子育てしながら女性の就業継続を認める人が半数以上

 2016年10月に内閣府から公表された「男女共同参画社会に関する世論調査」(2016年9月調査)によれば、一般的に女性が職業をもつことについてどのように考えるかをたずねたところ、「子どもができても、ずっと職業を続ける方がよい」の回答割合が54.4%と、今回調査で初めて半数を超えた(図表1)。1992年には「子どもができたら職業をやめ、大きくなったら再び職業をもつ方がよい」が42.7%と回答割合が最も高かったが、24年のときを経て、女性も就業継続をした方がよいとの意識が、再就職をした方がよいとの意識を大きく上回り、過半数となった。まさに、共働きで子育てをすることを支持する人が広がりつつあることがうかがえる。

男性の家事・育児参加がしやすい社会になるために
(画像=第一生命経済研究所)

男性が家事、子育て、介護等に参加するために必要なこと

 共働きで子育てをするためには、母親のみならず父親である男性も家事や子育てを担う必要がある。そのため、男女ともに仕事と家庭生活との両立を図ることができるよう、働き方改革をおこない、長時間労働を是正したり、年次有給休暇を取得しやすくしたりする取組などが進められている。

 こうした中、人々は、男性が家事や育児に積極的に参加していくために何が必要と思っているだろうか。前出の世論調査によると、男女ともに最も多くの人が「①夫婦や家族間でのコミュニケーションをよくはかること」を挙げているが、これと同じくらいの割合で、「②男性による家事・育児などについて、職場における上司や周囲の理解を進めること」(以下「職場の理解」)を答えている(図表2)。「⑦労働時間短縮や休暇制度、テレワークなどのICTを利用した多様な働き方を普及することで、仕事以外の時間をより多く持てるようにすること」のように、働き方の見直しを求める項目にも男女ともに約3割が回答しているが、それ以上に「職場の理解」を多くの人が求めている。

男性の家事・育児参加がしやすい社会になるために
(画像=第一生命経済研究所)

 しかも、性・年代別にみると、男性の30代、40代及び女性の30代では「職場の理解」が第1位となっている(図表3)。特に子育て期にある年代の人々は、男性の家事・育児参加のためには「職場の理解」が何よりも必要と思っている人が多いことがわかる。

 実際、男性が勤務先に育児のための制度を利用しようとしても認めてもらえなかったり、利用したら嫌がらせを受けた、というような、いわゆるパタニティ・ハラスメント(パタハラ)も社会問題となっている。やはり、多様な働き方が可能になる制度を導入しても、こうした制度を利用できるような職場の雰囲気でないと、働き方の見直しも進まないことを多くの人が認識しているようだ。

男性の家事・育児参加がしやすい社会になるために
(画像=第一生命経済研究所)

男性の家事・育児参加などがしやすくなるよう職場の理解を進めるために

 では、男性が家事・育児参加などがしやすくなるように「職場の理解」を進めるにはどうしたらよいか。

 1つには、従業員の育児等のための制度の利用を法的に保障し、利用を阻害されないような職場づくりをすることである。そのために2017年1月、改正育児・介護休業法及び改正男女雇用機会均等法が施行された。今回の法改正は、介護と仕事との両立が可能となるよう介護休業などの利用をしやすくするとともに、有期契約労働者も育 児休業を取得しやすくすることが狙いであるが、これに加えて、上司や同僚からの、妊娠・出産、育児休業、介護休業等を理由とする嫌がらせなど(いわゆるマタハラ・パタハラ)を防止する措置が強化されたことも大きなポイントである。

 これまでにも同法では「事業主」による、妊娠・出産、育児休業、介護休業などを理由とした解雇や減給などの不利益取扱いは禁止されている。しかし、こうした不利益取扱いは減少するばかりか、最近では増加している。例えば、「契約社員が妊娠の報告をしたところ、次回の契約更新は行わないとされた事例」や「正社員の労働者が育児休業から復帰するに当たり、非常勤職員として勤務するよう命じられた事例」などのトラブルが雇用均等室に報告されているという。

 こうした婚姻、妊娠・出産などを理由とする不利益取扱い(男女雇用機会均等法第9条)について、労働者から労働局雇用均等室に寄せられた相談件数は、2012年度以降増加傾向にあり、2015年度は2,650件である(図表4)。育児休業に関わる不利益取扱い(育児・介護休業法第10条)についても、1,400件前後で推移していたが、2015年には1,619件と増加している。これら相談件数の多くは女性からのものであるが、男性からの相談も含まれている。特に育児休業に関わる不利益取扱いに関する男性からの相談は、2014年度の28件から2015年度は61件と倍増している(図表省略)。

 育児と仕事の両立をしやすいように育児休業や介護休業などの制度を整備し、法律でこれらの制度の利用を保障しても、依然としてそれを十分に活用できない人々が少なくないということがわかる。

男性の家事・育児参加がしやすい社会になるために
(画像=第一生命経済研究所)

 そこで、今回の法改正により、企業規模や業種にかかわらず、すべての事業主は従業員に対し、出産や育児に関する制度を周知するのみならず、こうした制度の利用を阻害する言動や、出産や制度利用を理由に解雇などの不利益取扱いや嫌がらせなどの言動をしてはいけない旨の事業方針を周知させることが義務付けられた(厚生労働省「職場でつらい思いしていませんか?」2016年9月作成パンフレットNo.13より)。また、嫌がらせなどの被害にあった場合の相談体制や再発防止策を講じることも事業主の義務とされた。

 育児等との両立ができるための制度は整備されても、職場の理解が促進されなければ、男性の家事や育児等の参加もなかなか進まない。今回の法改正を契機に、意識のレベルにおいても、男性の家事・育児等の参加を理解する社会へさらに進展することが望まれる。(提供:第一生命経済研究所

第一生命経済研究所 ライフデザイン研究本部
研究開発室 的場 康子
(まとば やすこ 上席主任研究員)