未婚者の生涯の結婚意思~依然強い結婚意向

 日本で少子化が進んでいる理由の1つに、若者の非婚・晩婚化があげられる。しかし、18~34歳の独身者を対象とする時系列調査によると、日本において「いずれ結婚するつもり」と考える未婚者の割合は依然高い水準にあり、最新の2015年調査では18~34歳の独身男性で85.7%、女性では89.3%を占める(図表1)。ただ、「一生結婚するつもりはない」とした未婚者の割合にも微増傾向がみられ、男性で12.0%、女性で8.0%を占める。

未婚者の結婚意思とライフコース
(画像=第一生命経済研究所)

結婚意思のない未婚者の意思の変化―約3割が過去には結婚を考えた経験あり

 この調査では、上述の図表1でみた生涯の結婚意思について「一生結婚するつもりはない」と答えた人に対し、これまでに「いずれ結婚するつもりがある」と思った経験の有無をたずねている。図表2のように、例えば、2015年に25~34歳の女性未婚者で「一生結婚するつもりはない」と答えた人のうち、半数強にあたる52.5%は、これまでに「いずれ結婚するつもりがある」と思った経験をもつ。同様に、25~34歳の男性未婚者でも42.3%がそうした経験があると答えている。つまり、未婚者の生涯にわたる非婚意思が、かつては異なるものであったことが示唆される結果となっている。

 過去を振り返る形でたずねているため、正確な変化とは言い切れない面もあるが、生涯にわたる非婚意思をもつ独身男女のなかには、かつては結婚の意思をもっていた人が含まれていることになる。こうした結果から、生涯非婚の意思をもつ独身男女には、以前考えていた人生とは異なる人生を歩んでいる人がいると考えることもできる。

未婚者の結婚意思とライフコース
(画像=第一生命経済研究所)

結婚意欲のなかった未婚者の現実の人生―男性の2割、女性の3割が10年後に結婚

 一方、独身男女のなかには、かつては結婚したくないと考えていたにもかかわらず、実際には結婚する人生を歩んでいる人がいることを示す別のデータもある。厚生労働省が同一の回答者を対象に継続的に実施している別の調査によると、10年前の2002年時点の調査では結婚したくないと答えていた人が、10年を経た2012年時点の調査では結婚したケースが男性で2割、女性で3割強を占めることが明らかになっている(図表3)。

未婚者の結婚意思とライフコース
(画像=第一生命経済研究所)

 もちろん、2002年時点において結婚したいと考えていた人の方が2012年時点で実際に結婚した人の割合は高く、男性では5割、女性では6割強を占める。しかし、この調査結果からは、若い頃に考えていたライフコースとは異なる人生を歩む人が少なからずいることも浮かび上がってくる。

独身女性の理想のライフコース~一番人気は「再就職型」

 結婚をめぐる未婚者の「意思」の変化を示す先のデータとは少し異なるが、結婚を含め、未婚者が理想だと考えているライフコースと、実際になりそうだと考えるライフコースの乖離を示す調査結果もある。ここでは先にみた国立社会保障・人口問題研究所が回答者を女性に限定して、「専業主婦コース」「再就職コース」「両立コース」「DINKS コース」「非婚就業コース」という5つの選択肢を示して理想のライフコースをたずねた調査結果に注目する(それぞれのライフコースに関する詳細は図表脚注を参照)。

 図表4のように、理想のライフコースについて、独身女性の支持率が最も高かったのは「再就職コース」(34.6%)であり、「両立コース」(32.3%)が僅差でこれに続いている。また、これら5つのライフコースに関して「結婚」というライフイベントに注目した場合、非婚を理想のライフコースとした人は5.8%にとどまっていることがわ かる。

未婚者の結婚意思とライフコース
(画像=第一生命経済研究所)

独身女性の理想と実際のライフコースの乖離

 一方、実際になりそうなライフコースについては、「再就職コース」(31.9%)をあげる人が最も多く、「両立コース」(28.2%)と「非婚就業コース」(21.0%)がこれに続いている。「専業主婦コース」(7.5%)と「DINKS コース」(3.8%)をあげた人はこれら2つのコースに比べて少ない。

 また、理想のライフコースについての回答結果とのポイント差に注目した場合、実際になりそうなライフコースについての回答では「専業主婦コース」が10ポイント以上低い一方、「非婚就業コース」が15ポイント以上高い。厳密ではないものの、後者の中には、実際になりそうなライフコースが理想のライフコースどおりに「非婚就業コース」である人がいる一方で、中には理想とするライフコースは別のコースで、実際になりそうなライフコースが「非婚就業コース」という人が含まれているものとみられる。つまり、独身女性の「結婚」と「就業」をめぐっては、理想とするライフコースと実際になりそうなライフコースが異なる人がいると考えられる。男性には同様の設問がないため確認することはできないが、同様の乖離は、おそらく独身男性にもみられるだろう。

未婚者の結婚意思とライフコース

 「結婚」に限らず、人々が実際の人生を歩んでいくなかでは、自身が想定していた人生とは異なるさまざまな事態や選択の局面に遭遇することがある。今回紹介した調査結果からは、未婚者の結婚をめぐる意思決定が、その後実際に結婚した人においても、その後結婚していない人においても、過去の意思が変化する場合や、意思と現実の人生が必ずしも一致しない場合があることが浮かび上がった。また、女性に限られたデータではあったが、このような乖離は、未婚者が理想とするライフコースと実際になりそうなライフコースの間にもみられた。

 人々の現実の人生は、自身の意思や理想とは必ずしも一致しない形で現実のライフコースとなっていく場合がある。当研究所が発行する『ライフデザイン白書2015年』では、人生設計について「経済計画だけでなく、仕事や学業、家庭生活、余暇生活、老後の生活などすべての面を含んだ自分のライフデザイン」と定義している。未婚者の結婚に限らず、われわれは自身が歩む現実のライフコースに応じて、自身の描く人生設計を柔軟に見直すことも必要になる場合があると思われる。(提供:第一生命経済研究所

上席主任研究員 北村 安樹子
(研究開発室 きたむら あきこ)