メルカリ <4385> のIPOから1ヵ月が経過した。日本を代表するユニコーン企業としてIPOを行い、赤字ながら初値時価総額は6700億円を達成し投資家からの期待は非常に高い。

決算は赤字であるが、国内事業は黒字化しており、同社の成長及び株価の行方は注力中の米国事業の行方が鍵を握ると考えられる。

メルカリ上場から1ヵ月

フリマアプリで一世を風靡している、日本を代表するユニコーン企業・メルカリが東証マザーズ市場に株式上場(IPO)したのが6月19日。それから1ヵ月が経過した。

公募価格3000円に対して、初値は5000円となり、公募価格の約1.7倍の初値をメルカリは付けた。4月にIPOしたHEROZ <4382> のように、初値が公募価格の10倍以上になる程の爆発力は見られなかったが、赤字会社でありながら、初値時価総額は約6700億円であり、株式市場からは充分な評価を得た。

ただし上場日初日に最高値6000円を付けたメルカリ株は、その後は緩やかに下落している。上場1ヵ月後の株価は4500円前後で推移している状態で、初値から約1割下落しているものの、公募価格は割れていない。6月半ばよりマザーズ指数の下落が続く中で、株価は健闘していると言える。

国内事業は既に黒字化、今後の成長の継続性が鍵

2017年6月期営業利益▲28億円と、営業利益ベースで赤字が継続しているメルカリだが、フリマアプリとして既にナンバーワンの地位を築いた国内事業は既に黒字化しており、国内事業の営業利益は下記のように推移している。

2016年6月期 31億円
2017年6月期 36億円
2018年6月期(Q1-Q3) 50億円

2017年6月期の営業利益の対前年同期比は+5億円であったが、当期はQ3時点で既に前年通期比で+14億円の増益を果たしている。メルカリは当期に入り国内の利益の伸びにドライブがかかった状態だ。

当期はQ3の状況から大幅な増益の可能性は高いと考えられるが、6月のIPOを契機に、2019年6月期も大幅な伸びを見せることができるのか、という点は今後の注目点と言える。

アプリダウンロードの約34%は米国だが利用は限定的

日本のGDPの約6割は国内個人消費から生じている。よって国内企業の多くは、国内事業から収益を上げている状態だ。自動車メーカーのように、海外から多くの収益を上げている企業は日本では少数派と言える。

そのような中、メルカリは海外(米国)でのダウンロード数が多いアプリとしても知られている。2018年3月時点での累計ダウンロード数は国内7100万ダウンロードに対し、米国3700万ダウンロードであり、総ダウンロード数の約34%は実は米国でダウンロードされている。

ゲームアプリを除くと、国内製アプリが海外で流通するケースは非常に珍しく、メルカリは世界で戦うことのできる数少ない国内アプリ企業としての側面がある。

しかしながら同社が利用の指標・GMV(Gross Marchanise Value。流通取引金額。メルカリ他の同社アプリ利用の流通総額)で見ると、2018年6月期Q3のGMV1000億円の内訳は、国内930億円に対し米国60億円に留まる。メルカリの利用は国内がほとんどの状況だ。

ちなみに2018年6月期Q3の米国GMV60億円という数字は、国内GMVで見ると2015年6月期Q1の80億円より少ない数字となっている。同時期の国内累計ダウンロード数は500万であるため、メルカリは米国で370万ダウンロードはされているものの、国内で500万ダウンロードの時期に比べても実際の利用数は少ないというのが実情だ。

米国では四半期毎に300万前後のダウンロードの増加はあるが、GMVの四半期の伸びは各10億円程度の伸びに留まっている。アプリケーションのダウンロードはなされている中でどのように利用を促すのか、という部分が海外事業に注力中の同社の成長の鍵を握っている。

赤字会社の株価について

メルカリは国内事業の黒字化は達成しているが、海外事業及び新規事業の投資により全体としては赤字の企業である。

赤字上場企業の株価測定については伝統的なPERが利用できないため(同社は予想決算数字の開示もなされていない)、株価は投資家の期待感の大きさに左右される。

メルカリは国内でのフリマアプリ最大手としての評価もあるが、米国でのダウンロード数から海外での活躍が期待される企業としての側面も有している。同社の株価及び成長の行方は、海外でのアプリダウンロード数だけではなく実際にサービスが利用されているのか、という点が大きな鍵を握ると考えられる。

メルカリは海外でも利用も広がり、投資家の期待に応えることができるのか。今後の同社の海外事業の状況に注目したい。(ZUU online 編集部)