社会人になってから「学びや教育から遠のいてしまった」と感じている人もいるのではないでしょうか。一方で最近では、生涯にわたり学校教育を分散させようという理念「リカレント教育」が注目されています。これはどのような教育を指しているのか、紐解いてみましょう。

1970年代に先進国で掲げられた「生涯にわたる学びの循環」の必要性

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(画像= PH888/Shutterstock.com)

「リカレント(recurrent)」とは、反復・循環・回帰を意味する言葉で、日本では「回帰教育、循環教育」と訳されています。この語源からも分かるように、学校教育を終えてからも人が生涯を通じて「教育機関での学び」と「労働」とを交互に行うことをリカレント教育と言っています。

これはOECD(経済協力開発機構)が 1970 年代に提唱した生涯教育の一種で、海外では先進国を筆頭に国や企業が多様なリカレント教育を提供しています。例えば、スウェーデンではおよそ150校の国民高等学校や民衆大学と呼ばれる教育機関があり、年間コース、短期コース、サマーコース、遠隔コースなどに分かれて学べるようになっています。コースは音楽や芸術など特定の興味に応じた分野や、職業志向のものなど多彩なラインナップがあります。

また、イギリスでは、企業がパフォーマンスの高い従業員等にリカレント教育の機会を提供したところ、従業員の賃金上昇に関連したことも明らかになっています。個人の教養を高める学びとしてだけではなく、自分のスキルアップ、仕事への還元としてとらえる向きもあるといえるでしょう。

国立大学から動画サービスまでキャリア育成型のプログラムも充実

日本はどうかといえば、大学・大学院を中心にリカレント教育の充実がはかられています。例えば、文部科学省の「高度人材養成のための社会人学び直し大学院プログラム」では、社会人のキャリアアップに必要な、高度で専門的な知識・技術・技能を身につけることを目指し、大学院と産業界等が協働してプログラムを構築するというものだと伝えています。

なお、京都大学経営管理大学院では、夜間を利用して次世代経営者やマネージャーを対象に経営セオリーを教える、学び直し短期講座を開設しています。

また、女性に特化したプログラムを開校している大学もあります。明治大学では、マーケティングや金融・財務、ビジネススキルなどの科目から構成される「女性のためのスマートキャリアプログラム」を実施。女性経営者等による講義や、ゼミ形式で実際の企業課題の解決、プレゼン・グループ討議などを通じて、結婚、出産、育児などの理由で離職して家庭に入った女性がマネジメント層として活躍し得る能力の育成を目指しています。

また、日本女子大学の「リカレント教育課程」でも、女性の再就職を支援するために、1年にわたり英語や IT リテラシー、金融、企業会計、内部監査などビジネスにまつわる講座を設置して、即戦力として活躍できるキャリア教育を提供しています。

他にも、テクノロジーの進化に伴い、「時間」「場所」「お金」にとらわれず学べるリカレント教育はテクノロジーの進化とともに拡充しています。MBAプログラムでお馴染みのグロービズ大学院では、2018年3月からスマホやパソコンから閲覧できる動画教材を月額1,980円で個人に提供する「グロービス学び放題」のサービスを開始しました。ビジネスの基礎力を高めるものから、経営戦略まで幅広いカリキュラムに沿った動画を用意しています。

人生100年時代、個人の生き方をリカレント教育で変える

今後ますます少子高齢化が進み、人生100年時代が当たり前になる世の中が訪れるかもしれません。経済・社会が急速に様変わりするなか、「教育を受ける時期」「仕事をする時期」「引退して余生を過ごす時期」というステレオタイプの人生モデルでは時代の変化に対応できない時期を迎えています。

年齢に左右されず、社会から求められる人材であり続けるためには、絶え間ない「能力のアップデート」が欠かせません。そうした観点からも、時代の要請も相まって、社会に出てからも常に学び続け、知識や能力、技術を身に付けることができる「リカレント教育」の必要性はますます高まっていくはずです。

多様な働き方はもとより、教育を受けることで専門技能を高めながら、長寿を見据えた人生設計を考えることがこれまで以上に求められているのではないでしょうか。(提供:J.Score Style


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