昨日の海外時間には、日本の長期金利(10年債利回り)が急低下したことを受けて円売りが優勢となりました。さらに米中が貿易戦争を回避するために交渉を模索している、との報道があったことからドル買いが強まって、ドル円は112円台を伺う水準まで上昇しました。

今後の見通し

FXプライム,高野やすのり,市況解説
(画像=PIXTA)

昨日の日銀金融政策決定会合では、大方の予想通り物価見通しを下方修正するとともに長期金利目標について「経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうる」ことを決定しました。黒田日銀総裁は長期金利の変動幅について「上下0.1%程度の変動を認めているが、今回の修正によってその倍程度、変動しうることを念頭に置いている」として、0.20%程度までの上昇を容認することが示されました。しかし10年国債の中心取引銘柄の85%程度がすでに日銀によって買い取られてしまっていたことなどから、一連の決定を前に国債の空売り(金利上昇を見込むポジション)が溜まっていたこともあって国債相場は急上昇(利回り低下)し、円売りが優勢となりました。

こうした動きは、国債市場内のポジションの傾きや、需給が招いた混乱と考えていて、今後は日銀が許容した新たな利回りの上限である0.20%へ向けて日本の長期金利は上昇すると考えています。したがって、昨日の欧州時間に見られた円売りは修正されると予想しています。

再びドル円で売りポジション

日銀金融政策決定会合では事前の予想通り長期金利の上昇を容認することが決定されました。しかしドル円は下落しなかったことからドル売りポジションは111.45円で買い戻しました。その後長期金利の低下を受けてドル円は112円近くまで上昇しましたが、上げ渋る展開となっていたこと、前述のように昨日の長期金利の低下は一時的なもので、比較的短期間の間に日本の長期金利が0.2%近くまで上昇すると予想していることから、今日111.85円で再びドル売りのポジションを作りました。

海外時間からの流れ

欧州時間、日銀金融政策決定会合で大方の予想通り10年物国債利回りの変動幅拡大容認などが発表されたましたが、材料出尽くしで10年物国債金利が低下したことから円売りが優勢となって、ドル円は111.50円台まで、ユーロ円は130.90円台まで上昇しました。この間ユーロドルは1.1720付近で小動きが続きました。

NY時間序盤、発表された米・6月PCEコア・デフレータが予想よりもやや弱い結果だったことから一旦ドル売りが優勢となって、ドル円は111.40円付近まで下落し、ユーロドルは1.1740台まで上昇しました。しかし「米国と中国は全面的な貿易戦争の回避を目指し、交渉再開を模索している」と報じられると、ドル買いが優勢となって、ドル円は111.90円台まで上昇し、ユーロドルは1.1680台まで、ユーロ円も130.60円台まで下落しました。

今日の予定

今日の海外時間には、米FOMCが開催されるほか、ユーロ圏・7月製造業PMI(確報値)、英・7月製造業PMI、米・7月ADP民間雇用者数、米・7月ISM製造業景況指数、米・6月建設支出の発表が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

高野やすのり
慶應義塾大学卒。チェース・マンハッタン銀行(現J.P.モルガン・チェース銀行)、スイス・ユニオン銀行(現UBS銀行)などでインターバンクディーラー業務等に従事。現、(株)FXプライムbyGMOお客様コンサルタント。Twitterでも情報発信中 高野やすのり@takano_fxp