルフ場がローカルルールで自由に定めることができる。その他、エリア内の葉っぱ・小石なども除去できる。

・パッティングの煩わしさ解消
旗竿を指したままでのパッティングが許され、旗竿を外したり他のプレーヤーやキャディーに持ってもらったりする必要がなくなる。その他、ラインの修正として認められなかったスパイクマーク等の補修も許される。

・他プレーヤーへの告知義務緩和
ペナルティーエリアやアンプレアブル時の救済ルールによるリプレース時に、いちいち他プレーヤーに宣言する必要はなくなる。

・ドロップによるリプレースの簡略化 ドロップする高さを肩の位置から膝の位置に変更し、リプレースやり直しの頻発を解消する。

ボールをリプレースするときのドロップで、ドロップエリアからはみ出たら、リプレースをやり直さなければならない。肩からのドロップの場合、当然エリアからのはみだしが起こりやすい。

・紛失球の捜索時間短縮
打った球を見失った場合、捜索時間の目安を5分より3分に短縮する。

ルール改訂の狙いは「時短」と「分かりやすさ」

ルール制定の統括団体は、ゴルフの聖地スコットランドセントアンドリュースのR&A(ロイヤルアンドエンシェントクラブ)とニュージャージー州・リバティーコーナーに本拠を置くUSGA(全米ゴルフ協会)だ。両者が協議の上、五輪開催年に改訂ルールを発表するのが通例だ。

今回は改訂の2年も前に原案を発表し、6か月にわたり一般ゴルファーなどからWEBなどを通じてフィードバックを受けた上で、3月12日に最終案を発表した。今後は来年1月1日の実施に向け、ルールブックや翻訳版の配布、動画等を通じた周知を図る。

周到に準備を進めたのは、それだけ改訂が大掛かりだということだ。改訂に改訂を重ねた結果、現状のルールは、一般ゴルファーにとって理解不能なほど複雑な代物となってしまった。今回の改定では、一気に簡素化しわかりやすいルールを目指す。

同時に、プレーを易しくし、時間短縮につなげることも狙いの一つだ。例えば、バンカーショットはビギナーにとって苦手科目の一つだ。プレーを諦めたり、大たたきしたりして楽しめないというプレーヤーも多い。

減り続けるゴルフ人口

2017年に国内で一度でもプレーした人は210万人と、ピーク時の1/3まで減ってしまった。ゴルフ人口の減少は、日本だけではなく世界的な問題だ。

こうした状況に歯止めをかけるため、わかりやすいルールとプレー時間の短縮を通じ、プロフェッショナルや上級者だけでなく、初心者やレジャーとしてゴルフを楽しみたい層に門戸を開こうという訳だ。

ゴルフの敷居を高くしているのは、ルールだけではない。五輪会場の霞が関カントリーが男性正会員しか認めないことにIOCからクレームがつくなど、名門ゴルフ場はどこも閉鎖的だ。ゴルフがより開かれたスポーツに生まれ変わるには、まだまだ課題が多い。(ZUU online 編集部)