日本経済新聞社が2017年に実施した「NEXTユニコーン調査」によると、国内22社が企業価値100億円を超えた。人工知能(AI)やネット関連企業など、次世代の日本経済をけん引するスタートアップの横顔を見ていこう。
(参照:日本経済新聞「企業価値、22社が100億円以上 NEXTユニコーン調査」 )
そもそも、ユニコーン企業とは?
「ユニコーン企業」という用語は、2013 年にエンジェル投資家のアイリーン・リー氏が、テクノロジーメディアにおいて用いたものが広がったとされている。一般的に企業評価額が 10 億米ドル以上で未上場の企業がユニコーン企業とされているのだ。その点、2018年6月19日に東証マザーズへ上場したフリーマーケットアプリのメルカリは、上記調査では2位を獲得したが、ユニコーン「卒業生」となった。
国内外の名門企業が注目するプリファード・ネットワークス
メルカリを抑えて同調査での首位に立ったのは、プリファード・ネットワークスだった。AIのひとつである深層学習で制御技術を開発する同社の企業価値は2,326億円。東大卒の30代経営者に率いられた注目のスタートアップは、トヨタ自動車、NTT、ファナック、日立製作所といった名だたる国内大企業と次々に提携。昨年、トヨタ自動車から105億円の出資を受けた。
さらに、国内大手のみならず、米半導体エヌビディア、米マイクロソフト、米インテルといったITの巨人たちからも提携を求められた。「未来のGoogle」「未来のソニー」と期待を寄せられる、日本最大のユニコーン企業だ。
成長が期待されるNEXTユニコーン企業
3位以下は、「ユニコーン企業」の目安となる10 億米ドルには届かないものの、NEXTユニコーン企業として注目を集める顔ぶれだ。3位は名刺をもとにしたCRMソリューションを提供するSansan(企業価値505億円)、4位はリチウムイオン電池製造のエリーパワー(404億円)、5位はクラウド会計処理のfreee(394億円)だった。
3位のSansanは、積極的な広告戦略やシステム投資で事業規模を拡大している。17年11月には、売上高の伸びが評価され、ゴールドマン・サックスと三井住友信託銀行が運営するファンドのジャパン・コインベストから資金調達に成功した。すでにシンガポールやインドなど、海外市場での展開も推進している。
4位のエリーパワーには、大和ハウス工業などが出資。再生エネ需要や電気自動車(EV)の拡大を追い風に、滋賀県に新工場を設立し、生産能力を3倍に引き上げるなど、意気軒昂だ。
5位のfreeeは、Google出身者らが立ち上げたクラウドベースの会計ソフト、給与計算ソフトを開発するフィンテックだ。無料で使えることや初心者でも使いやすい機能を強みに、個人事業主などのスモールビジネスを中心にシェアを伸ばしている。2018年7月には、ソフトバンクとともに、企業の会計などを自動化するロボットシステムを共同開発したと発表した。
日本のユニコーン企業数、米国や中国との差は歴然
このように、日本発の有力スタートアップにも多彩な顔ぶれがそろうが、ユニコーン企業の数で見ると、世界各国に遅れをとっている。ユニコーン企業に強いリサーチ会社CBinsights によると、2018年3月時点で237社のユニコーン企業が世界に存在する。
国別では、半数近い118社(49.78%)を米国企業が占め、中国が2位の62社、英国が3位で13社、インドは4位10社、5位がドイツ4社となっている。同調査では、日本はメルカリ1社のみがランクインしており、プリファード・ネットワークスが加わったとしても2社のみだ。1位、2位の米国や中国との差は歴然としている。
日本でユニコーン企業が少ない理由
日本でユニコーン企業が生まれにくい理由として、そもそも起業環境が整っていないことがある。スタートアップに投資するエンジェル投資家や、ベンチャーキャピタルも、米国のように層が厚くなく、長期的な成長力で企業を評価・支援しない。また、人材の流動性が低く、才能ある人材がユニコーン企業に流入するケースが少ないことも、スタートアップの成長を妨げている。
また、中国では政府がスタートアップ企業の支援に積極的に乗り出しており、成長戦略のひとつに位置づけている。テクノロジーの進展で世界的に産業構造が変化する中、日本でもスタートアップを軸とした成長モデルが求められている。(提供:百計ONLINE)
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