要旨

●2016年度第3次補正予算案が閣議決定された。今回の補正のテーマは税収下振れの反映。年初来の円高・株安が響く形で2016年度税収が1.7兆円下方修正、2015年度と比較して0.4兆円減少する見込みとなっている。弾道ミサイル攻撃への迎撃体制強化のための防衛費などが追加されるが、追加歳出の規模は0.6兆円と小さめ。税収下振れに合わせて追加の国債発行を実施することが主目的の補正である。

●11月以降、大幅な円安・株高が進んでおり、これは税収にプラスに働く要因となる。金融市場の動向次第ではあるが、2016年度税収は今回見積もりから上振れ、17年度税収は増加する可能性も出てきた。

税収下振れ反映、追加歳出は0.6兆円と小規模

 2016年度第3次補正予算案が閣議決定された。歳出・歳入の大枠は次頁の資料の通りで、2016年度税収の下方修正とそれに対応した赤字国債発行が最も大きな補正項目となっている。2016年度税収見込みは当初予算時点見積もりの57.6兆円から1.74兆円下方修正され、55.9兆円と見込まれている。見込値通りとなれば、2016年度の税収額は15年度(56.3兆円)から0.4兆円の減少となる。年初来の円高・株安の進行を背景に、個人の配当所得や譲渡所得、製造業を中心に法人利益に下押し圧力が及んだものとみられる。2016年度上期平均のドル円相場は105.3円と、2015年度平均(120.1円)と比べて12%のドル高となっている。

 この税収の見積もり修正に合わせて、赤字国債の追加発行が実施される。筆者は今回補正における追加国債の発行は回避されるとみていたが、財務省の税収見積もり値が筆者想定を下回った結果、実際には税収下振れ額と概ね同額の1.75兆円の赤字国債発行が行われることとなった。10月に成立した第2次補正予算における建設国債2.8兆円の追加発行と合わせて、本年度補正予算での追加国債発行額は計4.6兆円となる。

 歳出面では、弾道ミサイル攻撃への迎撃体制の強化、災害復旧費などに0.6兆円が充当される。これらは、国債費など既定経費の減額(実勢金利の想定金利からの下振れによる不用額)が0.4兆円、税外収入0.1兆円、建設国債0.1兆円で賄われる形である。規模自体は小さく、国内景気への短期的なインパクトをもたらす性質の予算ではない。今回補正の主テーマはあくまで税収の修正だ。

 税収の今後が焦点となるが、今回の下振れが示すように、税収は為替や株価の動向に大きく左右される。2016年度のGDPは名目プラス成長への着地が見込まれるにも関わらず、年初来の金融市場の調整によって税収は当初見込みからの下方修正を余儀なくされた。ただ、足もとでは一転して大幅な円安・株高が進んでいる。“金融市場の逆流が生じなければ”という留保付きにはなるが、2017年度の税収が増加に転じる可能性は高まっていると言えそうだ(17年度税収の財務省見込も57.7兆円への増加)。2016年度の税収についても、年度下期の税収が反映される決算段階では今回見積もりから上方修正される可能性がある。(提供:第一生命経済研究所

マクロ経済分析レポート 2016年度第3次補正予算案のポイント
(画像=第一生命経済研究所)
マクロ経済分析レポート 2016年度第3次補正予算案のポイント
(画像=第一生命経済研究所)

第一生命経済研究所 経済調査部
担当 副主任エコノミスト 星野 卓也