タワマンの建築ラッシュが続く湾岸4区(中央・江東・港・品川)では、人口が急増している。例えば中央区の場合、昭和30年の17.1万人をピークに落ち込みを続け、平成7年には6.4万人まで減少した。それがここ20年で、14.1万人にまで回復しているのだ。
各自治体が進めてきた、再開発事業促進による住民獲得策が奏功した格好だ。ところが、ここへきて学校など公共インフラ不足が鮮明になっている。
学校整備費急増に音を上げる
ここ10年間における湾岸4区の児童増加率は2-4割、増加数は1.3万人に達する。40人学級としても300教室超に相当する。
もともと湾岸エリアは児童数が停滞していたこともあり、10年前まで学校の新築はもちろん、増改築もほとんどなかった。それが10年前から学齢期の子供が増え始め、自治体も学校施設整備に追われることとなった。
4区合計で投じた費用は、2008-12年が391億円、13-17年度は465億円に上る。支出が最も多い江東区は、10年間での学校新設が2校、校舎増築が12校を数える。
校舎を増やした結果、今度は校庭が狭くなり、さらに生徒が増えため教育環境は悪化している。文部科学省は生徒1人当たりの運動場面積を10㎡以上と定めているが、8割の小学校で基準を満たしていない。
富裕層向けマンションは好調が続くが
タワマンブームは、価格面でも曲がり角を迎え、優勝劣敗がはっきりしてきたともささやかれる。アベノミクスで潤う富裕層向けマンションは、相変わらず飛ぶように売れている。ここ5年間で、2億円以上するマンションの販売戸数は1100戸に達した。その前の5年間に比べると、3-4倍に増えている。
デベロッパーも強気だ。森ビルが虎ノ門で開発中の大規模プロジェクト(2020年完成予定)、超高層住宅棟で販売予定の物件は、相当数が10億円を超える予定だ。担当役員は「今後も東京都心では、海外も含めた富裕層が満足するような住宅の市場が拡大するだろう。森ビルはそうしたニーズを満たす最高峰の物件を提供する」と、鼻息も荒い。
片や、中所得層向けの湾岸タワマンは、一時のブームに陰りが見える。即完売は昔の話、空き室もちらほら出始めた。価格も、過熱感がすっかり冷め一部の物件は値を下げている。
カギを握る「超人気エリアからの移住」「外国人」そして「在庫」
ただし、湾岸タワマンの市況はそんなに悪いわけではない。例えば住友不動産の大型プロジェクト「シティタワーズ東京ベイ(3棟・総戸数1500戸強)」、業界では多くが不調を予想していた。
ところがふたを開けてみると、売れ行きはまずまずといったところだ。販売の歩留まり率は、好不調の分かれ目とされる10%を超え、15%に達している。
売れ行きを支えているのは、例えば武蔵小山・自由が丘などの都内の超人気エリアで生まれ育った地元住民だ。地元の分譲マンションはさすがに手が出ない、そこで湾岸エリアに「移民」してくるという訳だ。
海外富裕層も、市況を支えている。実需で買うアジア系に加え、最近は賃貸用に購入する欧米系も増えてきた。こうした需要に支えられ、シティタワーズの2期目販売価格は1㎡当たり350万円、1期目の320万円を上回った。
供給面の事情も市況を引き締める。最近は、マンション建築に適した用地が少なくなり、加えて都心ではホテルや外国人向けサービスアパートメント業者にさらわれることも多い。つまり、販売したくてもタマが無い状況で、今年1-3月期の着工件数も前年以下だ。
この流れは、この先も続くのだろうか。一般のサラリーマン層は、価格的に手の届かない湾岸タワマンに見切りをつけ始めた。ここのところ人気がさっぱりだった郊外型マンションにも、目を向ける動きも出始めた。今後の価格動向には注視が必要だ。(ZUU online 編集部)