不動産投資を始めるにあたってローンを組む必要がある方も多いでしょう。しかし、その際に、団体信用生命保険についての知識がないと、思わぬトラブルにつながるケースがあります。
団体信用生命保険(団信)とは?
「団信」と呼ばれる「団体信用生命保険」の仕組みについてまず確認しておきましょう。
独立行政法人である住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)のWebサイトでは、同機構が提供している団体信用生命保険の特約制度について「加入者に万一のことがあった場合、住宅の持分、返済割合等にかかわらず残りの住宅ローンが全額弁済される保障制度」と説明しています。
一般的には、それぞれの団体信用生命保険よって条件は異なるものの、住宅ローンを返済しているときに団信に加入している人が死亡したり、高度障害状態などに陥ったりした場合、団信を提供している生命保険会社が代わりに残りの住宅ローンを全額支払います。この制度は、不動産投資などのために住宅ローンを受けた加入者の家族の安心を図ることも、目的としています。
不動産投資ローンを組む場合には、団体信用生命保険への加入がほぼ義務付けられているとされています。一般社団法人「生命保険協会」の調べによりますと、団体信用生命保険については、2016年度は日本全国で9,651億円の新契約高となっています。
住宅金融支援機構が提供する金利が最長35年間変わらない住宅ローン「フラット35」の場合は、最初から団体信用生命保険が付帯しており、住宅ローンの毎月の返済額の中に団体信用生命保険の加入費用が含まれる形になります。
規定以外の障害などは支払いの対象外に
不動産投資ローンを組むにあたって団体信用生命保険に加入する場合には、きちんと弁済される場合の条件を確認しておくことが重要です。
開業医などが不動産投資ローンを組むときに団信に加入したとしても、この条件をきちんと確認していなかったために、本人が思っていたような弁済が受けられないケースがあります。団体信用生命保険の落とし穴の一つです。
Webサイトでは、住宅金融支援機構の場合、加入者が死亡したときや所定の高度障害状態になったときにローンが全額弁済されるということが説明されており、弁済の対象となる高度障害状態についても細かい規定が詳しく記載されています。
例えば、両目の視力や言語機能を永久に失った場合は、全額弁済の対象となります。また、例えば手については「両上肢とも、手関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの」と細かく条件が設けられています。
ローンが弁済されないケースについても記載されています。例えば、団体信用生命保険の保障開始日から1年を待たずに加入者が自殺してしまった場合や、わざと弁済対象の高度障害状態になったときは弁済の対象外となります。また「保障の開始日前の傷害または疾病が原因で所定の高度障害状態になられたとき」も弁済を受けられないということが説明されています。
よくある「年齢」や「病歴」に関するトラブル
団体信用生命保険に関する落とし穴の一つとして、弁済対象となる障害の条件について説明してきました。このほかの団体信用生命保険加入に関してトラブルになりかねないケースについても、説明していきたいと思います。
その一つが、加入申込み時に病歴などを告知しないことに端を発するトラブルです。万が一、団体信用生命保険の加入者が死亡した場合や高度障害状態に陥ったときに、告知すべき病歴を予め伝えていないと、ローン残金の弁済のために保険金が下りないなどといったトラブルに発展することがあります。
前提として、団体信用生命保険の場合は申込者が大きな病気をしているケースでは、団体信用生命保険に加入できない場合があります。もし、加入申込のときに故意・任意に関わらず病歴などを書面に記載しないまま団体信用生命保険に加入してしまった場合、こうしたトラブルの引き金になってしまいます。ありのままの病歴を漏れがないよう書くことが重要です。
また、加入した団体信用生命保険の対象上限年齢についても注意が必要です。例えば、住宅金融支援機構の団体信用生命保険の場合は「満80歳の誕生日の属する月の末日まで、死亡・高度障害状態になられた場合を保障します」と規定されています。
加入年齢についての条件もあります。例えば、中央労働金庫が提供する団体信用生命保険の場合は、加入年齢について「加入時の年齢が満18歳以上および、保障開始日現在満66歳未満」と規定しております。
いつでも誰でもいつまでも団体信用生命保険の加入・保障対象となるとは限らないことを覚えておきましょう。
きちんと保障内容や条件の確認を
不動産投資などを始める際の団体信用生命保険に関する落とし穴やトラブルについて説明してきました。これらのリスクは、しっかりと加入申込み時に団体信用生命保険の内容を確認しておくことで回避しやすくなります。開業医が不動産投資を始める場合にも、保障内容などに目を通しておいたほうがよいでしょう。(岡本一道、金融・経済ジャーナリスト / d.folio)
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