非正規労働者が全体の約4割を占めている現在、「派遣社員の評価は難しい」という声が受入企業から聞かれます。一般社団法人 人材サービス産業協議会が2017年2月に行った「派遣社員の評価に関する派遣先担当者調査結果」によれば、派遣社員の人事評価が「必要」という回答は7割を超えました。ところが、実際には「派遣社員の評価は難しい」というジレンマに陥る答えが5割を超えています。果たして本当に難しいのか、探ってみます。
困難な理由は「判断・評価基準がない」
今回の調査結果の総評から、派遣社員の評価や教育、サポートや業務指示などを行っている担当者の多くが評価結果を利用して正社員への登用や待遇改善に積極的であることが明らかになりました。
ところが、派遣社員の人事評価に困難を感じる理由として、「判断・評価基準がないこと」を挙げています。つまり正社員と同じように、派遣社員にも適切な人事評価制度を導入し、運用できるシステムが会社にあれば、この問題は解消できる見込みがあることがうかがえます。
派遣社員の評価の必要は77%
21%の担当者は派遣社員の評価を「とても必要」だと答えています。56%が「まあ必要」で、77%が派遣社員を評価する必要性を実感しています。その理由として下記のようなものがあげられます。
1位 派遣社員のモチベーション向上のため 64%
2位 派遣社員の処遇向上のため 41%
3位 正社員登用のため 28%
格差の是正が社会問題化している現在、派遣社員を正社員に登用し、処遇の向上に対して積極的という結果は、政府の働き方改革と軌を一にしています。
55%が派遣社員の評価に困難が伴う
現実の実務から派遣社員の評価を必要と考えている担当者が多いのですが、「とても難しい」と8%が回答。「やや難しい」となると47%に増え、実に過半数の55%が派遣社員の評価に何らかの困難が伴うと考えていることが明らかになっています。
この理由が「判断・評価基準がないから」困難を伴っており、この問題を解決するには適切な人事評価制度の導入と運用が早急に求められていることが分かります。
評価で重視するのは責任感が最多
それでは、派遣社員の評価で重視されるのはどのようなことなのでしょうか。全体の4割が「まじめさ」、「報告・連絡・相談」、「責任感」を「とても重要視している」と答えています。この上、「まあ重要視している」を加えると全体の9割が責任感を重視しています。
また、処遇向上や正社員登用の際には半数以上が「責任感」を重視すると答え、評価でいう「まじめさ」、「報告、連絡、相談」を上回っています。
求めるスキルでは、協調性やコミュニケーションなどの「対人スキル」が20%で最多。「仕事の正確性、確実性」、「業界知識」などが後に続きました。
正社員と同様または高度な仕事は高評価
評価担当者の半数が正社員登用や処遇向上のポイントとして、派遣社員が「正社員と同様の仕事をしている」と回答しています。
処遇向上については、「業務に前向きに取り組んでいる」「業務を改善・効率化してくれる」など積極性を求める回答が見られましたが、正社員化の判断については「正社員よりも高度な仕事をしている」という回答が見られました。
高い派遣社員の必要性
派遣社員の必要性に関する質問では、「派遣社員がいないと仕事にならない」と53%が回答。「やや仕事にならない」も多く、職種別ではIT系でこの傾向が強いようです。
正社員への登用制度については、「制度あり」が65%で、「制度を検討中」は12%でした。少子高齢化で人材不足が深刻化している中、契約社員の正社員化を進める傾向は規模や業種を問わず大差がなく、企業が懸命に人材を求めている傾向がここでも伺えます。
求められる人事評価制度と注意点
企業が派遣社員のために行っている内容については、「取組姿勢・態度の評価」がトップで48%。次に「目標設定」が34%、「達成度の評価」が33%でした。その他、担当者が「評価結果のフィードバック」や「評価に基づく直接雇用」も実施しているケースが相当数見られました。
以上より今後、同協議会では「評価結果を正社員登用などの判断に活用する傾向が強まる」と指摘しています。それには、何よりも適正で客観的な人事評価制度を導入、運用することが必要です。これが実現すれば、派遣社員の人事評価も難しいものではなくなるでしょう。
なお、派遣先が派遣社員の人事評価を直接行い、結果を派遣社員の待遇に反映させようと考える場合は注意が必要です。なぜなら、派遣契約上、待遇は派遣元の問題だからです。ただし、人事評価に関してすべて派遣元に任せるのではなく、派遣先の評価に基づいて最終的には派遣元が決定するなど、バランスを取る必要があるかもしれません。(提供:あしたの人事online)
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