科学的に正しい好奇心、モチベーションの高め方

モチベーションの高め方
(画像=きなこもち/photoAC)

やる気が出ないのはあなたのせいではなく、あなたが「やる気の出し方」を教わる機会がなかったせいである。

自らの著書『「やる気」を育てる!』の冒頭でこう述べているのは、「ホンマでっか!?TV」(フジテレビ)など、テレビで大活躍の心理学者・植木理恵先生です。

「頑張りたいのに、やる気がわかない……」、そう焦った経験が誰しも一度はあるはず。勉強でも仕事でも、人はやる気を持てないことに対して集中することができず、その結果いつまでたっても上達しません。

さらにやる気を感じない状態を放置すると、新しいことに気づく力がどんどん衰えていきます。「どうせできない」というようなあきらめ感が続けば、最悪の場合メンタルに深刻な影響が出てくる可能性もあります。

そのため、やる気を育てる方法を知ることは、成績や労働効率アップの問題にとどまらず、生活のクオリティをも左右するのです。そこで今回は、第1章「やる気を育てる5つの原則」の中から、「やる気」の根本的なメカニズムについて見てみましょう。

「エサ」で人のやる気は育たない

お金やオモチャで人を動かそうとする限り、やる気は育たない。これが、人間を育てるうえで忘れてはいけない心理学の原則です。

一般的には、人にやる気を起こさせるために「エサ」とも言える報酬を使うことが有効と思われがちです。しかし、物質的な報酬や体裁を取り繕うだけの賞賛は、本質的な「伸びようとする力」をかえってジャマする可能性があります。

たとえば、あなたが勉強に身が入らない中学生だとします。それを見かねた親からテストの点に応じたお小遣いアップの提案があったとしましょう。その時は「やった!」とばかりに、やる気を出すかもしれません。しかし、テストが終わり結果に応じた報酬を手にした後も勉強に向き合い続けることができるでしょうか?

「エサ」では、人のやる気を本質的な意味で育てることはできません。目の前のことにいっとき取り組むような「短距離のこと」はどうにかなりますが、永続的なやる気は育たないのです。

やる気を育てるのは、感性ではなく知識

「人たらし」という言葉があるように、生来の感性や愛嬌で、相手のやる気に働きかけるのがうまい人がいます。しかし、やる気を育てるうえで、感覚にだけに頼ることは危険だと植木先生はいいます。

たとえば、車の運転を想像してみてください。ライセンスを持っている人であれば、ハンドルの仕組みやアクセルとブレーキの場所といった大切な情報が頭のなかに漠然とでも入っているので、問題なく運転できるはずです。

しかし、車の仕組みについて何一つ知らなければ、「なんとなく」で車のエンジンをかけることができたとしても、進み方や止まり方がわからず大事故を招きかねません。

つまり、基礎は「知識」なのです。「やる気の芽は心のどこにあるのか」「そもそも心の性質とは」といった構造について知らないまま、相手や自分をうまく動かそうとしても、思うようにはいきません。

もちろん、人間はモノとは異なるため「マニュアル」通りに動かせるわけではありません。ただし、「科学」として発展し、その成果が積み上げられている知識を獲得することは、やる気を育てる上でも大きな武器となります。

「知らないから使えない」ことと「知っているが、あえて使わない」と判断するのとでは、その後の結果は大きく異なるのです。

やる気を育てることに「手遅れ」はない

世の中には、「5歳までに英会話を始めるべき」「リズム感覚を覚えるのは小学生では手遅れ」といった、“間に合わない説”が大流行しています。

同じような「うちの子はずっと無気力だけど、今から間に合うのかな?」「うちの社員にいまさらやる気の話をして、少しは変わるの?」という多くの相談に対して、植木先生は「すべて間に合います」と答えるそうです。

やる気を育てるのに、「いまさら」という時間的なリミットはありません。

実際に、発達や教育に関する心理学論文には、子どもや大人、そして様々な困難を抱えている人でも有効な支援によって、心の奥にあるやる気を伸ばしていける力があるという報告があります。また植木先生自身も、研究の中で接する重度の学習障害をもった子どもたちの「やる気」を根気強くコントロールし、適切な支援をすることで、ハイレベルな学習成果をあげさせた経験が多くあるそうです。

もちろん、早くから勉強し始めた人が有利なのは「物理的に」考えれば当然です。たとえば3歳からピアノを習っていた子は、大人になってから始めた人よりも練習期間が長く、音楽に対する筋力もついていることが容易に想像できます。

しかし、「やる気」が育つ可能性の限界は証明されておらず、その「やる気」を高めることをあきらめなければ、可能性は広がり続けるのです。

「〇歳までに始めないと間に合わない」ことを、脳や心の発育を根拠として、実際に証明できているのかという話になれば、それはまったく別問題だ。

こういう教育限界論については、科学的な実証もなければ、思想としての建設性もないと感じる。どのようなジャンルであっても、「不可能である」ことが実証されていない以上、「可能性がある」と考え続けるべきだ。いない以上、「可能性がある」と考え続けるべきだ。

自分で限界をつくる生き方はやめたほうがいい。挑み続ける人間は生涯伸びるし、生涯変わることができる。(本書34~35ページより)

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やる気はどこからきて、それはどのように膨らんだりしぼんだりするのか。意欲に満ちた人間を育むには、どうしたらよいのか。『「やる気」を育てる!』は、こうしたベーシックな疑問について、あらためて科学的な観点から見つめ直した1冊です。

他にも「アメとムチ」の正しい使い方や、三日坊主を防止して長期的なやる気を育む方法など、具体的なアプローチについて述べられており、一生モノの「やる気」を育てるために役立つはずです。

(提供:日本実業出版社)

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