AlipayやPaytmなど、中国やインドのFinTech(フィンテック)企業が勢いを増して来ているのを感じている人もいるのではないでしょうか。フィンテックの波が欧州から中国やインドなどのアジアに流れつつあります。そんな中、実は中南米の国メキシコでも、面白い動きが見られるのをご存じでしょうか。2018年3月にはアマゾンが初の試み「デビットカードサービス」を開始するなど、メキシコでもフィンテックの波が訪れています。アマゾンも目をつけたメキシコ。今回は、そんなメキシコのフィンテック事情についてお話します。

アマゾンも参入するメキシコのフィンテック市場

MEXICO
(提供=J.ScoreStyle)

冒頭にもお伝えしたとおり、アマゾンがメキシコを舞台にフィンテック事業を展開しています。2018年3月にはアマゾン初のデビットカードサービス「アマゾン・リチャージャブル」を開始しました。デビットカードと言っても、銀行口座と連動しているわけではありません。コンビニに行って現金をチャージする、いわば電子マネーのようなものです。

メキシコには、銀行口座やクレジットカードを持っていない人が多く存在します。

2014年の世界銀行のデータによると、銀行口座保有率は、ブラジルが68.1%、日本は96.6%なのに対し、メキシコは38.7%しかありません。1994〜95年のメキシコの金融危機(テキーラ危機)により、中央銀行は財務の健全性を保とうと規約を厳格化したため、金融危機から20年以上経過した今でも一般の人が銀行口座を持つことが困難です。

アマゾンは中南米のEC市場に5年以上前から参入し、急激にシェアを伸ばしていますが、それでもアメリカ・Portada社の調査によると、アルゼンチンのeコマース企業「メルカドリブレ」が中南米諸国のシェアが47%に対し、アマゾンは17%と大きく差をつけられています。メキシコ国内も同様で、アマゾンが21%に対しメルカドリブレが39%とリードしています。

メルカドリブレは、アリババの「アリペイ(支付宝)」やeBayの「PayPal」の仕組みを踏襲した電子決済サービス「メルカド・パーゴ」に力を入れています。アマゾンの「アマゾン・リチャージャブル」は、銀行口座やクレジットカードを持たない人を取り込み、シェアを伸ばす狙いがあります。

政府もフィンテックを後押し

メルカドリブレやアマゾンも参入するメキシコのフィンテック市場は、かなりの盛り上がりを見せています。フィノビスタ(Finnovista)が発表した報告書「Fintech Radar」によると、2017年にはフィンテック企業が238社存在し、2016年と比べて約50%増えました。

さらに2018年3月に、フィンテック企業を規制する法案をメキシコ下院が可決しました。この法案は、フィンテック企業間の競争を促進し、消費者保護や、金融システムの安定性を確保するもの。さらに、資金洗浄や犯罪資金調達といった違法取引の防止などの枠組みを設定するものです。この法律のおかげで、安心してフィンテックのサービスを利用できる基盤が整いました。さらなる市場の拡大が見込めるでしょう。

市場が拡大している背景には銀行口座保有率の低さがあると言えます。銀行は、中小企業または個人に融資することに積極的でなく、審査のノウハウも不足しているようです。そのため、多くの中小企業・個人は、設備資金・運転資金を調達することが難しく、思うように事業を展開できていません。

こういった理由から中小企業の資金調達ニーズをくみ取るレンディングを展開する企業が急成長しています。メキシコでは、アマゾンやメルカドリブレが手掛ける決済・送金サービスの伸び率が23.1%であるのに対し、レンディングは58.8%と飛躍的な伸びを見せています。

レンディングサービスで中小企業・個人が資金を手にすれば、銀行口座を持っていない層もオンラインで決済サービスを利用するようになるでしょう。メキシコは、EC市場がさらに拡大するための過渡期にいるといえるのです。

メキシコで注目のフィンテック企業とは?

それでは、メキシコで注目のフィンテック企業をご紹介しましょう。

・Konfio
Konfioは零細事業者の救済に取り組む企業です。シンプルで使いやすいプラットフォーム上で最大5万ドル(5,40万円)という高額な資金を、零細事業者に融資しています。銀行がなかなか融資をしない不合理な金融プロセスの改善に取り組んでいます。

・Kueski
Kueskiはマイクロレンディング(少額融資)サービスを展開し、ラテンアメリカで最も大きく成長した企業だといわれています。ビッグデータとAIを活用し、24時間365日いつでも数分の審査で融資を受けられます。

・Bitso
Bitsoは中南米諸国に初めて仮想通貨を持ち込んだ仮想通貨の取引所です。仮想通貨を使った金融面でのイノベーションに取り組んでいます。ビットコインの技術を活用して、支払い拒否のリスクをなくし、国際送金を低コストで行う仕組みを構築しています。2018年にはモバイルアプリをリリースし、Eメールアドレスや電話番号を指定し、相手に無料で送金するサービスを開始しました。

・ComproPago
ComproPageは詐欺が横行したことにより、クレジットカードの利用に抵抗がある層を対象に、オンラインショッピングで買い物した際、現金で支払えるサービスを展開しています。支払いはコンビニエンスストアや薬局で行えます。

・Clip
Clipは今アメリカで勢いのあるスクエア社が展開するモバイル決済サービスのメキシコ版です。カードリーダーをスマートフォンに取り付けるだけで、クレジット決済端末として利用できます。

外国企業も参入チャンスあり!メキシコのフィンテックのポテンシャル

上述したアマゾンのように海外企業からメキシコに参入しているケースもありますが、支援をしている会社もあります。世界的なフィンテック企業のアクセラレーターであるStartupbootcamp FinTech社は、世界のスペイン語を公用語とする都市やマイアミを訪れて、将来有望なフィンテックのスタートアップから10社を選び、1万5,000ドルの支援と、メキシコシティにあるコワーキングスペースの提供、そして海外展開を支援し、メキシコを中心としたラテンアメリカでのビジネスを支援する機会を提供しています。

それだけメキシコのフィンテック市場のポテンシャルは高いと言えます。急激に成長するメキシコのフィンテック市場は、これからますます激戦となり、ラテンアメリカの、いや、世界の台風の目になるかもしれません。(提供:J.Score Style


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