平成28年度税制改正で創設された被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(以下、空き家譲渡特例といいます)を適用するにあたり、いくつか注意しなければならない点があります。

名古屋国税局が公表しているチェックリストがありますので、申告する際には積極的に活用しましょう。

チェックリストからいくつか誤りやすい点を紹介したいと思います。

チェック①:相続又は遺贈により被相続人が居住の用に供していた家屋及びその家屋の敷地等の両方を取得していますか

空き家譲渡特例
(画像=チェスターNEWS)

空き家譲渡特例を適用する際は、家屋及び土地を相続することが前提になります。

たとえば、以下のように遺産分割が決まり、相続した空き家を売却することになった場合、次女は空き家譲渡特例を適用できません。これは、見逃しやすいポイントなので気を付けましょう。将来、空き家譲渡特例の適用を考えている場合には、遺産分割協議の際に気を付けないといけません。

 (例) 長女・・・建物全部及び土地の1/2を取得

    次女・・・土地の1/2を取得

チェック②:譲渡した資産の対価の額は、1億円以下ですか

譲渡対価の1億円の判定は、被相続人が居住の用に供していた家屋及びその家屋の敷地を取得した全ての相続人の譲渡対価の合計額で判定します。仮に、相続人2名が被相続人の居住用家屋及びその敷地を2分の1ずつ相続し譲渡した場合で、譲渡対価の合計額が1億2,000万円になるときは、空き家譲渡特例を適用できなくなります。

以下の例も注意が必要です。

 (例) 家屋・・・被相続人所有 (被相続人が居住していた)

    土地・・・被相続人と長男が1/2ずつ共有

この家屋及び土地を長男が取得して譲渡した場合、長男がもともと所有していた2分の1部分の土地の譲渡も含めて1億円の判定を行うので、譲渡対価が1億2,000万円のときは、空き家譲渡特例の適用は不可になります。長男が所有していた部分は措置法35条の「対象譲渡資産一体家屋等」に該当することになります。

措置法35条(一部抜粋)

5 第三項の規定は、当該相続又は遺贈による被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等の取得をした相続人(包括受遺者を含む。次項から第八項までにおいて「居住用家屋取得相続人」という。)が、当該相続の時から第三項の規定の適用を受ける者の対象譲渡をした日の属する年の十二月三十一日までの間に、当該対象譲渡をした資産と当該相続の開始の直前において一体として当該被相続人の居住の用に供されていた家屋(当該相続の時後に当該家屋につき行われた増築、改築(当該家屋の全部の取壊し又は除却をした後にするもの及びその全部が滅失をした後にするものを除く。)、修繕又は模様替に係る部分を含む。)で政令で定めるもの又は当該家屋の敷地の用に供されていた土地として政令で定めるもの若しくは当該土地の上に存する権利(次項において「対象譲渡資産一体家屋等」という。)の譲渡(譲渡所得の基因となる不動産等の貸付けを含み、第三十三条の四第一項に規定する収用交換等による譲渡その他の政令で定める譲渡(次項において「収用交換等による譲渡」という。)を除く。以下この条において「適用前譲渡」という。)をしている場合において、当該適用前譲渡に係る対価の額と当該対象譲渡に係る対価の額との合計額が一億円を超えることとなるときは、適用しない。

チェック③:取得費加算との関係

空き家譲渡特例と取得費加算の特例は同時に選択することはできません。逆をいうと、空き家譲渡特例が適用できない部分は、取得加算の特例の適用が受けられる可能性があります。以下の例題の場合、次女は空き家譲渡特例の適用ができませんが、取得費加算の特例は適用できることになります。

 (例) 長女・・・建物全部及び土地の1/2を取得

    次女・・・土地の1/2を取得

また、母屋と離れがある場合、母屋部分とその対応する敷地が空き家譲渡特例の対象となりますが、離れ部分は空き家譲渡特例が適用できません。しかし、取得費加算の特例は適用対象となります。

以上、空き家譲渡特例の適用にあたり、間違いやすい点をいくつかご紹介しましたが、上記以外にも注意すべき事項はありますので、適用を検討する際にはチェックリスト等を活用し、事前に確認しましょう。

(提供:チェスターNEWS