人事評価の後に大切なことは、次のステップに向けて部下を成長させるためにエンゲージメントを高める「フィードバック」です。そこには部下の意欲や行動に関するプラスとマイナスの両面から適切に業務の実情を伝え、次への行動指針とすることが重要です。近年、働く人の意識や行動が変わる中、成果を出せず行動に問題がある部下を成長させる人材育成法として注目を集めているのがフィードバックなのです。部下へのフィードバックで困っている上司や経営者に、人材育成で大きな効果を発揮する考え方や方法をご紹介します。

部下の意欲を高める最強の育成法

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(写真=Kunst Bilder/Shutterstock.com)

フィードバックとは一般的に、部下にきちんと苦言を呈し、成長を促すことを言います。具体的には、能力や成果が上がらない部下や問題を抱えた部下の成長を促すものです。

部下の成長を考える場合、人材育成法であるフィードバックの方法を間違えると部下のエンゲージメントを高めることが困難になってしまいます。部下という感情のある人間を対象にするので、状況に合わせて臨機応変に育成法も変える必要があります。

フィードバックの社会的背景

今、フィードバックが求められる理由には、従来の上命下達だけでは組織が回らない次のような社会的な背景があります。

・若手社員の価値観が変化

最近の若い社員は以前より企業や組織への帰属意識が低く、パワハラやセクハラなどのハラスメントに過剰反応する傾向があり、指導に困難が伴う。

・社員の多様化

企業でダイバーシティーが進み人材が多様化する中で、年上の部下や非正規社員、外国人などが増え、成果主義の下で組織がチームワークを発揮することが難しい。

・管理職の重複化

企業の効率化に伴って組織が均一化し、管理職がプレイングマネジャーとなり、一人ひとりの部下を育成する余裕がない。

・管理職の若年化

若い社員の早期昇進や管理職経験が浅い昇進で、部下に対する指導能力が乏しい管理職が増えている。

効果的なフィードバックのステップ

効果的なフィードバックには、次の各ステップを踏みます。

・事前の情報収集

部下へのフィードバックで大切なことは、可能な限り具体的に部下の課題を具体的に指摘することです。事前にしっかり観察し、正しい情報収集が必須です。いつ、どういう状況で、どういう行動が問題で、どういう影響があったかという情報を集め、部下が理解できるように伝えます。観察は上司の主観を可能な限り排し、できるだけ多くの情報を集めます。

・フィードバックの実践

①部下の信頼を確保

信頼され、話を聞いてもらえないと部下は苦言を受け入れません。面談はプライバシーに配慮した場所が望ましく、初めに雑談や近況報告などで部下の緊張を解くことも忘れてはいけません。また、日常的なコミュニケーションで、上司の考えを伝えておくことで円滑に行うことができます。

②事実の通知

冒頭で面談の目的を主観や感情を排して伝え、観察した部下の具体的な事実や行動をもとに、課題だけをストレートに伝えます。その際成果だけでなく、きちんとプロセスも評価することで信頼関係は深まります。

③課題の了承

課題にもそれが発生した理由や状況があるので、部下の意見もじっくり聞きながら対話し、上司の考え方との違いも伝えます。その際には部下の意見も尊重し、別の考え方があることを気付かせます。特に、課題と現実とのギャップを明確にすることが不可欠です。部下が解決への糸口を掴めば、今後何をすべきかを決めるステップに進みます。

④次への行動計画

部下が課題を了承したら、上司は必要な質問を適宜投げかけ、部下の視野を広げて課題を客観的に分析させます。分析から導き出された解決策に同意できれば、次への行動計画を立てます。

⑤今後への期待を通知

最後に今後への期待を伝え、引き続きサポートをすることを伝えます。また、問題の再発を防ぐ手立ても部下と話し合っておきます。

・事後フォローアップ

フィードバックが終わっても、フォローアップを継続的に行うことで、部下の成長を見守ります。時には、じっくりと時間をかけることも必要です。人材の育成において信頼関係を育むには、手間と時間はかかるものです。

部下の可能性と成長を信じる

フィードバックで結果が表れず、上司の思いがなかなか伝わらないことも多々あります。どうしても変わらない部下はいるものですし、フィードバックも万能ではないのです。

根底には、上司と部下との信頼関係が欠かせません。これはスキルやテクニックの向上だけでは解決はしません。上司が部下に否定的、消極的であればフィードバックは機能しないので、時間をかけて部下の可能性を信じ、育てることが最も重要です。

人材が育ちにくい社会環境で、切り札として注目を集めるフィードバック。そこには親が我が子の成長を見つめるような、長期的な視点と前向きな態度が求められるのです。(提供:あしたの人事online


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