ドル円予想レンジ110.00-111.90

武部力也,週間為替相場見通し
(画像=PIXTA)

「安倍総理の政策の浸透具合が結果に表れてくる」-。これは8/9の菅官房長官発言だ。9月自民党総裁選での“安倍首相の総裁3選は揺るがない”との認識の現れとなる。8/16に安倍首相が3人の総理大臣経験者(麻生・小泉・森氏)のほか、日米通商交渉の責任者である茂木経済再生担当大臣、拉致問題の解決担当となる加藤厚生労働大臣(拉致問題担当大臣)らとゴルフを楽しんだ、との報が伝わった。「安倍1強」の下に結集するパワーを見せつけられた格好にも映る。自民党総裁選圧勝を目指す安倍首相の政治信条や政権シナリオへの誹りを回避する為には、“アベノミクス効果(円高抑制)の継続”も当然含まれているだろう。

円を揺さぶる波乱材料を確認せよ

円高抑制の意向は少なくとも「安倍3選」に向けて揺るがない、と読むのが無難だ。しかし8/20週において筆者は、円を揺さぶる不定見な2つの材料に警戒を覚えている。

ひとつは通貨・国債・株価のトリプル安という「トルコショック」であり、8/16時点で前年末終値比-36.2%となったトルコリラ円の顛末である。8/17英経済紙一面で“LiracomesunderpressureafterUSsanctionswarning(米国の制裁措置警告後、リラは圧力を受ける)”とするなど、米・トルコ関係の外交関係悪化が契機となったとの見方を報じているが、そもそもはエルドアン大統領の強硬姿勢に対し、娘婿のアルバイラク財務相、チェティンカヤ中銀総裁への失望が「金融政策の失政」として燻っていた経緯がある。トルコリラが利上げを続ける米ドルにシフトされ易い環境であるほか、仕組債などで円投/トルコリラ買いされていた建玉の縮小などは、局地的な円圧迫場面に繋がるのではないか。

2つ目は6月以来の再開予定(8/22-23)となる米中貿易協議の行方だ。8/23-25のカンザス連銀主催・ジャクソンホール・シンポジウムでパウエル議長が講演をするが、労働市況の好調、インフレ率上昇を踏まえ年末に向けた利上げテンポ感(8/17時点:12/19FOMCでの2.25-2.50%利上げ確率は64.5%)のシナリオをどのように表明するか。トランプ通商施策を念頭とした慎重な姿勢はドル高抑制にも繋がりかねず、米中貿易協議の結果がパウエル議長の姿勢に影を落とす可能性も留意しておきたい。

8/20週ドル円焦点

上値焦点は8/6-7-8-15高値圏111.44-45-49-53、8/3高値111.90。超えれば8/1高値112.16。下値焦点は8/16-15安値圏110.45-42。割れたら8/13安値110.09、6/28安値109.95、200日線109.90近傍、6/27安値109.69、6/25-26安値109.35。各局面で日足一目均衡表雲の帯(110.455-111.616)が意識されると推考。

武部力也,週間為替相場見通し
(画像=岡三オンライン証券)

武部力也
岡三オンライン証券 投資情報部長兼シニアストラテジスト