大企業と中小企業、また東京や大阪のような大都市と地方を比較すると、平均的な収入に格差があることは否めません。企業の規模を問わず、少子高齢化による人材不足が経営戦略に影を落とし、その影響が直撃している多くの中小企業では、給料アップや独自色を打ち出すなど工夫を凝らしています。昇給が人材不足を解決するベストな方法ではありませんが、日本経済の骨組みを支える中小企業でも給料アップは可能です。

法的な定めがない年収とは?

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(写真=takasu/Shutterstock.com)

実は、「年収」については税法上の「所得」とは異なり、法的な定めはないのです。通常、社員が働いて稼ぐ1年間の給料や賞与(ボーナス)などの総額を言います。この場合、社会保険料や税金などが引かれる前の総支給額のことで、実際に受け取る手取り額ではありません。

年収は、企業に勤める会社員であれば、毎年の源泉徴収票にある「支給金額」で確認できます。給料から差し引かれる社会保険料や税額は、多少の個人差はありますが、通常は年収の15%~25%くらい。年収の8割前後が手取り額となります。

中小企業と大企業の年収を比べてみると?

一般的に、大企業の方が中小企業より待遇面に優れ、企業の規模で給料や賞与に違いがあります。国税庁の「平成28年分 民間給与実態統計調査」によれば、やはり結果は、企業規模が大きいほど給料や賞与は高く、年収も高額という結論となっていることが分かります。

給料は資本金が多い大企業の方が高くなる傾向にあり、賞与の差となるとさらに顕著。逆に、資本金が少ない企業ほど賞与額は少なくなる傾向が見られます。

大企業と中小企業で年収はどれくらい違うのか

具体的な数字を比べてみると、厚生労働省の「平成28年賃金構造基本統計調査 結果の概況」によれば、企業別の賃金は、男性は大企業の平均賃金が384万8,000円で、中企業が320万2,000円、小企業が290万9,000円。女性は大企業が268万7,000円、中企業が242万3,000円、小企業が219万1,000円となっています。

男性の平均賃金では、中企業は大企業の約83.2%、小企業の場合は約75.6%。同様に女性では、中企業は大企業の約90.2%、小企業の場合は約81.5%でした。

・ 都道府県別で年収は異なるのか?

同省の調査には、都道府県別の賃金データもあり、全国平均は304万円。平均を上回ったのは東京都、茨城県、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府の6都府県だけでした。

平均賃金が最も高いのは大方の予想通りに東京都で、373万1,000円。最も低いのが宮崎県234万6,000円でした。その差は年収で138万5,000円にも上ります。これは企業規模別のデータではないので、中小企業の平均年収差は正確には不明ですが、地域差があることは事実となっています。

給料アップが進む中小企業の今後

商工組合中央金庫(商工中金)が2016年に実施した「中小企業の賃金動向に関する調査」によれば、中小企業の約72%が給料アップ(定期昇給やベースアップ、賞与の引き上げなど)を行う予定であることが明らかになっています。

ただ、ベースアップを行う企業は全体の約25%にとどまり、慎重な姿勢は見られますが、中小企業の給料アップは確実に進んでいることが分かります。

2016年に賃上げ予定の中小企業で44.1%は「自社の業績改善を反映」と答えています。業績の回復を社員へ還元する積極的な理由となっています。同様に賃上げ予定の中小企業で64.6%は「処遇改善による人材の定着化」と答え、43.3%はやはり「人材確保(採用)のために必要」としています。

慢性的な人材不足に苦しむ中小企業は、解消策として賃上げに踏み切っていることは明らかです。一方、「賃上げを行わない」と回答した中小企業の57%は景気の先行き懸念、業績の低迷などを理由に挙げています。

給料アップを行う中小企業の多くが、人材の確保、定着を理由としています。行わない場合は人材の確保どころか、流出する不安感を抱いていることもうかがえます。

少子高齢化による人材不足に苦しんでいる中小企業だからこそ、給料のアップに取組んでいる現実が見て取れます。また、中小企業の方が大企業より出世しやすく、若手が活躍できる可能性が広がり、幅広く成長できるチャンスも多そうです。今後は、中小企業で働くという選択肢も十分検討に値すると言えそうです。(提供:あしたの人事online

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