いまどきシニアのスマホ事情を知る――OS編

シニアのスマホ事情
(画像=PIXTA)

iPhoneの最新機種である「iPhone XR」、「iPhone XS」、「iPhone XS Max」がいよいよ21日に発売された。巷ではiPhoneフィーバーが巻き起こっているが、iPhoneと言えば「若者のもの」というイメージが、みなさんにはないだろうか?

確かに10~20代の若者に圧倒的な支持を得ているiPhoneだが、実はシニア層のユーザーも少なくないことがMMD研究所の調査データから分かっている。知っているようで知らない、シニアのスマートフォン事情。そこで今回から「いまどきシニアのスマホ事情」と題し、シニアのスマートフォン利用に関する調査データを分析する連載企画をスタートする。

第1回となる今回は、利用OS別――iPhoneとAndroid別に傾向を見ながら、シニアのスマホ事情を探っていこうと思う。

(※本企画に掲載しているデータはすべて、「2017年6月 iPhone&Android シニア層のスマートフォン意識調査」(有料版レポート)に基づくものである。また、この調査の設計に基づき、本企画ではプレシニアである50代も含めて50~79歳をシニア層と定義する。)

【目次】
◆いまどきシニアのスマホ事情を知る――OS編
◆シニア層の55.1%はスマートフォンを利用
◆周囲に影響されるiPhoneユーザー、広告・実物に関心を持つAndroidユーザー?
◆iPhoneユーザーはブランドで選び、Androidユーザーは合理性で選ぶ
◆シニアiPhoneユーザーの16.5%が1日10回以上LINEを利用
◆まとめ――iPhoneユーザー/Androidユーザーの意識のギャップが浮き彫りに

シニア層の55.1%はスマートフォンを利用

まず、そもそもいまどきのシニアたちはスマートフォンを利用しているのだろうか? ガラケーと呼ばれる従来型のフィーチャーフォン、あるいはシニア向けスマートフォンやフィーチャーフォン…。スマートフォン以外にも様々なラインアップがある中で、シニアはどんな端末を選んでいるのか。

シニア層、50~79歳の男女6,444人にメインで利用している携帯端末について聞いたところ、55.1%がスマートフォンをメインで利用していると回答した。OS別にみると、iPhoneが25.0%、Androidが30.1%となった。

シニアのスマホ事情
(画像=MMD研究所)

スマートフォンに続いて利用者が多かったフィーチャーフォンの利用率は35.9%。シニア向け端末をメインで利用しているのは、スマートフォンとフィーチャーフォンを足し上げても3.8%に過ぎない。実際にシニア向け端末を利用しているシニア層は、思いのほか少ないことがデータから読み取れる。スマートフォンは難しい――そんなシニアの声を身近に聞くことも多いが、であるならば何故、どのような理由でシニアはスマートフォンを手に取ったのだろうか?

周囲に影響されるiPhoneユーザー、広告・実物に関心を持つAndroidユーザー?

iPhone/Androidのスマートフォンを利用していると回答し、本調査に進んだ50~79歳のシニア1,328人を対象に、スマートフォンを持ったきっかけを聞いたところ、iPhoneユーザーとAndroidユーザーでは、異なる傾向があらわれた。

シニアのスマホ事情
(画像=MMD研究所)

iPhoneユーザーがスマートフォンを持ったきっかけ上位3つをみていくと、「家族にすすめられたから」(15.8%)、「周りがみんなスマートフォンだから」(11.1%)、「家族が持っているのを見て興味を持ったから」(11.0%)となり、いずれも身近な人間が起因となっていることが分かる。それに対し、Androidユーザーのきっかけ上位3つは、「家族にすすめられたから」(13.1%)、「インターネットの広告をみて興味を持ったから」(11.5%)、「周りがみんなスマートフォンだから」(10.9%)である。

上位3つ以外に関しても、「家電量販で見て興味を持ったから」「友人・知人にすすめられたから」といった項目で両者に差が出た。

シニアのiPhoneユーザーは周囲に影響されてスマートフォンを持とうと思い、シニアのAndroidユーザーは家電量販店や広告に触発されてスマートフォンを持ち始める――そんな動機の違いがうっすらと見えて来る。

iPhoneユーザーはブランドで選び、Androidユーザーは合理性で選ぶ

それではシニア層はどのような理由でiPhone/Androidを選ぶのだろうか? 前項と同様1,328人のシニアを対象にiPhone/Androidを選んだ理由を聞いてみると、前項以上にくっきりと傾向が分かれた。

iPhoneユーザーのシニア666人の回答は明快である。他の理由を突き放して1位になったのは、「とくに理由はないが、iPhoneがよかった」で26.3%。スマートフォンを持とうと思った時点で、iPhoneがいいと決めていたシニアは一定層いるのかもしれない。ちなみに、iPhoneを選んだ理由の2位は「デザインやカラーを気に入ったから」で16.5%、3位が「スペックが高そうだから」で16.4%だった。

シニアのスマホ事情
(画像=MMD研究所)

一方、Androidユーザーのシニア662人の回答はどうだろう。Androidを選んだ理由としてもっとも回答が多かったのは「価格が安かったから」で27.9%。続いて、「画面サイズが大きいから」が20.4%、「スペックが高そうだから」が16.2%となっている。

「iPhone」というブランドで選ぶiPhoneユーザーに対し、コストや画面サイズなど、合理的な理由で端末を選ぶAndroidユーザー。スマートフォンへの嗜好が、シニア層の間でもはっきり分かれていることが感じられる。

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(画像=MMD研究所)

シニアiPhoneユーザーの16.5%が1日10回以上LINEを利用

iPhone/Androidのスマートフォンを、シニアは実際どのように使いこなしているのだろうか? まず、スマートフォンを持とうと思った理由――「スマホでこんなことがしたい!」というシニアの声から聴いてみよう。

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(画像=MMD研究所)

iPhone/Androidともに「インターネットをしたかった」が他の理由を引き離して1位になっている。

また、「地図・ナビ」ではAndroidユーザーが上回っているのに対して、「音楽」「SNS」「動画」「ゲーム」といった娯楽系のコンテンツでは、iPhoneユーザーが上回っている。この傾向を念頭に置いた上で、iPhoneユーザー/Androidユーザーそれぞれのアプリの利用頻度を見てみよう。

シニアのスマホ事情
(画像=MMD研究所)
シニアのスマホ事情
(画像=MMD研究所)

LINE、SNS、そしてゲームなどの娯楽系アプリの数値にご注目いただきたい。iPhoneユーザーの方がSNSや娯楽系のアプリを積極的に利用していることが分かる。たとえばLINEについて見てもそうだ。1日に10回以上利用すると回答したAndroidユーザーが8.0%であるのに対し、iPhoneユーザーは倍以上の16.5%となっている。

たとえシニアであっても、iPhoneユーザーはLINEやSNSで積極的にコミュニケーションを取るとともに、動画や音楽などのコンテンツも楽しんでいることがデータから窺える。一方、AndroidユーザーはiPhoneユーザーに比べて、スマートフォンを単なる連絡ツール・管理ツール――インフラとして捉えている傾向が強いのかもしれない。

まとめ――iPhoneユーザー/Androidユーザーの意識のギャップが浮き彫りに

iPhoneというブランドにこだわりを持ち、スマートフォンをプラットフォームとして使いこなすiPhoneユーザーと、合理性を重視してスマートフォンをインフラとして使いこなすAndroidユーザー。50代から70代の同じシニア層でも、利用しているOSによってスマートフォンに対する意識がかなり異なることが分かった。

次回は、また違った視点からシニア層のスマホ事情に迫るため、50代・60代・70代という年代別にデータを読み解いていこうと思う。

本コラムに関して

掲載しているデータは、販売データのごく一部です。また、弊社では単に数字をまとめるだけではなく、そのデータから何が言えるのか、今後の展望や戦略に役立てるべく様々な分析手法も取り入れています。

※本調査の百分率表示は四捨五入の丸め計算を行っており、合計しても100%とならない場合がございます。

執筆者:坂本 有珠

(提供:MMD研究所