シンカー:失業率は昨年の後半に3%をトレンドとして下回り、現在は2.5%程度まで低下するなど、マーケットの予想を大きく上回る好転を見せてきた。基調には、業績の良好な企業の積極的な採用活動とともに、働きやすい環境が整い、女性や高齢者の就業が増加していることがある。労働制度の改善や、IT技術の発達により、短期間でも働くことのできる環境が整う中、就業のハードルが下がり、企業とのマッチングを含め、労働者が職を見つけることもかつてないほど容易になってきた。結果として、就業率のトレンドは長期平均の65%から70%を上回る水準まで上昇した。失業率は、求職者比率と、この就業率でうまく推計できることがわかっている。現在の求職者比率と就業率を前提とすると、失業率の推計値は2.5%程度となり、これまでの低下は行きすぎではないことがわかる。求職者比率と就業率の改善のトレンドはまだ止まっていないため、失業率はバブル期の1990年前後の最低である2.0%近くまで低下していく可能性も出てきたと考える。バブル期には、失業率が2.5%から2.0%へ低下する中で、賃金上昇と物価上昇がわずか1年強で急激に加速していった。今回は就業率の上昇という労働供給の増加もあり、その動きはより緩やかで時間がかかるだろうが、賃金上昇と物価上昇がマーケットの予想を大きく上回る可能性があると考える。

SG証券・会田氏の分析
(画像=PIXTA)

6月の失業率は2.4%と、5月2.2%からリバウンドした。

5月の失業率は、日並びのよかったゴールデンウィークの影響などで、失業者が労働市場から一時的に退出し、非労働人口が35万人増加し、失業者は18万人減少したことにより、テクニカルに2.5%から2.2%まで低下していた。

6月には労働力人口の一部復元があり、失業者が15万人増加し、失業率が2.4%までリバウンドしたとみられる。

一方、大阪北部地震やスポーツイベントの影響だろうか、6月にも非労働力人口の増加圧力が残り、失業率は2.5%まで戻ることはなかった。

7月にはこれらの要因が剥げ落ち、失業率は2.5%まで戻る可能性が高い。

しかし、企業の人手不足などを背景とした就業者の増加もあり、2.5%を上回ることはないだろう。

6月の有効求人倍率は1.62倍と5月の1.60倍から更に上昇している。

失業率は昨年の後半に3%をトレンドとして下回り、現在は2.5%程度まで低下するなど、マーケットの予想を大きく上回る好転を見せてきた。

基調には、業績の良好な企業の積極的な採用活動とともに、働きやすい環境が整い、女性や高齢者の就業が増加していることがある。

労働制度の改善や、IT技術の発達により、短期間でも働くことのできる環境が整う中、就業のハードルが下がり、企業とのマッチングを含め、労働者が職を見つけることもかつてないほど容易になってきた。

結果として、就業率(就業者の15歳以上75歳未満人口に対する割合)のトレンドは長期平均の65%から70%を上回る水準まで上昇した。

失業率は、求職者比率(求職者の15歳以上75歳未満人口に対する割合)と、この就業率でうまく推計できることがわかっている。

失業率(12MMA)=7.98+2.13求職者比率(求職者数/15歳以上75歳未満人口、12MMA)-0.14就業率(12MMA); R2=0.97

現在の1.9%程度の求職者比率(低下=失業率低下)と71.7%程度の就業率(上昇=失業率低下)を前提とすると、失業率の推計値は2.5%程度となり、これまでの低下は行きすぎではないことがわかる。

求職者比率と就業率の改善のトレンドはまだ止まっていないため、失業率はバブル期の1990年前後の最低である2.0%近くまで低下していく可能性も出てきたと考える。

バブル期には、失業率が2.5%から2.0%へ低下する中で、賃金上昇と物価上昇がわずか1年強で急激に加速していった。

今回は就業率の上昇という労働供給の増加もあり、その動きはより緩やかで時間がかかるだろうが、賃金上昇と物価上昇がマーケットの予想を大きく上回る可能性があると考える。

図)フィリップス曲線

フィリップス曲線
(画像=総務省、SG)

図)失業率の求職者比率と就業率のマトリクス

失業率の求職者比率と就業率のマトリクス
(画像=総務省、厚生労働省、SG)

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
チーフエコノミスト
会田卓司