● 民間企業の2017年夏のボーナス支給額を前年比+0.5%(支給額:36万7千円)と予想する。夏のボーナスとしては2年連続の増加となるだろう。
● 企業によってバラツキが大きいが、今年の春闘における一時金の妥結結果は昨年並みもしくは昨年をやや下回る企業が多かった。連合の調査でも、夏季一時金の妥結結果は昨年対比マイナスとなっている。ある程度以上の規模の企業でみると、夏のボーナスはやや減少した可能性が高い。下期に回復したものの、16年度を通じてみれば企業業績が伸び悩んだことが影響したものと思われる。
● 一方、増加が期待されるのが中小・零細企業である。中小・零細企業は組合組織率が低く、労使交渉自体が実施されないことが多い。ボーナス支給額を決定する時期も組合がある企業に比べて遅くなる傾向があり、相対的に直近の収益状況・業況がボーナスに反映されやすい。その点、足元の企業業績が改善していることはプラス材料だ。16年度の業績は、上期が円高等で下振れた一方、下期については、海外景気の持ち直しや円高の悪影響一巡(円安進展)等を背景に持ち直しに転じた。組合が存在しない多くの企業では、直近の業績回復の影響を強く受ける形で相対的に強めの結果になる可能性が高い。また、中小企業における人手不足感の強まりも、人材確保の観点からボーナス増に繋がる可能性がある。中小・零細企業を含めた全体としてみれば、17年夏のボーナスは小幅ながら増加すると予想する。
● もっとも、増加が予想されるとはいえ、伸び率自体は小幅なものにとどまる見込みである。加えて、春闘でのベースアップが昨年をやや下回る上昇率にとどまったとみられることからみて、所定内給与も伸びが鈍化する可能性がある。このように17年度も賃金の伸びが緩やかなものにとどまるなか、物価上昇率が今後高まっていくことで、実質賃金は減少する可能性があるだろう。個人消費は先行きも力強さに欠ける展開が予想される。17年度の景気は好調に推移する可能性が高いが、それはあくまで輸出の増加を背景とした企業部門主導の回復になるだろう。
● 賃金の回復が実現するのは18年度と予想している。17年の春闘は、物価が下落し企業業績も伸び悩んだ16年の結果を反映したことで物足りない結果に終わったが、18年の春闘では、物価が上昇し、企業収益も好調な17年の経済状況をベースに交渉が行われる。18年の春闘賃上げ率は17年対比で明確に上昇する可能性が高いだろう。また、17年度の好調な企業業績を反映して18年のボーナスは夏・冬とも増加が予想される。18年については、物価上昇を上回る賃金増加が実現するとみられ、実質賃金も改善するだろう。遅ればせながら家計部門への景気回復の波及が進むことになり、個人消費も緩やかに増加することが期待できる。
(提供:第一生命経済研究所)
第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 新家 義貴