「シックスポケット」という言葉は誰もが聞いたことがあるでしょう。少子化の現代では、1人の子供に6個のお財布(両親、双方の祖父母)からお金が注がれることをたとえた言葉です。これは何も富裕層に限ったことではありません。

しかし資産のある家に生まれれば、欲しい物が、欲しい時に、思いのままに手に入るように思われがちです。もちろん資産家の家庭に生まれたすべての親が、子供になんでも買い与えているわけではないでしょう。なぜなら親である皆さんは、子供にしっかりとした金銭感覚をつけてほしいと願うはずだからです。

将来苦労しない、しっかりとした金銭感覚を身に着けさせるためにも、海外の例も踏まえながらお小遣いの渡し方と教育方法について考えてみました。

マネー教育としてのお小遣い

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(写真=Biserka Stojanovic/Shutterstock.com)

子供たちが初めて手にするお小遣いは、これから一生続いていく経済活動のスタートでもあります。お金は何の為に必要なのか、どうやって手に入れられるものなのか、どうやって使えば良いのか、それを誰が教えてくれるのか……。

リーマン・ショック以降、世界中がマネー教育の必要性を痛感し、各国がそれぞれの指針を打ち出して学校教育の中で取り組みを始めました。

日本では各教科の中で関連性を持って進めつつも、マネー教育としての授業時間の確保の難しさや教える側の専門知識不足などにより、現実社会とリンクした形でのマネー教育はまだ十分行われていないのが現状です。

お小遣いと一緒に伝えたい生きる力

「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えよ」--。この格言が示すように、お小遣いを渡すだけでなく、お金を得る為の手段を一緒に伝える事は非常に重要です。お金は労働の対価として得られるものであり、そうやって得たお金は、「自分の人生を豊かにするもの」であり、「使う目的は目標に向かう為の自己投資」であり、さらに使う時には「意思決定」が必要で、「増やすことができる」ということも伝え、お金と向き合える環境を作りましょう。お小遣いを渡す事への賛否はありますが、管理や上手な使い方を練習させて経験値を上げさせることがが肝心です。

日本のお小遣い事情

小中高生を対象にしたお小遣いに関する調査によると、お小遣いをもらっている子供の割合は小学校低学年で70%以上。高校生では約80%になるそうです(金融広報中央委員会「子どものくらしとお金に関する調査」第3回、2015年度調査」)。

渡し方については、低学年では「ときどき」が多く、年次が高くなるに従って「月々の定額制」に移行する傾向があるようです。

金額に関しては、小学生段階では1,000円未満、中学生で1,500~2,000円、高校生で4,000~5,000円となっており、地域差や親の収入差による違いは高校生の段階で多少見られる程度で、富裕層であろうと堅実に子供のマネー管理をしているうです。

渡し方についても、特別な条件なしで渡すお小遣いとお手伝いに対する対価という形での渡し方、その両方をミックスする方法などがあります。

FPとして注意しほしいのは、テストなどの短期的な結果に対して渡すという方法の是非です。

なぜなら、お金は「労働の対価」として手に入るという前提から外れてしまいますし、長期的な目標に対しての意欲を損ねてしまう危険性があるからです。いろいろな事例を見る限り、これが有効な渡し方とはならないことが多いようです。

金融先進国・アメリカのお小遣い事情

数年前、アメリカで子供のマネー教育として注目された「ハッピー・マネー・ピッグ 」という名前の貯金箱が日本でも販売されました。

豚の形の貯金箱には4つの穴が開けられ、それぞれに「SAVE=貯める」「SPEND=使う」「INVEST=投資」「DONATE=寄付」と書かれています。

アメリカの家庭ではこの貯金箱を使って、それぞれのお金がめぐりめぐって何の為になるのか?お金を使う意味は何なのかを伝えているのでしょう。

投資や寄付という言葉は、日本のマネー教育では浸透していません。しかし貯蓄から投資への流れやこれからの社会保障の状況を考えると「お金を増やす」という感覚を身に着けるのは必然になるでしょう。

寄付という考え方に関しても同様です。アメリカでは「レモネードスタンド」と言われる、小学生の子供たちが家の前でレモネードを売って対価を得るという風習がありますが、これは小児がん支援を目的として広がっていったといわれています。

こうして考えると、アメリカには親の支援のもと、慈善活動という目的を持ってお金を稼ぐという感覚が身に着いていく環境があるといえそうです。

18歳で大人になる子供たち

日本では成人年齢を18歳に引き下げる法案が可決しました。2022年からは18歳で親の同意なしに金銭的な契約締結ができるようになります。金融リテラシーも身に着けられぬまま制度が進むなかで、何を伝えるのが最善なのでしょうか。

これはなかなか難しい問題です。というのも、親自身も資産のある家に生まれたかどうか、子供の頃にどういう金銭教育を受けてきたかによって、知識の幅や意識に大きな違いがあるからです。子供に対してどういう教育を施すのがよいか、おそらく夫婦でも違いがあるでしょう。金銭教育に関して「自分の意見が正解だ」と100%自信を持っていえる人はそう多くないでしょう。それならまず、夫婦で話し合ってみてはいかがでしょうか。

間違いなく言えるのは、お金や未来の話を日常的にしている家庭の子供は、お金に関する意識が高く、将来への見通しを立てている割合が多いということです。

そうした子供に育てたいと考えるなら、まず我が家にそういう環境・雰囲気を作ることが欠かせません。まず夫婦で話し合ってみて方向性を決めたら、実際に子供にお小遣いを渡しながら、親子でもお金の話をする機会を持ってみると良いでしょう。(高村浩子、ファイナンシャル・プランナー / d.folio

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