いまどきシニアのスマホ事情を知る――年代編
総務省統計局の発表(2018年9月20日公表 平成30年4月1日確定値)によると、日本の65歳以上の人口は全体の約28%。プレシニアと呼ばれる50歳以上の人口も含めると約40.4%に上る。高齢化が加速している日本社会にあって、プレシニアを含めたシニア層は今後ますます重要な市場となっていくだろう。「いまどきシニアのスマホ事情」と題しシニアのスマートフォン利用に関する調査データを読み解く本企画。連載第2回目となる今回はシニア層の年代別データに注目する。50代・60代・70代は、年代ごとにどのような傾向があるのだろうか? 年代別の集計結果を分析し、シニア層のスマートフォン利用実態により深く迫っていく。
(※本企画に掲載しているデータはすべて、「2017年6月 iPhone&Android シニア層のスマートフォン意識調査」(有料版レポート)に基づくものである。また、この調査の設計に基づき、本企画ではプレシニアである50代も含めて50~79歳をシニア層と定義する。)
【目次】
◆いまどきシニアのスマホ事情を知る――年代編
◆50~60代はスマートフォン>フィーチャーフォン
◆シニア層のスマホ所持には家族の影響大。70代はキャリアショップのすすめも
◆最も利用率の高いアプリ 50代はインターネット、60~70代は電話
◆やっぱりLINEよりメール派? シニアの連絡手段
◆まとめ――シニア層でも年代による傾向の違いあり
50~60代はスマートフォン>フィーチャーフォン
本連載第1回「ブランド志向のiPhoneユーザー、合理性重視のAndroidユーザー」でも取り上げた所有端末に関するデータを今回は年代別に見てみよう。50~79歳の男女6,444人にメインで利用している携帯端末について聞いたところ、年代ごとに大きな差が出た。
50代は70.9%がiPhoneまたはAndroidのスマートフォンを利用していると回答しているが、60代は50.8%、70代は33.3%に留まる。また、フィーチャーフォンの利用率を見てみると、50代が24.9%であるのに対し、60代は40.1%、70代は46.4%となった。
年代が上がるごとにスマートフォンの利用率が下がり、フィーチャーフォンの利用率が上がる――容易に予想される傾向ではあるが、フィーチャーフォンの利用率がスマートフォンの利用率を上回っているのは70代のみである、という点に注目すると面白い。50~60代は、スマートフォン利用者の方が多い。
また、僅かながらも50代のみiPhoneの利用率がAndroidの利用率を上回っている点も注目に値する。続いて、iPhone/Androidのスマートフォンを利用していると回答し本調査に進んだ50~79歳のシニア1,328人について、年代別に利用OSの割合を見てみよう。年代が上がるにつれて、Androidユーザーの割合が増えていることも分かる。
シニア層のスマホ所持には家族の影響大。70代はキャリアショップのすすめも
利用端末や利用OSには年代別に傾向の違いがはっきりと表れていた。では、スマートフォンを持ったきっかけにも年代ごとの差が見て取れるだろうか?
iPhone/Androidのスマートフォンを利用していると回答し本調査に進んだ50~79歳のシニア1,328人を対象に、スマートフォンを持ったきっかけを聞いてみたところ、各年代に共通して見られたのは「家族」の影響だ。
50代のトップ3は「周りがみんなスマートフォンだから」(14.0%)、「家族にすすめられたから」(12.7%)、「家族が持っているのを見て興味を持ったから」(10.2%)。60代は「家族にすすめられたから」(15.7%)、「インターネットの広告を見て興味を持ったから」(10.8%)、「家族が持っているのを見て興味を持ったから」(10.3%)。70代は「家族にすすめられたから」(16.8%)、「周りがみんなスマートフォンだから」「友人・知人が持っているのを見て興味を持ったから」(11.8%)、「キャリアショップですすめられたから」(10.1%)となった。
全ての年代で家族に関するきっかけが上位に入っているが、ここで注目したいのは70代のトップ3に食い込んだ「キャリアショップですすめられたから」という項目だ。この項目では50~60代の回答率と70代の回答率の間に6ポイント近い差が出ている。自発的に情報収集をすることが難しくとも、キャリアショップで店員の丁寧な説明を聞きながらであればスマートフォンへ乗り換えることもやぶさかではない――そんな70代は、意外と少なくないのかもしれない。
最も利用率の高いアプリ 50代はインターネット、60~70代は電話
それでは、シニアは実際どのようにスマートフォンを利用しているのだろうか? iPhone/Androidのスマートフォンを利用している50~79歳のシニア1,328人を対象に、スマートフォンで利用しているアプリのジャンルを聞いたところ、年代別のトップ10は以下の数表の通りとなった。 ※色付きがトップ10、太字はその中の1位の項目である。
50代のトップが「インターネットブラウザ/検索」であるのに対して、60~70代のトップは「電話」だ。さらに、50代のトップ10にはランクインしていない「ニュース」が、60~70代では10位に入っている。また、60~70代は50代に比べて「動画」「SNS」「クーポン/ポイント」など、様々な項目で50代よりも数値が低く出た。60~70代は50代に比較して、スマートフォンを「メール・電話をするためのツール」として捉えている傾向が強いようだ。
やっぱりLINEよりメール派? シニアの連絡手段
さらに、シニア層のアプリ利用実態を掘り下げていく。前項では利用しているアプリのジャンルを見てきたが、続いてアプリの利用頻度を見ていこう。前項と同様、スマートフォンを利用しているシニア1,328人を対象にスマートフォンのアプリの利用頻度を聞いたところ、やはり年代別に異なる傾向が見られた。ここでは前項で取り上げた「電話」以外のコミュニケーションツールに注目する。
まず、50代ではメールとLINEの利用頻度が拮抗している。1日に数回以上メールを利用する50代のスマートフォンユーザーは58.2%。同じく1日に数回以上LINEを利用するスマートフォンユーザーは57.4%で、僅かにLINEの方が低いものの、いずれも半数以上の高い数値が出た。
60代では、50代に比べてLINEの利用頻度が落ちていることが分かる。60代で1日に数回以上メールを利用する回答したのは53.1%であるのに対し、LINEは43.2%。その差は9.9%だ。60代になると、LINEよりメールアプリの方が身近なコミュニケーションツールなのかもしれない。
その傾向は、70代になると一層顕著になる。70代で1日に数回以上メールを利用すると回答したのは47.9%で、1日に数回以上LINEを利用すると回答したのは32%。60代以上に大きく開いたその差は15.9%となった。また、年代が上がるにつれてLINE・メールの利用頻度はともに下がっている。
前項の「利用しているアプリのジャンル」にもあらわれていた傾向だが、LINEという新しいコミュニケーションツールへの適応度が高いのは50代のようだ。また、「インターネット」や「ゲーム」等といった項目においても、利用頻度がもっとも高いのは50代であることが読み取れる。やはりシニアの中でも年齢層が上がれば上がるほど、スマートフォンをフィーチャーフォンの延長として――つまり、単なる連絡ツールとして捉えている割合は高くなるのかもしれない。
まとめ――シニア層でも年代による傾向の違いあり
「シニア層」と一言に括っても、年代によって様々な傾向の違いがあることが分かった。50~60代はフィーチャーフォンよりもスマートフォンの所有率が高く、60~70代はインターネットより電話の利用率が高いという結果も出ている。60~70代と異なる動きが見えた50代。それでは、プレシニア層である彼らが今後年齢を重ねて60~70代に突入していったとき、スマートフォンの利用方法は変化するのだろうか? MMD研究所では今後もシニアのスマートフォン利用動向を追っていく。
さらに、引き続き本企画も継続していく。第3回となる次回は、いよいよクラスター別(※)にシニアの実態に迫っていこう。
※クラスタ……異なる性質を持つ集団の中から、似た傾向のあるものを集めて作ったグループ。本コラムの元データとなっている「2017年シニアのスマートフォン利用に関する調査」では、調査対象のシニアを傾向別にグルーピングしたクラスター分析を行っているため、次回はその分析に基づいた考察を行う。
本コラムに関して
掲載しているデータは、販売データのごく一部です。また、弊社では単に数字をまとめるだけではなく、そのデータから何が言えるのか、今後の展望や戦略に役立てるべく様々な分析手法も取り入れています。
※本調査の百分率表示は四捨五入の丸め計算を行っており、合計しても100%とならない場合がございます。
執筆者:坂本 有珠
(提供:MMD研究所)