2020年、東京オリンピック・パラリンピック後に不動産価格が下がる――。そんな見通しが新聞やテレビ、インターネットなどで話題になることがありますが、本当なのでしょうか。中長期的には不動産市場はどのように変化するのでしょうか。マンション価格・賃料の推移予測や不動産市場に影響を与えるとされる経済成長率や人口増減の推移も含めながら、考えていきましょう。

東京23区のマンション価格・賃料——2020年以後は横ばいまたは微増傾向か

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(写真=shigemi okano/Shutterstock.com)

2018年5月末に発表された「東京23区のマンション価格と賃料の中期予測(2018~2020年、2025年)/2018上期」(日本不動産研究所)では、東京23区におけるマンション賃料については「2020年まで微増し、以降ほぼ横ばいで推移する」と説明しています。つまり同研究所はマンション賃料が2020年を境に急激に下がるという予測はしていないのです。

さらにマンション価格については、2019年10月に予定されている消費税の10%引き上げの影響で、2020年は2.4%下落としているものの、その後は横ばいが続くと予測しています。また2020年のマンション価格は1平方メートル当たり96万5,000円、2025年には2,000円アップの96万7,000円と予測しており、横ばいといっても緩やかな上昇傾向になると見通していることがわかります。

これらの数字はどのように予測されているのでしょうか。同研究所は公表した調査データに説明文を添える形で、経済成長率や人口予測値を参考にしていることを明らかにしています。ここからは今後の日本の経済成長率や人口変動の予測について触れていきたいと思います。

不動産市場と経済成長率——「標準シナリオ」と「革新シナリオ」で異なる展望

2020年以降の経済成長率の予測については、公益社団法人日本経済研究センター(JCER)が2018年3月に公表した「第44回中期経済予測」(2017~2030年度が対象)が参考になります。この予測では「標準シナリオ」と「改革シナリオ」の2つのシナリオで、経済成長率の数値予測を算出しています。

標準シナリオにおいては、企業の人的投資などが高まらないことで賃金が伸び悩んだり、消費税を引き上げても基礎的財政収支の赤字が続いたりする将来を前提とした上で、2020年以降の経済成長率については「2020年代にはゼロ%台半ばに低下」と見通しています。

一方で改革シナリオにおいては、高齢者や女性の労働参加が拡大することや、消費税を15%に引き上げることで国の基礎的財政収支が黒字になることなどで経済成長率は高くなり、「2030年には2%まで上昇」と予測しています。

標準シナリオと改革シナリオでの経済成長率の差は1.0%以上であり、どちらのシナリオ通りになるかによって、不動産市場も大きく変化するでしょう。

不動産市場と人口増減——東京都は人口ピーク期を後ろ倒ししたが地方は?

住宅需要にも関連する2020年以降の人口見通しについてはどうでしょうか。

東京都政策企画局は「2060年までの東京の⼈⼝推計」を2017年3月に発表しています。これによれば、人口のピークは2025年の1,398万人で、それ以降は減少していくとされています。しかし、これまで東京都はこの人口推移について、もう少し悲観的な数字を示していました。

2014年に発表した「東京中期ビジョン」では、東京都は人口のピークがオリンピック開催の2020年になると予測していましたが、その時期を後ろ倒ししました。つまり人口増加が続く期間が長くなったということです。

経済成長率や人口増減の推移が、不動産市場の2020年以後の予測をする際に重要な指標になることを覚えておきましょう。また景気や人口増減は地域によっても異なります。そのため2020年以降の不動産市場について「良くなるところは良くなり、悪くなるところは悪くなる」と心づもりをすることも重要です。

例えば、人口減少などが影響して鉄道やバスなどの交通インフラの利便性が悪くなっていく地域は、不動産価格や地価も上がりにくいと言えますし、一方で国の戦略的特区地域などに認定されて先進的な取り組みを進めている自治体では、地方経済の活性化が不動産市場にも良い影響を与える可能性が高いです。

さまざまな視点から将来の不動産市場を考えることが重要

経済成長率や人口増減、地域ごとの特性などが不動産市場に影響を与えることを前提とするのであれば、その予測は決して簡単ではありません。

だからこそ、将来の不動産市場に関連するこれらの情報を他人より早く知っておくことで、不動産投資時期などの見極めに役立つと言えるでしょう。(岡本一道、金融・経済ジャーナリスト / d.folio

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