ドル円予想レンジ110.10-113.15
「金融緩和の持続性を強化するものだと評価しております」-。これは7/31に日銀が金融政策の一部修正を決めたことに対し菅官房長官が同日午後の記者会見で述べた見解だ。日銀法第19条に則して日銀会合に出席した木原財務副相も同日“「政策変更」や「政策修正」ではなく「政策強化」となります”と自らのツイッターに投稿。政府側の認識は一貫している。
7/30-31日銀会合が注目された理由を整理
筆者が整理しておきたいのは二点。一つは何故、今回の日銀会合が注目されたのか。もう一つは何故このタイミングで緩和政策を強化したのか、だ。一つ目は日銀が掲げている物価目標2%に達する時期が後ずれし、先々の展望が開けない中、日銀幹部が“報道機関”に示したとされる「緩和長期化の副作用に配慮した持続可能な緩和策の再構築」を一部市場参加者が曲解した、との見立てである。7/30-31会合に向けて、我も我もと五月雨式に大手報道各社から伝えられたのはリークか、他社に遅れての焦燥追随か、珍しい事態だった。特に長期金利0.2%程度までの上昇容認等の観測報に対し、日銀と政府・与党の関係に疎い海外投資家は「日銀が出口戦略に着手する可能性」と咀嚼し“政策変更なら円買い”とドル円を6日連続陰線に進行させ、7/23以降は長期金利を0.10%超へ押し上げた。結果が注目されたのも当然となろう。しかし黒田総裁は7/31会見で「いずれにせよ、これまで考えられていたよりも、現在の金融緩和を長く続ける必要があるということです」と明言。物価目標の達成見込みは少なくともあと3年先となり、円は対主要通貨で前日終値比ほぼ全面安、7/31正午は1ドル111.00近傍だったが、約12時間後には112円目前まで円売り戻しが進んだ。
二つ目に関しては、前号で指摘した通り8月は休会、9月は自民党総裁選前日、そして10月は11月6日米中間選挙の1週間前だ。内外政治日程を睨むと微修正とはいえ日銀が動けるのは今回しかなかったと読んでいる。また筆者の邪推だが、米政権の通商政策対応や自民党総裁選を控え、現金融政策の信認性を確保するための意図的な行動だったとは考えられないだろうか。つまり、玉虫色的なリークを以て投機筋を炙り出し、微修正・緩和長期化の強化宣言で恣意的な曲解投機派を誘い込んだ結果、今後の円買い攻めを抑制させる、とした深謀遠慮のシナリオも政府日銀は描いたのではないか、と夏のゾーッとする見立ても想像している。
8/6週ドル円焦点
上値焦点は8/1高値112.16、7/20高値112.63、超えれば113.00節目、7/18-19高値圏113.15-18。下値焦点は7/31安値110.72、7/26安値110.59、110円半ば、7/4-5安値110.275、200日線110.10近傍。割れると6/28安値109.95、6/27安値109.69、6/25-26安値109.35。日足一目均衡表雲帯(109.38-110.09)が意識されると推考。
武部力也
岡三オンライン証券 投資情報部長兼シニアストラテジスト