MMD研究所は、情報流通支援サービスの株式会社オークネット(東京都港区、代表取締役社長:藤崎清孝)が運営するオークネット総合研究所と共同で、2017年12月15日~12月21日に「日本とアメリカにおけるスマートフォン中古端末市場調査」を実施いたしました。対象者は日本在住の15歳~69歳の男女1,007人とアメリカ在住15歳~69歳の男女1,241人です。今回は日米の比較以外にも日本に関しては過去調査からの変化をご覧いただけます。全2回の調査リリースを予定しており、第1弾は日米モバイル端末の利用状況を、第2弾は日米の意識の違いにフォーカスを当ててご報告いたします。
【調査結果サマリー】
■ スマートフォン利用率日本は77.9%、米国は93.0%で15.1ポイント差
■ 日本中古端末購入率4.5%、2016年4月から2.7ポイントアップ 米国の中古端末購入率は13.0%、日本より8.5ポイント高い
■ 日本、以前利用していた端末「自宅保管」「キャリアの下取り」「中古買取店へ売却」が上位 2017年4月から「キャリアの下取り」5.2%減、「中古買取店へ売却」1.3%増 米国は「自宅保管」が日本より17.0%低く、「家族・友達に譲った」が10.7%高い
■ 自宅保管の理由、日本では「個人情報の流出が心配で手放せない」米国は「いつか使うかもしれないから(譲る予定を含む)」がそれぞれ上位
■ 日本、中古端末所有者は月額料金「3,000円未満」が最も多く36.4% 新品端末所有者は月額料金「5,000円以上10,000円未満」が最も多く42.6%
■ スマートフォン・携帯電話の故障時の修理「無料だった」、日本は39.6%、米国は18.7% 補償サービスへの加入率(日本54.4%、米国33.8%)の影響か
スマートフォン利用率日本は77.9%、米国は93.0%で15.1ポイント差
日本在住の15歳~69歳の男女(n=1,007)とアメリカ在住15歳~69歳の男女(n=1,241)に対して、現在メイン利用している携帯電話端末(単数回答)を聞いたところ、日本のスマートフォン利用率は77.9%、アメリカのスマートフォン利用率は93.0%となり、その差は15.1%となった。フィーチャーフォン利用率は、日本17.7%、アメリカ3.3%でその差は14.4%であった。
日本中古端末購入率4.5%、2016年4月から2.7ポイントアップ 米国の中古端末購入率は13.0%、日本より8.5ポイント高い
スマートフォン・携帯電話を所有している日本在住の15歳~69歳の男女(n=962)とアメリカ在住15歳~69歳の男女(n=1,195)に対して、現在利用している端末の購入・入手方法を聞いたところ、「新品の端末を購入した」という割合は、日本で93.9%、アメリカでは78.5%であった。中古端末(修理・整備された中古端末を含む)の購入割合は、日本は4.5%、アメリカは13.0%となった。また、日本の中古端末割合に関しては、2016年4月に行った調査の1.8%から2.7ポイントアップするという結果になった。
日本、以前利用していた端末「自宅保管」「キャリアの下取り」「中古買取店へ売却」が上位 2017年4月から「キャリアの下取り」5.2%減、「中古買取店へ売却」1.3%増 米国は「自宅保管」が日本より17.0%低く、「家族・友達に譲った」が10.7%高い
スマートフォン・携帯電話を所有している日本在住の15歳~69歳の男女(n=962)に以前利用していた端末の処分方法について聞いたところ、「自宅保管」が最も多く60.7%、「キャリア下取り」が20.6%、「中古買取店へ売却」が5.2%となった。2017年4月の同様の調査と比較すると、「自宅保管」が55.0%から5.7%増、「キャリアの下取り」は25.8%から5.2%減、「中古買取店への売却」が3.9%から1.3%増となった。
同様の質問をアメリカ在住15歳~69歳の男女(n=1,195)に対して行ったところ、「キャリアの下取りサービス(20.7%)」と「中古買取店への売却(5.4%)」は日本とほぼ割合が変わらなかった。大きく差がある項目としては、アメリカでは「自宅保管」が日本より17.0%少なく、43.7%。「家族・友人に譲った」は日本より10.7%多い12.3%であった。
自宅保管の理由、日本では「個人情報の流出が心配で手放せない」米国は「いつか使うかもしれないから(譲る予定を含む)」がそれぞれ上位
スマートフォン・携帯電話を「自宅で保管している」と答えた日本の男女(n=584)とアメリカ在住の男女(n=522)に対して、なぜそのまま持っているかについて聞いたところ、日本では「個人情報の流出が心配で手放せない」が31.0%で最も多く、アメリカでは「いつか使うかもしれないから(譲る予定を含む)」が28.2%で最も多い結果となった。
日本、中古端末所有者は月額料金「3,000円未満」が最も多く36.4% 新品端末所有者は月額料金「5,000円以上10,000円未満」が最も多く42.6%
日本在住の新品端末購入者(n=903)と中古端末購入者(n=44)に現在のスマートフォン・携帯電話の月額料金を聞いたところ、新品端末購入者の最も多い金額のレンジは「5,000円以上10,000円未満」で42.6%となった。中古端末購入者の最も多い金額のレンジは「3,000円未満」で36.4%であった。
同様の質問をアメリカ在住の新品端末購入者(n=938)と中古端末購入者(n=156)に対して行ったところ、新品端末、中古端末購入者どちらも最も多い金額のレンジは「5,000円以上10,000円未満」でそれぞれ37.2%と44.9%であった。
スマートフォン・携帯電話の故障時の修理「無料だった」、日本は39.6%、米国は18.7% 補償サービスへの加入率(日本54.4%、米国33.8%)の影響か
スマートフォン・携帯電話が故障したときに修理依頼をしたことがある、と回答した日本在住の15歳~69歳の男女(n=278)とアメリカ在住15歳~69歳の男女(n=375)に対して、修理費用について聞くと、日本では「無料」という回答が最も多く39.6%であった。アメリカでの最多回答は「5,000円以上7,000円未満」が19.5%で、日本で最多回答であった「無料」は次点であった。
上記の結果は、補償サービスの加入率にも関連していると考えられる。スマートフォン・携帯電話を所有している日本在住の15歳~69歳の男女(n=962)とアメリカ在住15歳~69歳の男女(n=1,195)に対して、補償サービスの加入状況を聞いた設問では、日本国内の補償サービス加入率は54.4%、アメリカの加入率は33.8%となり、補償サービス加入率に大きな違いが見られた。
執筆者:セノオ アキコ
※本調査レポートの百分率表示は四捨五入の丸め計算を行っており、合計しても100%とならない場合がございます。
【モバイル研究家木暮 祐一先生からのコメント】
米国と日本は、携帯電話サービスの提供スタイルや通信料金などにおいて類似点が多く、わが国の今後の関連ビジネスの展開を考える上でのヒントは多い。今回の調査では、スマートフォン中古端末市場の日米比較調査を実施したことで、この市場が今後わが国において成長が期待できる分野であることが見えた。
中古端末購入率は、米国の13.0%に対してわが国はわずか4.5%と米国の約3分の1程度だ。米国の中古端末割合が高いわけではないが、少なくともわが国の中古端末流通関連事業者もやり方次第で3倍近い成長が見込める。では中古端末流通市場に関わる業態の中では、どの分野の成長が見込めるのか。
実はこれまで筆者が行ってきた中古端末流通業界の関係各所へのヒアリングから、中古端末さえあればいくらでも販売数は増やしていける状況にあることを聞いている。すなわち中古端末そのものが不足しており、消費者が手持ちの端末を放出してくれればこの市場がより活況を極めていくというのである。
今回の調査結果を見ると、消費者が以前使用していた端末の処分方法で最も多いのは「自宅保管」であることが分かる。米国でも43.7%、日本においては60.7%の消費者が端末を眠らせてしまっている。自宅に保管されている端末を市場に放出させることができれば、端末買取り事業者や流通事業者の成長が期待できる。中古端末の供給が増加すればMVNOの契約数増加にも貢献するはずだ。 消費者が端末を自宅保管する理由は「個人情報の流出が心配で手放せないから」という回答が31.0%に上る。米国より10.9ポイントも高く、日本の消費者は個人情報流出に気を遣っていることがうかがえる。こうしたことから、端末買取り事業者は買取り端末のデータ消去を徹底し、個人情報取扱いに対する信頼性をアピールすることで、買取り数増加が期待できる。
本調査では修理時の費用に関する日米比較を行っているが、わが国では端末購入時に加入する補償サービスの利用率が高いため、修理料金比較では米国に比べより安価に端末を修理できている。安価に修理可能であれば、今後市場に放出される中古端末は米国と比べ整備が行き届いた端末が多いことが期待できそうだ。実際に世界の中古端末流通事業者からも、日本の消費者が手放した中古端末は破損や傷等が少なく品質が高いという声を聞く。日本の消費者がスマートフォンを丁寧に取り扱うからという理由もあるが、わが国は優良な中古端末を今後市場に数多く放出できるポテンシャルを秘めている。
総務省が現在開催している「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」では、中古スマートフォンの流通を意識した議論が展開されている。さる1月15日に開催された同第2回検討会では、中古端末事業者としてヒアリングに出席したベイン・アンド・カンパニー・インコーポレイテッドの大越一樹氏が、日本の中古端末市場が諸外国と比べて小さいことを指摘、その理由として中古端末供給量が少ないことを掲げている。また、新品端末の端末値引きが大きく、中古端末の価格面でのメリットが不明確であることも指摘している。わが国はまだ中古端末を取引する市場が未発達ともいえ、今後この市場をけん引していく事業者の活躍に期待をしたい。同時に、総務省の研究会の本来の目的は「MVNOを含めた事業者間の公正な競争の更なる促進に向けた方策について議論、検討する」ことであり、そのためには政府としても中古端末流通の市場活性化を同時に検討していくことが重要性との認識を持っている。
モバイル研究家 木暮 祐一
1967年、東京都生まれ。黎明期からの携帯電話業界動向をウォッチし、2000年に(株)アスキーにて携帯電話情報サイト『携帯24』を立ち上げ同Web編集長。コンテンツ業界を経て2004年独立。2007年、「携帯電話の遠隔医療応用に関する研究」に携わり徳島大学大学院工学研究科を修了、博士(工学)。スマートフォンの医療・ヘルスケア分野への応用をはじめ、ICTの地域社会での活用に関わる研究に従事。モバイル学会理事/副会長、ITヘルスケア学会理事。近著に『メディア技術史』(共著、北樹出版)など。1000台を超えるケータイのコレクションも保有している。
(提供:MMD研究所)