2020年にAIを搭載した自動運転車が街を走行し、2030年には一部の専門職がAIに取って代わられる……。人間の仕事がAIに奪われるという説を度々耳にするほど、AI時代の到来は身近なものとなっています。

そんな中、近年注目を集めているのがエンパシー教育です。信用の構築を手助けするプログラムといわれていますが、その実態はどういったものなのでしょうか。

AI時代を生き抜くために欠かせないエンパシー教育

empathy
(提供=J.ScoreStyle)

1956年に開催されたダートマス会議で「人工知能」という表現が登場してから、半世紀以上が過ぎました。現在では、AIが自ら学ぶことで知識や理解を深めるディープラーニング(深層学習)により、AIの処理能力は以前よりはるかに進化しています。その能力の高さゆえ、将来AIは人間を超えるのではないかと考える人も少なくありません。

そんなAIにもウィークポイントと呼べる部分があります。それは“共感する力”です。英語ではエンパシー(empathy)と表記されるもので、他者がどのように考え、感じているのか、相手の立場で物事を考えて最良の選択をする能力を指します。

今現在のAIのウィークポイントに対する考え方の主流は、人間は相手の気持ちを推量できるが、AIはまだ気持ちを推し量ることはできないだろう、というものです。しかし、今のうちに自身の共感力を高めておかないと、やがてAIに共感力が備わった時に自身が社会で通用しなくなるのではないか、との見解を示す人も中にはいるでしょう。未来に訪れるであろうAI時代を生き抜く際に必要となる共感力。この力を養うために求められているのが、エンパシー教育なのです。

エンパシー教育とは

エンパシー教育とは何かを語る上で外せないのが、感情リテラシーの第一人者として知られるメリー・ゴードン氏です。1990年代、彼女はエンパシー教育の一環として「ルーツ・オブ・エンパシー」を生み出しました。この教育法では5~13歳までの子どもたちを対象に、相手の気持ちを汲み取る力の根幹部分を形成する取り組みを行います。

このプログラムはカナダ全土をはじめ、アメリカ、ニュージーランド、イングランド、ドイツなど世界中で実施されました。延べ50万人以上もの子どもたちがルーツ・オブ・エンパシーを受けています。その主な内容は、思春期の子どもたちに乳児と一年間にわたり面会をさせるというものです。赤ちゃんが成長していく様子を直接見るという経験をすることによって、生命の大切さやモラルある育児に加え、子どもたちの中に相手を思いやる心が養われるとされています。

日本では、ルーツ・オブ・エンパシー以外にも、日本文化を通じて学生たちの共感力向上につなげている学校が存在するなど、エンパシー教育は既にさまざまな形で取り組まれています。

エンパシー教育は信用創造にも一役買う?

エンパシー教育に対する考え方の1つに、共感性の高まりが想像力や創造性を生み、さらに周囲から信用を得られる可能性も含まれる、といったものがあります。共感性と信用性にはどのような関係があるのでしょうか。

例えば、親しい間柄ではない人とコミュニケーションを取らなければならない時、共感性が低いと相手の気持ちに寄り添いながらの会話が難しくなります。すると相手は「自分のことを理解する気持ちがない」と捉え、一歩引いたコミュニケーションになりがちです。

一方、共感性が高い場合は相手の考えを汲み取り想像する力を働かせながらの会話が可能になります。すると相手は「自分のことを理解しようとしてくれている」「相手の気持ちを考えられる人だ」と認識して、相手に安心感を与えると同時に、信用の創造にもつながるといえるでしょう。

共感力向上につながる行動は傾聴力と同調のトレーニング

共感力を養うためには、エンパシー教育の充実とともにコミュニケーション能力の向上も必要不可欠とされています。他者といかにして上手にコミュニケーションを取れるようになるかが、AI時代に立ち向かえる人間の形成につながるでしょう。共感力の向上には、以下のような点が重要です。

1. 傾聴力の向上
相手に共感するためには、話しの聴き方が重要となります。まずは、話を親身に聴き、頭の中で聴いた内容をしっかり咀嚼すること。目は感情が表れやすい部分とされているので、聴く時は相手の目を見ながら心を読むトレーニングもおすすめです。共感は見た目でも伝わるので、相手の話を聴いている時の自分の姿勢や相づちの打ち方なども見直すといいでしょう。

2. 相手のペースに同調する
相手に共感し、信用を得るためには両者の波長を合わせるのことも大切です。話す速度を相手と同じにするだけでなく、呼吸や動作も同じペースにすると、自然と共鳴し合い共感することができるようになるはずです。

AIが活用する時代こそエンパシーを養おう!

東京都水道局では、水道業界初の試みとして、問い合わせ対応用AIチャットボットの導入を決定。2018年7月よりホームページ上でサービスの提供をスタートするなど、AIは既にさまざまな分野において活用されています。50%近くの仕事がAIに奪われるともいわれる現在、その前に信頼関係の創出に必要なエンパシーを養っておいたほうがよさそうです。(提供:J.Score Style


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