ある程度大きな資産ができ、毎月の資金繰りに窮することがなくなってくれば、「いつかはアーリーリタイア(早期リタイア)を」と考えるようになるでしょう。

文字通り、早期に仕事を辞めるアーリーリタイアをすることで、自由に過ごせる時間が増えますから、挑戦してみたかった趣味や子供のころからの夢のために時間を使ったり、家族と過ごす時間を増やしたりできるようになります。

しかし、アーリーリタイアするには資金だけあればいいというものではありません。しっかりと計画を立て、準備をしておかなければ早期リタイア後に何かと困ることにもなります。アーリーリタイアに向けてすべきことを順を追って確認していきましょう。

To Do(1) なぜアーリーリタイアするのか、「目的」を考える

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(写真=Mama Belle Love kids/Shutterstock.com)

まず本人がなぜアーリーリタイアをしたいのか、またはなぜするべきだと考えているのか、改めてじっくり考えてみましょう。「もっと自分の時間がほしい」「場所にしばられない生活をしたい」「ノーストレスな生活をしたい」など理由はさまざまだと思います。

一方で理由によっては早期リタイアという方法ではなくても、目的を達成できるかもしれません。例えば自分が時間をもっと増やしたいなら、部下に仕事を思い切って任せてしまえばいいかもしれません。

既にアーリーリタイアした人が身近にいれば、実際に話を聞いてみてもいいでしょう。早期リタイアをして良かったこと、思ってもいなかったことなどを聞いて、「本当にアーリーリタイアをしたほうが良いか」「なぜ自分はしたいのか」を自分の中で整理し、見つめ直してみましょう。そうした経緯を経て、自分の早期リタイア後の人生設計が磨かれていくことにもなります。

To Do(2)――「出費」を見積り、必要な「貯蓄額」を計算する

おそらく大半の人が一番気にするのが、将来的な本人の出費や支出でしょう。生活費や保険料などの出費はどれくらいか、将来予想される出費はいくらくらいか、借金があった場合はいつまで支払い続ける必要があるのかなどを整理し、予測される出費をきちんと計算しておきましょう。

車を所有している人の場合は車の維持費や、場合によっては買い換えの費用、車検代、保険代などが必要になります。また不動産を所有している人には固定資産税がかかります。冠婚葬祭などによる出費も念頭に置いておく必要があります。また引退後の1年目には働いていたころの給与をもとに計算された住民税を払わなければなりません。

早期リタイア後にどのような生活を送っていきたいかによっても、将来の出費額は変わってきます。海外旅行にたくさん行きたい人は、年に何回ほど海外旅行に行くのか、1回の旅行費用はいくらくらいになるかなどを事前に計算して計画を立てておくといいでしょう。

アーリーリタイアの目的が分かり、出費がどれくらいになるか見えたら、必要な貯蓄額の計算に入ります。早期リタイアする年齢によって、その後の生活のために必要な貯蓄額は変わってきます。本人が想定している生活水準によっても必要な貯蓄額は変動します。

必要な貯蓄額を計算するには、月々の生活費とそのほかに必要な出費を足して計算していきます。例えば月々の生活費が25万円ほどの人が50歳でアーリーリタイアをするとして、90歳まで生きると仮定した場合は、生活費だけで1億2,000万円は必要です。生活費以外にかかる支出も足すと、だいたいの最低必要額は把握できるでしょう。この額から将来的に受け取ることができる年金などの収入を差し引くなどして必要な支出額を計算し、計画を立てていきます。

結婚しているのか、どのようなアーリーリタイア後の生活を送りたいのかなどによっても必要な貯蓄額は変わってきます。40歳でアーリーリタイアするには貯蓄額が8000万円~1億2000万円前後、50歳でアーリーリタイアするには6000万円~1億円前後が必要だとも言われていますが、あくまで参考程度にとらえておきましょう。その人その人によって個人差があるからです。

To Do(3) 資産運用についても検討してみる

アーリーリタイア後の生活を見越して、資産運用を始めることを検討する人や実際に挑戦してみる人も多くいます。資産運用により上手に安定的な収益を上げ続けることができれば、より本人の目指す老後の生活を豊かにしていける可能性も高まります。一方で資産運用の失敗により、資産が目減りしてしまわないように、注意が必要です。

いざ資産運用を始めようと考えたときに、頼りになるのが資産運用コンサルタントです。リタイア後の生活のビジョンや価値観、資産運用にかけられる手間などによって、個人個人に合った資産運用の方法は変わってきます。本人も資産運用に関する知識を蓄えながら資産運用コンサルタントを活用し、自分に合った資産運用の形を模索していくのも一つの方法でしょう。

To Do(4) 事業継承の準備をする

開業医が早期リタイアをする場合、事業をどうするのかも計画しておかなければなりません。個人経営の場合も医療法人の場合も、廃業するか事業継承をするかをまず決めます。事業継承をする場合には、親族を後継者として承継するケースと第三者へ継承するケースに分かれます。

第三者継承の場合は事業を引き継ぐ医師を探さなければなりません。通常は、1~2年前から準備をしておいた方がいいと言われています。また第三者継承を行うつもりであれば、なるべく受診患者数が多い時期に候補者を探すことが得策でしょう。その方が事業としての魅力が大きいので、引き継ぎを希望する医師が見つかりやすいと言えます。

時間をかけての準備が欠かせない

早期リタイアするまでの準備期間や計画内容は人によってさまざまです。貯金を貯めなければいけない人もいれば、貯金はあっても事業継承に一定の期間が必要な人もいるでしょう。一方でなるべく早くから計画を立て、準備をしておくことに越したことはありません。例えば5年前、10年前からアーリーリタイアを目指して計画を立てておくことも、決して悪いことではないでしょう。

「資金は豊富なので大丈夫」と決めつけるのは危険です。今までバリバリと働いてきた医師が、「時間ができたらこれをやろう」と思ってリタイアしても、いざ時間ができると物足りなくなったり、生活にハリがなくなったりするかもしれません。

家族や病院の職員への影響も考えながら、これらの準備をしっかりと進めるには、専門家に相談してもいいかもしれません。アーリーリタイア後の生活も充実したものにするには、お金以外の調整や検討が重要です。(岡本一道、金融・経済ジャーナリスト/ d.folio

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