米国社会では「クレジットスコア」という数字が生活の隅々にまで浸透している。たとえば、クレジットスコアが高ければ住宅ローンの金利は低くなるし、逆にスコアが低いと賃貸契約すら断られることもある。クレジットスコアの善し悪しによって生活が大きく左右されるといっても過言ではないのだ。これは他国ではあまり例をみない現象といえるかもしれない。

今回は米ミレニアル世代のクレジットカードを巡る苦悩を紹介しよう。

ミレニアル世代の「83%」がスコア改善に努力

クレジットカード,米国
(画像=PIXTA)

クレジットスコアは「ローンをきちんと返済しているかどうか」の指針となるが、高いスコアを得るためには「時間」も重要なファクターとなる。きちんと返済しているだけでは、返済履歴の浅い若年層のスコアはなかなか高くならない。とはいえ、社会人生活がスタートすると家具や家電をローンで購入することは普通だろうし、自動車だって必要だ。将来的には住宅の購入も視野に入れなくてはならない。これらすべてにクレジットスコアが関わってくるので、若年層ほど真剣に取り組むことになる。

ちなみに、ディスカバリーの調査によると「ミレニアル世代(19~34歳)」の83%がクレジットスコアの改善に努めているという。これが55歳以上のシニアでは34%と関心が低くなる。

金利上昇や「特典」取り止めも相次ぐ

クレジットスコアは「支払いの遅延」等で悪化するので、期日までにきちんと支払うことが大前提となる。もちろん、お金を借りなければ遅延の心配はないのだが、それでは「スコアアップ」にはつながらない。お金を借りて「きちんと返す」ことがスコアアップには効果的なので、常にクレジットカードを使い続けて、きちんと支払い続けることが効率的にスコアを上げるコツとなる。

だが、最近はローン金利の上昇に加えて「特典」の取り止めも相次いでおり、必要に迫られてカードを利用しているミレニアル世代にとって頭痛の種となっているようだ。

クレジットカード・ドットコムの調べによると、8月8日までの週のクレジットカードのローン金利は平均で17.02%と過去最高を更新した。ローン金利は2015年8月まで15%前後で推移していたが、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げをきっかけに上昇傾向に転じ、今後さらに上昇する可能性が高まっている。

ちなみに、半年前のクレジットカードのローン金利の平均は16.41%であり、この6カ月で0.61%ポイント上昇している。ただ、最低金利の平均については13.14%から13.89%と0.75%ポイント上昇する一方で、最高金利の平均は23.62%から24.18%と0.56%ポイントの上昇にとどまっている。ローン金利はクレジットスコアによっても変動するが、最低金利水準の上昇は「スコアの高い層」への打撃がより大きいことを示唆しており、まじめに返済していても金利の上昇から逃れられない。

クレジットカードの「特典」が次々と取り止めになっているのも懸念要因だ。その一つが「ゼロ%ローン」である。カード会社は新規でクレジットカードに加入する際などに、たとえば最初の24カ月といった特定期間のカードローンの金利を「ゼロ」とするのが一般的であった。クレディ・スイスによると、2018年4月時点での「ゼロ%ローン」を提示しているカードは59%と2010年以降で最低の水準となっており、対象者が絞り込まれている様子だ。また、継続しているプロモーションであっても対象期間が短縮するケースも見られるほか、リターン・プロテクションやレンタカー利用時に付随する車両保険といったサービスもカットされる傾向にある。

金利上昇や「特典」の取り止めはカードの利用意欲を削ぐことにもなりかねないが、クレジットスコアを伸ばしたいミレニアル世代は簡単に止めるわけにも行かず、悩ましい問題を抱えているといえそうだ。

「クレカを使いたくない」ミレニアル世代の苦悩

6月の米消費者信用残高は前月比102億ドル増と事前予想(約150億ドル増)を下回り、前月比年率でも3.1%増と前月(7.5%増)から大きく鈍化した。特に注目されるのはクレジットカードの利用残高が0.2%減と3カ月ぶりにマイナスに転じたことだ。

7月の米雇用統計では相変わらず賃金の伸びが低調となり、物価の伸びを下回るなど実質賃金はマイナスの状態にある。米中貿易戦争も収束の気配をみせず、むしろエスカーレートしている。貿易戦争が長期化するとの恐れから、ウォール街では来年の成長見通しが相次いで引き下げられており、株価の足取りも重い。

他方、9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では利上げが確実視されている。8月8日現在のフェドウォッチによると9月の利上げ確率は98%とゆるぎない。

金利上昇と賃金の低い伸び、関税によるインフレ率の上昇が個人消費を抑制する可能性が高まっており、自ずとクレジットカードの利用も控えられることになりそうだ。本当は「クレジットカードを使いたくない」ミレニアル世代の苦悩もますます強まることになりそうである。(NY在住ジャーナリスト スーザン・グリーン)