日経平均予想レンジ22,602~23,122円
今週は、通商摩擦後退を好感した米国株上昇を追い風に日経平均は国内材料に乏しい中、8日続伸から5/21以来23,000円台を回復、3ヵ月ぶりの高値水準を付けた。買い一巡後は上昇ピッチの速さに対する警戒感から上値を抑えられ週末は22,865円で終了した。
海外の焦点
注目のジャクソンホールで開催された経済金融シンポジウムでパウエルFRB議長の講演内容が段階的な利上げの基本方針を堅持する一方、利上げペースの加速も否定し、来年には打ち止めになるとの見方が広がった。又、中国人民銀行が人民元の基準値算定方法を調整していると発表したことなどが米景気や米中通商問題をめぐる警戒感を後退させている。一方、北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉をめぐり、米国とメキシコの2国間交渉が大筋合意。28日にはカナダも妥結に前向きな姿勢を示したことから市場では世界的に激化する貿易戦争が収束に向うとの期待感が高まっている。ただ、来週にもトランプ大統領が対中貿易制裁で第3弾に当たる2,000億ドル相当の関税発動に前向きな考えを示したと伝わり、気の抜けない状況は続く。
国内の焦点
6月日銀短観では、大企業製造業の想定為替レートは107円26銭。1ドル105円とした想定レートを下回るような円高にならない限り、企業業績は好調を維持する可能性は大きい。足元の全産業の経常利益は20兆円超と過去最高益を更新する模様。企業は設備投資を12兆円弱に抑えている。このため潤沢な資金は大幅に増加しており、増配や自社株買いなどの株主還元を実施する企業は今後も拡大しそうだ。
日経平均は節目の23,000円を回復した。5月の23,000円時点のEPS1,657円、PER13.88倍から比較すると、8/30現在でEPS1,725円、PER13.25倍は割安感を意識させる。5月並みに買われれば24,000円近辺となり上昇余地はあろう。
テクニカル面では短・中・長期移動平均線が22,500円付近に収束し、節目を上抜けたことで上昇転換へのシグナルが点灯した。一段高へはきっかけ待ちとなる。ただ、短期的には上昇ピッチの速さに対する警戒感は強い。調整した場合は8/24窓埋め22,602円が警戒されるほか、8/13安値から8/30高値の上昇幅に対するフィボナッチ比率38.2%押しの22,581円が下値目処となる。これらの水準は連騰による過熱感を冷ます自律調整の範囲内と受け止められる。
来週の株式相場
以上、来週は通商問題での過度な懸念後退や良好な需給環境を背景に上値挑戦への足場固め局面と捉えている。日経平均のレンジは上値は2/2窓埋め23,122円が目処となり、下値は8/24窓埋め22,602円が意識される。
伊藤嘉洋
岡三オンライン証券 チーフストラテジスト