前日の海外時間には、トランプ米大統領がパウエルFRB議長について、「低金利政策をとるとみていたが、逆に金利を引き上げている」と共和党支持者に不満を漏らしたと一部報道機関より報じられました。この一連の動きのなかで、ドル円は110.022円まで下落し、本日の東京時間早朝には「利上げは気に入らない」、「中国は間違いなく通貨操作をしていると思う。ユーロも操作されていると考える」と発言したことにより、ドル円は110円の大台を割り込み、109円台後半まで続落しています。

今後の見通し

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(画像=PIXTA)

前週金曜日には、「米国は通商協議で元高を促すよう中国に圧力をかける方針」とNYタイムズ紙が報道しトランプ政権の米金利上昇やドル高を牽制する発言が意識されていたなかでの上記発言だったこともあり、ドルの上値が今後は意識される可能性がありそうです。為替操作国として中国と欧州の名前が挙がりましたが、日本の名前が外れたことで円買い主導のマーケットではなく、欧州と中国を中心としたリスク回避の動きが強まる可能性がありそうです。ただ、ユーロドルの動きを見る限りは明確に対ユーロでドルが売られていることもあり、ドル売りがメインの動きに傾斜がかかるかもしれません。

中間選挙を前に、石炭灰の廃棄規制の撤回をしたことを含めなりふり構わずに票固めに動いている動向が散見されるため、引き続き通貨圧力に関する発言が多く見られそうです。また、今週末にはジャクソンホールにてパウエルFRB議長の講演が控えていることもあり、発言内容次第ではさらなるドル売りへのトリガーになるかもしれません。トランプ大統領の発言を背景に、本日は日経平均株価が軟調にスタートしており、日経平均株価の動向次第では欧州株、米国株にも悪影響が波及し、株安によるリスク回避の側面も持ち合わせていることもあり、地合い的にはドル円の上値は重いと考えることができそうです。

ドル円の日足チャートを見ると、抵抗帯下限の110.45円をNYクローズで下回ったことにより三役逆転となっています。徐々に下落トレンド色が強まってきており、引き続き109円台半ば程度までの下落を見込んでいます。

引き続き111.20円のドル売りポジションを維持

前週から継続している111.20円でのドル売り円買いのポジションですが、日足一目均衡表で三役逆転になったことでドル円のもう一段安が期待できます。109円半ば(109.50円程度)での利食いを想定しています。

海外時間からの流れ

欧州時間では、22-23日にかけて米中の次官級通商協議が開催されます。第4回米中通商協議や11月に予定されているトランプ米大統領と習・中国国家主席との通商会談に向けた事前協議との見方もあるため、ネガティブサプライズへ警戒感が強まっていることもあり、ややリスク回避の動きが強まる展開となりました。また、落ち着きを徐々に取り戻してきているものの、まだまだトルコ情勢の先行き不透明感がリスク回避の動きをサポートしそうです。背景としては、メルケル・独首相が「トルコに対する緊急支援提供の必要性は、現時点では見当たらない」と述べていることなどが挙げられそうです。

NY時間に入ると、上述したようにトランプ大統領の一挙手一投足がドル売りの流れを構築し、東京時間に入ってもこの動きは継続しています。米国、欧州、中国を先頭としてリスク回避の動きが主導しているなか、ロウ・RBA総裁が「次回の行動は利上げの可能性が高く、利下げでない」と発言しており、目先は豪ドルに注目が集まるかもしれません。

今日の予定

今日の海外時間には、主要な経済指標が予定されておりません。引き続き、トランプ大統領を筆頭としたヘッドライン相場になりそうです。

(提供:FXプライムbyGMO)

高野やすのり
慶應義塾大学卒。チェース・マンハッタン銀行(現J.P.モルガン・チェース銀行)、スイス・ユニオン銀行(現UBS銀行)などでインターバンクディーラー業務等に従事。現、(株)FXプライムbyGMOお客様コンサルタント。Twitterでも情報発信中 高野やすのり@takano_fxp